『エリザベート・ガラコンサート』
(公演プログラムより)
「二つの役を演じ、トートとエリザベートは一心同体だと発見できた
『エリザベート』は雪組初演の一年ほど前にウィーン版を観て、トートは『ヴェルサイユのばら』のオスカルに続く、宝塚の男役が演じた時により魅力が出る役柄だと思いました。エリザベートを演じるお話もありましたが、退団公演ですし、やはり男役としてトートを演じたいと思いました。退団の感傷にひたる間もなかったですが、いい作品にしたいという思いを雪組の皆が受け止めてくれて、組子の力が結集し、神がかっていた公演だったと思います。そして続演の星組で、麻路さんが、宝塚の男役が演じるトートの無限大の魅力を引き出してくれました。それがあって20年間愛され続ける作品になったんだと思います。
宝塚版はトートとエリザベートの恋愛的要素が強く出ているので、愛することを知らなかった存在に愛する思いが芽生え、闘って手に入れる、そう演じていました。でもその後、東宝版でエリザベートを演じ、2012年のガラ・コンサートで再びトートを歌った時、トートとエリザベートは一心同体だと発見できた。『風と共に去りぬ』でスカーレットの表と裏を役替わりで演じ、役が繋がった経験がありますが、それと同じ感覚になりました。エリザベートは強がって生きているけれども、本当はこう思っているというのを全部トートが歌う、そこが面白いなと。彼女の心の叫びがトートであって、反発していたのが最後は認め合って、一つになるんだと思えたんです。
4年前に集大成としてトートに取り組み、今回は作品の20周年を祝うためにも初演メンバーとして揃いたいと参加を決めました。20年前は難しいと思われていた音楽が、今はお客様の細胞の中に入っているのが不思議ですよね。それだけ日本人の琴線に触れる音楽なんだと思いますし、ご覧になりたいという要望が高い作品であり続けていることが本当に嬉しいです。」