たんぽぽの心の旅のアルバム

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通信教育レポート‐社会心理学

2024年03月24日 10時11分10秒 | 日記

課題1-社会心理学は、いかなる学問であるかについて述べなさい。

 社会心理学の中心課題は、始まりの時から”社会的存在としての人間”をめぐる諸問題の考察であった。人はこの世に生まれた時から絶えず人の間にあって、日々を過ごしている。人が関わりをもつ集団、人を取り巻く環境は、時の経過と共に変化し、複雑になっていくが、そこで人はその集団なり、環境の影響を受けると同時に、自分自身がその集団の一員、環境の一部となることによって他の人々に影響を及ぼしながら生活していく。人間は、他の動物に比べて、他人や社会への依存度がはるかに大きい。それは、同時にその他人、社会によって規定される度合いもはるかに大きいことを意味する。人は社会への適応の仕方を完全に習得してしまった後でも、社会から独立して存在するものではない。人は互いに他人の生存の一端を担いながら、相互依存的な関係のもとで生活している。そこで、先ず社会心理学は人間の知覚、思考、感情、態度、行為などが社会的な要因によってどのように影響されるかを明らかにしようとする学問である、と指摘することができる。何らかの意味で他者の存在を前提とする場面での行動が社会心理学の研究対象となる。

 

 しかし、社会心理学の視点・研究方法は一様ではなく、その内容は一義的には決まらない。それは、一つにはどの”社会的”という意味を重視するかによって異なってくる。社会的という言葉には。①研究者が目を向けている個人(行動主体)の外に単数または複数の行動主体(すなわち他者)がその場に実在している状況。➁他者は実在していないが、その存在がほのめかされたり想像されていて、そのことが当該個人の行動に何らかの影響を及ぼしている状況。③集団や社会の構造や制度、地位や役割との関係で当該個人の行動が規定されるような状況、の三つの意味が含まれている。これらのうちどれを重視するかによって、研究者の観点は異なる。さらに、行動主体として個人をとるか集団又は社会をとるか、という問題が絡んでくる。社会心理学の観点や方法の差異は大きく「心理学的社会学」(実験がメイン)と「社会学的心理学」(調査がメイン)とに分けられる。社会心理学はもともと社会学と心理学の境界領域にある現象を研究対象として出発しているからである。

 

 社会心理学は心理学が哲学の領域から独立したのに約30年遅れて誕生した。1908年に出版されたロスの『社会心理学』は、タルドらフランス流の集合心理学・集合行動の理論を主として当時の社会的諸事件及びル・ボンの扱った資料などに応用して、一般社会現象の心理学的解釈をしている。その研究対象は、はじめから集合行動そのものであり、社会的平面と社会的潮流とに分けて考えた。人間は社会生活を営むうちに互いに影響し合って、全般にわたって個性をある程度捨てて一様の心的平面を示す(=社会的平面)。また、一時的には人々の心を風靡するが、やがてまもなく消滅するか、変化してしまう社会心理的一様性を社会的潮流という。ロスの研究の中心は、人々がいかにして一様性の平面又は潮流に入ってくるかということであり、環境の側に重点をおいている。主要な関心事は、集団に共通して認められる態度や価値観、また集団内における個人の身分とそれに付随する役割であった。このような社会本位的社会心理学は、社会学的社会心理学と称される。

 

 これに対して、同年に出版されたマクドゥガルの『社会心理学序説』は、人間個人の社会行動そのものを説明するのに生得的な”本能”の概念を導入し、社会学的社会心理学の実験的論証を欠いた曖昧さを批判して、個人に社会的要因を求めている。彼によれば、社会心理学は、先ず個人の中に生まれながらに具わっている傾向と能力を認め、この傾向と能力からいかにして社会の複雑な精神生活が形成されるに至るかを示し、逆にまた社会の複雑な精神生活が個人の生得的傾向及び能力の発展と作用の上にいかなる影響を及ぼすかを研究する学問である。研究の中心は、個人精神の理解であり、個人の社会学習のメカニズムそのものに注目した。心理学的社会学の立場である。この二つによって、社会心理学の独立した科学としての基礎が固められた。

 

 さらに、オールポートが二つの社会心理学を統合し、今日の実証的な社会心理学を育てた。彼は個人の社会的行動を、個人と環境の間に表れる刺激と反応との相互作用である、と考えた。社会的行動は、個人とその環境の社会的部分との間、すなわち個人と周囲との人々との間に生じる刺激と反応とを含む。「ある人が刺激し、他のある人がこれに反応する」というこの簡単な過程の中に社会心理学の本質がある。我々が他の人に与える刺激は決して我々の意識そのものではなく、意識の外的表現、又は記号たる行動である。したがって、行動を除いた心と心の相互作用などは有り得ない。意識そのものは何の影響も与えない。心的相互作用とは、実は行動の相互作用なのだ。こう論じた彼の考える社会心理学とは「他の人々を刺激するような個人の行動、又は他の人々の行動に対する反応であるような個人の行動を研究し、かつ社会的対象及び社会的反応についての意識としての個人の意識を記述する科学である」。

 

 こうした見解は、現代社会心理学の依拠すべき根本方針である。現代社会心理学の第一の特徴は、研究の実証性という点にある。個人本位社会心理学がますます実験的研究を進め、そうして得られる諸原理を従来主として社会本位的社会心理学の扱っていた諸問題の解決にも適応させることができるようになれば、社会心理学全体の科学化が遂げられ、社会学とは別個の、しかも個人心理学に基づいた真の意味の社会心理学が成立するであろう。

 

課題2-以下の①➁のうち、どちらかひとつを選択して答えなさい。

①イノベーションの普及過程とその諸要因について述べなさい。

➁対人的説得の効果に影響を与える諸要因について述べなさい。

 

①普及とは、あるアイデアが”物”の形、”情報”の形、”行動”の様式などに具体化されて人から人へ伝えられ、そのアイデアが多くの人に共有又は使用されることをいう。一人の採用者が普及品目を最初に知ってから採用するまでの心理過程を「普及の個人過程」又は、採用に関する「意思決定過程」という。その過程では、マス・メディアや友人やセールスマンなどから入る広告や忠告や説明や推薦など、種々の情報から影響を受ける。ロジャースはそうした過程についてイメージを描いた。

 

 ロジャースは「普及は、イノベーションがコミュニケーション・チャンネルを通して、社会システムの成員間において、時間的経過の中でコミュニケートされる過程」であり、「メッセージが新しいアイデアに関するものであるという点において、コミュニケーションの一つの特殊タイプである」と言っている。これは、コミュニケーションは、一方的な情報伝達の過程ではなく、参加者が互いに情報を創り出し、共有していく双方向的行為の過程である、という考えのうえにある。そして、普及に特別な性格を付与するのは、そのコミュニケーションのメッセージ内容に含まれるアイデアの新しさなのである。そこには不確定性が含まれる。ロジャースは、イノベーションの採用と普及を、情報と不確定性に基づくフレームワークによって捉えることは有効であると考えた。不確定性は、ある出来事の発生に関して、いく通りかの可能性や選択肢があると知覚される度合いや、これらの可能性や選択肢それぞれの相対的確率であり、情報によって減少する。この新しさに伴う不確定こそが、イノベーション決定の特徴である。

 

 イノベーションとは、個人又は他の採用単位によって新しいものと知覚されたアイデア、行動様式、物であり、それらが最初に使用された時や発見された時からの時間によって測られる客観的な新しさは重要ではない。重要なのは個人によって知覚された”新しさ”であり、その”新しさ”は、個人の知識、態度、採用決定において見られる。

 

 イノベーションは、コミュニケート・チャンネルを通して普及していく。コミュニケート・チャンネルとは、メッセージがある人から他の人へ運ばれる手段であり、潜在的採用者に対して、イノベーションの存在を知らせ、”新しさ”を知覚するにおいて最も急速で効率的な手段である。潜在的採用者のイノベーションに対する評価は、彼らと似ている人々から伝えられたイノベーションについての主観的評価に主に依存している。このことは、普及過程の核心が、潜在的採用者による、すでにイノベーションを採用している仲間の模倣や真似であることを示している。

 

 そして、時間的経過と共に知識・態度・決定・実行・確信の5段階を経て普及していく。個人が、イノベーションについての最初の知識を得てから、イノベーションに対する態度を形成し、採用もしくは拒否の決定を行い、新しいアイデアを実行し、そして、その決定を確信するまでの心的過程は、一連の経時的行為と選択から成り立つのである。その過程は、すでに存在するものを新たなものに替えるという決定に必ず伴う不確定性を減少させるために情報を獲得する情報の探索と処理加工の活動であり、こうした不確定性の処理に採否決定の本質があると言える。

 

 イノベーションの普及は、個人的行動の特性のみでなく、社会システムによっても説明される。社会システムにおいて普及は行われているのだ。社会システムとは、共通目標を達成するために、共同的問題解決に従事している相互に関連している一組の諸単位である。その構造は、社会システムにおける諸単位のパターン化された配置と定義され、社会システムにおける個人の行動をかなり正確に予測することができる。システムの社会構造とコミュニケーション構造は、システムにおけるイノベーションの普及を促進したり、妨害する。社会システムは、個人の特性以上に影響を持ち、個人の革新性は、個人の特性とその個人が成員である社会システムの特性の両方によって影響されるのである。

  

参考文献

『はじめて学ぶ社会心理学』大宮録郎(大日本図書)

『社会心理学を学ぶ』大橋正夫・佐々木薫編(有斐閣選書)

『現代社会心理学』末永俊郎・安藤清志編(東京大学出版会)

『イノベーション普及学』

   E・M・ロジャース著 青池誠一・宇野善康 監訳

    (産能大学出版部)

 

平成12年に書いたレポート、評価はBでした。

 

 

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