たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

『赤毛のアン』がおしえてくれること

2015年03月18日 22時23分17秒 | 『赤毛のアン』
頭の中がずっと緊張している状況が続いていて、苦しい感じで日々が過ぎていきます。
自分ではどうすることもできないのでなおいっそうきついですが、こんな落ち着かない中、
久しぶりに松本先生の『赤毛のアン』のお話をきく機会があり、元気をもらうことができました。何度かうかがっているお話ですが、あらためてそうだったといろいろと思い出すことができて、束の間の心のお休みでした。

以前にも書いていると思いますが、私、一生懸命働いていた頃本当にハードワークでした。
毎日カバンの中に『赤毛のアン』の最後の場面の原文と翻訳を書いたノートを入れていて、
朝職場の最寄り駅が近づくと、降りる一つ手前ぐらい前の駅から読み始めて、最寄駅を降りる頃に読み終わり、職場へと向かわなければならない自分を励ましていました。

『赤毛のアン』は、ブラウニングの詩に始まり、ブラウニングの詩で幕を閉じます。


 The good stars met in your horoscope,

 Made you of spirit and fire and dew.

 Browning

「あなたは良き星のもとに生まれ、
 精と火と露より創られた
 ブラウニング


モンゴメリは、小説の冒頭に、19世紀英国詩人ロバート・ブラウニングの詩「エヴリン・ホープ」の2行を掲げ、アンの誕生から、物語を始めています。この2行は、アンが幸福を約束された星のもとに、豊かな精神、火の情熱、朝露の純真をたずさえて生まれて来たことを告げる祝福の詩です。」

(松本侑子著『英語で楽しむ赤毛のアン』より)


Anne sat long at her window that night companioned by a glad content.

The wind purred softly in the cherry boughts,

and the mint breaths came up to her.

The stars twinkled over the pointed firs in the hollow

and Diana,s light gleamed throught the old gap.

Anne,s horizons had closed in since the night she had sat there after coming

home from Queen,s;but if the path set before fer feet was to be narrow

she knew that flowers of quiet happiness would bloom along it.

The joys of sincere work and worthy aspiration and congenial friendship

were to be hers;nothing could rob her of her birthright of fancy

or her ideal world of dreams.And there was always the bend in the road.

"God,s in His heaven,all,s right with the world,"

whispered Anne softly.

「その夜、アンは満ち足りた気持ちで長らく窓辺にすわっていた。風は桜の枝をそよそよと優しく揺らし、薄荷(ミント)の香りをアンのもとまで運んできた。窪地の尖ったもみの上には、満天の星がまたたき、いつもの方角に目をむけると、ダイアナの部屋の灯が森をすかしてちらちらと輝いている。
 クイーン学院から帰って、ここにすわった晩にくらべると、アンの地平線はせばめられていた。しかし、これからたどる道がたとえ狭くなろうとも、その道に沿って穏やかな幸福という花が咲き開いていくことを、アンは知っていた。真面目に働く喜び、立派な抱負、気のあった友との友情は、アンのものだった。彼女が生まれながらに持っている想像力や、夢みる理想の世界を、なにものも奪うことはできなかった。そして道にはいつも曲がり角があり、そのむこうには新しい世界が広がっているのだ!
「『神は天に在り、この世はすべてよし』
アンはそっとつぶやいた。」

(松本侑子訳『赤毛のアン』より)

「神は天に在り、この世はすべてよし」と神への信頼と希望をうたう名句は、
ブラウニングの劇詩『ピッパが通る』からの引用だと松本先生は紹介されています。


目の前がもう行き止まりになったかのように見えても希望を見失わない。
豊かな想像力や夢みる力を失わない。
今自分にできることを一生懸命に考えて、最善と思われる道を選んでいく。
この場面は、ひたむきに生きることの大切さ、自分を信じる気持ちの大切を教えてくれています。

苦しい時の終わりはまだ見えてこないけれど、きっと大丈夫と自分に言いきかせます。
今月3日に自死遺族としてはじめて人前で話をさせていただきました。
そのために自分の歴史を時系列に振り返って資料を準備しました。
一個人の歴史が外に出たことで、ほんの少しでも社会に還元できていれば嬉しいし、
私の中で客観化されてきたことは大きな節目だったと思います。
長い間自責の念がありました。
ようやく本当に自分を肯定できるようになったのかもしれません。
これからまだ生き直しの時間はあります。
自分の感性を信じつづけるしかありません。
もう無理なのかなあ・・・。
そんなことない、きっと大丈夫。



モンゴメリさんが『赤毛のアン』を書いた家の跡。

お庭を歩いていると、風の音がきこえます。
ざわざわ、ざわざわ、緑の木々の葉が風にゆれる音がきこえます。
空を見上げると、遠く遠く雲が流れていきます。

モンゴメリさんがアンに込めた思いが今も息づいているように感じます。








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