goo blog サービス終了のお知らせ 

たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

第三章_日本的経営と女性労働 その歴史の概観_②戦後の労働基準法

2016年11月03日 19時53分25秒 | 卒業論文
 戦後のアメリカの初期占領政策は、日本社会の民主化と世界の平和を指向した。あらゆる分野で展開された民主主義を基調とする日本再建計画の中でも、急激かつ広範な改革が進行したのが労働関係においてであった。当時の労働事情を調査した連合国軍最高司令部労働諮問委員会は「日本における労働立法及び労働政策に関する勧告」の中で次のように述べている。「戦後の日本に起こりつつある各種の変化の中で労働者の新たなる品位と地位の向上と強化ということは最も重要な一つである。占領軍の長期を要する目的即ち平和にして民主的なる国民を作り上げることが成功すると否とは、この分野における推移に依存するところ大である。従来は自己の主張を表明することを許されていなかった労働者及びその他の諸階層の向上こそは、将来における軍国主義と侵略の再生を防止するための最善の保證の一つであると同時に、それは日本国民一般のためのより大なる自由と、より大なる物質的幸福への大道の一つであり、これなくしては民主主義に対する彼等の永続的な支持は保證されないのである」。こうした意図に沿って、占領政策では、まず労働組合法が制定され、続いて労働関係調整法、労働基準法と、いわゆる労働三法が相次いで公布された。1)

 アメリカにより行われた日本の民主的改革は、とりわけ女性にとって大きな意義をもった。憲法13条により「全て国民は、個人として尊重され」なければならず、14条では、「すべて国民は法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において差別されない」とし、24条には、「家族生活における個人の尊厳と両性の平等」が謳われている。このように男女平等と女性の人権尊重が憲法で宣言されたことにより、初めて日本女性の労働権、参政権、学習権、労働組合加入の権利などが保障されたのである。

 労働関係において、いち早く制定された労働組合法は、労働に関する原理の保護と日本民主化の一手段として、労働者の団結権、団体交渉権を保証し、労働運動の発展を助長した。この政策が功を奏し終戦直後より、1948年頃まで労働運動の活発化と拡大が展開した。

 次いで制定された労働基準法(以下労基法)は、憲法25条1項の、すべての国民に「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障し、労働条件がそのようなものであることを保障するために、と27条2項で勤労条件に関する基準を法律で定めることとされた二つの規定を受けて制定されたものである。1947年(昭和22)9月労働省が設置され、厚生省の手から労働行政のみが独立した。それに先立って厚生省の手で起草作成された労基法が、同年4月5日法律第49号として施行された。労基法の1条1項は、その根本精神を「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」と冒頭で明らかにしている。労基法は、労働時間の大幅な短縮(1日8時間・週48時間、労働時間に関しては後述するように1997年の労基法改正まで女性に対してのみ制限されていた。現在は男女共に1日8時間・週40時間)をはじめとする労働条件の改善をもたらした。女性労働者にとっては、初めて男女同一労働同一賃金が承認された点で画期的であった。産前産後の延長や生理休暇の承認等母性保護水準の改善や戦時中許可された深夜業や坑内労働の再禁止も含まれていた。労基法は、戦前の工業法に比べれば、女性労働者の地位と待遇を大きく前進させたものだったのである。2)
 
 ここで、男女同一賃金についてもう少し詳しく見てみたい。憲法14条を受けて、労基法3条の均等待遇と共に4条では男女同一賃金の原則が規定された。3条の均等待遇には性別が明記されていないため、賃金以外の労働条件に関する男女差別を是正する直接の根拠規定にはなりにくく、結局均等法施行以前は、これが民間企業における男女差別を直接禁止する唯一の規定だった。労基法の施行通達には、次のように書かれている。「職務、能率、技能等によって賃金に個人的差異のあることは、本状に規定する差別待遇ではないこと。しかしながら労働者が女子であることのみを理由として、あるいは社会通念として又は当該事業場において女子労働者が一般的または平均的に能率が悪いこと、勤続年数が短いこと、主たる生計の維持者ではないこと等の理由によって女子労働者に対し、賃金に差別をつけることは違法であること」。つまり、労基法4条は施行当初から、合理的理由のない男女間の賃金格差を違法とする規定だといえる。3) 労働条件の中でも最も重要な賃金に関し男女平等を実現するためには、どんな職務にも男女が平等に就くことができ、昇進・昇格でも男女が平等に取り扱われることが必要であり、そのために性による雇用の機会と待遇の差別を法律で禁止したのである。

 しかし、第一章で見たように、実際には、男とはこういうもの、女とはこういうものというステレオタイプ的な固定観念に基づいた男性職、女性職という性別職務分離が存在し、合理的理由なくして女性職の賃金は低く見積もられてきた。「性」による振り分けが日本型企業社会にとって最も経済的だったからである。労基法4条は有効に機能していないと言える。労基法4条は世界で最も早く立法化された男女同一賃金規定であるにもかかわらず、今も日本の男女賃金格差の是正が進んでいないため、国際批判の的になっている。日本において男女の雇用平等への取り組みが他の先進諸国に比べて遅れをとってきたのは、労基法の中に女性労働者を男性と異なる「性」として保護の名の下に扱ってきた女子保護規定が織り込まれているからだと考えられる。

 労基法の中には、女性労働者に対する保護規定が設けられた。1997年(平成7)の労基法改正まで、労働時間に関して、男性については目安時間があるのみで、労使協定(労基法36条に規定されているので「36協定」といわれる)を結べば、法律上は制限なく時間外・休日労働をさせることができ、女性についてだけ、労基法で制限されていた。こうした女性保護規定が設けられたのは、篠塚英子が述べているところによれば、この法律における女子及び年少者の扱いには健康上特殊な考慮が要請されるという立場に立ち、特別の規定を設け「保護」することが民主国家の責務である、という立場が貫かれたからである。女性保護の柱として労基法に織り込まれたのは、次の四つである。

①18歳以上の女子に対して、1日2時間、1週間6時間、1年に150時間を超えて時間外労働をさせてはならない。
②休日労働をさせてはならない。
③深夜業(午後10時から午前5時)をさせてはならない。
④産前6週間、産後6週間の女子を就労させてはならない。
⑤生理日で就業が困難な女子が生理休暇を請求したときには、就業させてはならない。
 

 中でも、生理休暇は当時各国の労働法には見当たらず日本独特の女性保護規定であった。この背景には篠塚がまとめているところによれば、戦前の工場法施行時代特定の作業に従事している女性労働者の生理現象の変調などが観察され、何らかの対処が必要という意見が出されていた。同様に戦時中、学徒動員で両家の子女を女子挺身隊として軍需工場の作業に就かせる際、その保護の一つとして生理休暇を与えたという事例がある。さらに、戦後の労働保護で一番最初に問題になった女子の坑内労働禁止に関し、即刻禁止の命令がGHQからくだされた。これに対し、経済復興のため存続を主張する側とで意見が対立した。その時「猶予期間中は坑内女性労働者に生理休暇を保障する」という規定が設けられたことがあった。これらの過去の事例のため、戦後の労基法に生理休暇が登場することになったのである。女性保護規定を織り込んだ1947年の労基法は、1960年代の高度経済成長期を経たのち、1986年4月の男女雇用機会均等法の施行に至るまでの約40年間効力を発揮した。4)
 
 女子保護規定は、1997年(平成9)、男女の均等待遇のために男女共通規制(保護)を設けることを前提に、女性に対する時間外・休日労働制限及び深夜業の禁止規定が廃止された。

引用文献

1)藤井治枝『日本型企業社会と女性労働』56頁、ミネルヴァ書房、1995年。

2)竹中恵美子『新・女子労働論』74-75頁、有斐閣選書、1991年。

3)東京都産業労働局編『働く女性と労働法2003年版』79頁、2003年。

4)篠塚英子『女性が働く社会』31-34頁、勁草書房、1995年。

宝塚OGによるコンサート『SEPERGIFT』

2016年11月03日 10時29分08秒 | ミュージカル・舞台・映画
2015年9月27日のこちらの記事、宝塚は楽しい『SUPERGIFT』_千穐楽
http://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/537d1500d4f1007215358c76d1632359

 昨日の閲覧ベストテンに入っていたので自分でも読み返しました。ずたずたのボロボロになって社会から孤立し続けた苦しい日々の中、パソコン背負って徘徊しながらなんとか自分を取り戻していこうと心の中は毎日必死でした。そんな現実をしばし忘れて非日常的な世界にひたれたひととき。ほんとに楽しかったです。宝塚はやっぱり楽しいですね。東宝エリザベートで昨夜は蘭ちゃんシシィ(蘭乃はなさん)を見逃してしまったのを悔やみながら、気分転換にツィッターに投稿された蘭ちゃんの宝塚時代の動画をいつくかみていました。蘭ちゃん可愛いし、男役さんは素敵だし、やっぱり楽しいです。もう少し落ち着いたら久しぶりに劇場に行ってみようかな。チケット取るの大変・・・?!

 たいしたことありませんが会場で撮った写真をフォトチャンネルに追加しました。よかったらご覧ください。

宝塚OGによるコンサート『SEPERGIFT』