マッダレーナとステファノが結婚式を挙げた。彼らは荷馬車と小舟をつかって、ミラノへ新婚旅行に行った。ミラノの街は、労働者のストライキと、それを抑圧する軍隊とで騒然としいたが、ふたりはめざすサンタ・カテリナ修道院をたずねあてることができた。ここの修道院長であるマッダレーナの伯母の尼僧マリアをたずねてきたのである。その夜ふたりは、伯母の心づくしでわざわざベッドをふたつ、しばりつけてつくってくれたダブル・ベッドに眠った。
翌朝、伯母は生後数カ月の赤児を抱いてあらわれた。この子は捨て子だった。ひきとり手には修道院から支払われることになっている仕度金をつけるから、この子の親になってもらえまいかと頼まれ、マッダレーナはひきうけることにした。
農場の誰もが、新婚夫婦がミラノの修道院から授かった赤ん坊を見に来た。「もしかしたら、この子には高貴な血が流れているかもしれないよ」と言う者があったが、ドン・カルロ神父はそれを制し、いましめた。「この子は百姓のことなるのだ。大切なことは、みんながこの子を愛してやることだよ」。
河沿いの並木から1本だけポプラの樹が伐あられていることが、ある朝、地主の目にとまった。地主は土地管理人に言って、その犯人を追求させることにした。
アンセルモおじいちゃんのトマトは、ベッティーナに予言したとおりに、ふたつの畑より一週間以上も早く、みごとに実を結んだ。おじいちゃんとベッティーナはトマトをつんで村に売りに行った。その年はじめての真っ赤なトマトを、みんなが珍しそうに見た。最初のお客になったのはパン屋だった。パン屋の店先に並ぶ砂糖つきのドーナッツはベッティーナには別世界の食べ物のようだった。
その日の夕方、ベッティーナとアンセルモが農場に戻ると、バティスティの一家が、荷車になけなしの家財道具をつめこんでいた。ポプラの樹のことが地主にわかったので、農場を追われるのである。ミネクは、母親が夜なべして縫ってくれた学校用のカバンをしっかりとかかえていた。それはもう彼には必要のない物になるのだが。
この悲しい光景を、見る者は誰もいなかった。荷車が去ったあと、農場の人々はやっと外に目を向け、夜の闇のなかに遠く去っていく小さな灯を見つめつづけた。
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ストーリィはこれで終わりです。
まだ書きたいことはあるのでぼちぼちと書いていきます。
翌朝、伯母は生後数カ月の赤児を抱いてあらわれた。この子は捨て子だった。ひきとり手には修道院から支払われることになっている仕度金をつけるから、この子の親になってもらえまいかと頼まれ、マッダレーナはひきうけることにした。
農場の誰もが、新婚夫婦がミラノの修道院から授かった赤ん坊を見に来た。「もしかしたら、この子には高貴な血が流れているかもしれないよ」と言う者があったが、ドン・カルロ神父はそれを制し、いましめた。「この子は百姓のことなるのだ。大切なことは、みんながこの子を愛してやることだよ」。
河沿いの並木から1本だけポプラの樹が伐あられていることが、ある朝、地主の目にとまった。地主は土地管理人に言って、その犯人を追求させることにした。
アンセルモおじいちゃんのトマトは、ベッティーナに予言したとおりに、ふたつの畑より一週間以上も早く、みごとに実を結んだ。おじいちゃんとベッティーナはトマトをつんで村に売りに行った。その年はじめての真っ赤なトマトを、みんなが珍しそうに見た。最初のお客になったのはパン屋だった。パン屋の店先に並ぶ砂糖つきのドーナッツはベッティーナには別世界の食べ物のようだった。
その日の夕方、ベッティーナとアンセルモが農場に戻ると、バティスティの一家が、荷車になけなしの家財道具をつめこんでいた。ポプラの樹のことが地主にわかったので、農場を追われるのである。ミネクは、母親が夜なべして縫ってくれた学校用のカバンをしっかりとかかえていた。それはもう彼には必要のない物になるのだが。
この悲しい光景を、見る者は誰もいなかった。荷車が去ったあと、農場の人々はやっと外に目を向け、夜の闇のなかに遠く去っていく小さな灯を見つめつづけた。
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