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DVD アスとゲットアウト

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映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回はゲット・アウトのジョーダン・ピール監督の2019年公開のホラー作品「アス」前作の作品も批評してなかったので「ゲットアウト」も紹介したいと思います。

自由の国アメリカにおいて、根強く残る黒人差別の問題をホラーとして組み合わせたのが前作の「ゲットアウト」でした。黒人青年のクリスが白人女性の恋人ローズの実家に紹介され、白人と黒人の使用人のいる地域に隠された秘密が暴かれていく作品です。

前作では、その地域に住む黒人が身体的な障害を持っており、実はクリスも、ローズを含めた白人の恐ろしい策略の餌食になるというもので、核心には迫りませんが、大多数を占める白人社会において、少数の黒人が、スポーツや音楽の世界で優れた能力を持ち、ある種の憧れが源となって策略へとつながる多数が少数を支配する図式が作品のベースになっていました。

ゲットアウトは、アカデミー賞脚本賞を受賞したこともあり、起こり得るリアリティーとアメリカの人種差別の問題を、黒人監督らしい切り口でコミカルなホラーとして昇華させた秀作でした。

一方、今回の作品は、黒人家族が主人公ですが、物語の冒頭で見せる遊園地にある鏡の部屋に迷い込んだ少女時代の母親アデレードが瓜二つの自分に遭遇した恐怖体験がドラマの発端となっています。

物語は、忌まわしい恐怖体験の地、サンタクルーズを訪れた夫と二人の子供がもったアデレード家族がビーチハウスで自分たちとそっくりの家族に監禁され、そこから脱出するドラマです。ここまでくれば、そっくりの家族がクローンであることはお分かりだと思いますが、そこからの壮絶な近未来的ドラマが展開されて、意味深なラストへと繋がっていきます。

※ここからは、ゲットアウトとアスのネタバレとなりますのでご注意ください。

先ずは前作のゲットアウト。

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ゲットアウトは、端的に言えば黒人の才能を手に入れるために、脳みそを移植するという内容です。主人公クリスは、催眠術により軟禁され村の人々の餌食になるのですが、その方法がオークションでの入札です。そして、使用人となっていた黒人も実は脳みそ移植された白人で、黒人の身体的な能力を手に入れた白人たちが住む町の移植患者として連れられたのがクリスです。

この作品の肝は、親友の手助けで脱出する親友ロッドのセリフが、白人レイシストの行動につながっているところ。黒人が白人より劣っていることを証明するために行動する原理を逆手にとって、黒人を憧れの対象にしながら、その能力を手にしようとする行動原理のもとに作品が出来ているところが、過去の作品とは違うところで評価されたと思います。

アスが、扱っているテーマは人間の進化に対するエゴイズムへの警鐘。その的となったのがクローンです。アスは、細菌実験による生まれたゾンビ映画によく似ています。舞台となった町には、地上と地下の二つの社会が存在します。その入り口が鏡の部屋でした。僕が想像するに秘密裡に行われたのクローン実験の町がサンタクルーズ。ラストでは、アデレードがクローンとすり替わったことがわかります。その伏線が、ドラマの中で散りばめられています。

そのことで、辻褄を合わない部分があり、家族の一員である息子もクローンではないかと、観る者をさらなる憶測へ進ませていますが、僕の結論では辻褄が合うのはアデレードだけで、地下で人生を送ることになった本当のアデレードによる壮大な復讐劇だったのではないでしょうか。地上の生活を得たことで進化を遂げたクローン・アデレード。結果的にクローンの勝利となるのですが、クローンから生まれた二人の子供は、少なからずクローンとしての欠陥を障害として抱えていたことで理解できます。

そう考えるとアスも良く出来た作品で、続編が可能です。僕が考えるならサンタクルーズから脱出したアデレードとクローン計画を継続しようとする権力と人間であり続けるための戦いしか想像できません。でも、作品としてクオリティー維持を考えるとこれで終わるのがベストかなっと思ってます。


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