映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、ヴェネチア映画祭で金獅子賞受賞のスエーデン作品「さよなら、人類」です。
さよなら人類のタイトルで思い出すのは、イカ天バンド出身のたまのデビュー曲を思い出す人も多いと思います。同名タイトルと知ってか知らずか、この奇妙なタイトルに惹かれてはいましたが、見逃し今回DVDで鑑賞しました。
内容は、おもしろグッズを売る、さえない二人の男の周辺で起こる奇妙な39の日常を一台の固定カメラだけでワンシーン、ワンカットで撮っています。しかも、ロケーションなしのスタジオでの撮影と言うこだわりで4年の歳月をかけて作れられていることだけでも、今の映画界にとっては驚きです。
背景はCGではなく、すべてマットペインティングされたリアルな世界。カット事の部屋は、シンプル無機質な雰囲気が漂い、登場する人物は、ほぼ無表情で、しぐさやセリフにシュールな笑いがあり独特な空気が漂っていました。特に印象的だったのは、主人公のセールスマンにはふさわしくないヨナサンの気弱な道化ぶりや、床屋の主人になった船長のセリフ、フラメンコの女教師が恋する生徒の少年に接触するシーンなど監督独特の世界観が静かに流れています。
監督自身が愛する絵画の世界をベースに詩的で哲学的な世界は、まさに作品自体が人間をテーマにしたアートです。