第二次大戦中、ナチスを欺きベルリンで生き延びたユダヤ人を描いた映画「ヒトラーを欺いた黄色い星」を観賞
本作は、ナチスドイツは、ユダヤ人をベルリンから一掃したと宣言、実は700人ものユダヤ人が潜伏を続け、1700人のユダヤ人が生き延びた事実を基に、4人の証言者のインタビューと共に、いかにして生き延びたかを描いたものです。
証言者の当時の年齢は16歳から20歳の男女。帰還したドイツ兵になりすまし、空き室を転々としながら偽の身分証を作ったり、身分を隠しナチス将校にメイドとして雇われたり、ヒトラー青年団の制服で身元を偽り反ナチスの組織の活動を手伝うなど。身を潜めることなく、市民のなかに紛れ込むように生活を送ります。
青年たちの死と隣り合わせの生活の中でも、些細なことでも青春の思い出が築かれていくシーンが、この手の作品としては異色で証言により事実として語られ新鮮で興味深く、また、そうした思いを抱かせてくれた背景に、潜伏を手助けした良心あるドイツ人が関わっていたことに驚かされます。
そして、証言者の青年たちの潜伏方法もさることながら、手を差し伸べたドイツ人の境遇もそれぞれに異なり、そこには、ナチスが行った非人道的な行為に対する静かな抵抗を感じました。
改めて、民族意識の中にある差別性がいかに愚かなことで、人種や性別を超えた人間への慈愛が深く感じられ、争いの根源を断つためには、唯一の希望であることを強く自覚する作品でした。