本日の映画レビューは、三宅監督、岸井ゆきの主演の実在を女子プロボクサーがモデルのヒューマンドラマ「ケイコ 目を澄ませて」です。
数々の映画祭で絶賛、本年度キネマ旬報で1位に輝き、主演女優賞に輝いた本作、ろう者の女性プロボクサー小笠原恵子さんの「負けないで」を原案に気鋭の映画監督三宅唱と脚本家、酒井雅秋による完成した作品は、ボクシングジムでのトレーニングやろう者としてのハンデキャップをリアルに描いています。
主演の岸井ゆきのは、当然のことながらほぼ言葉のない演技と過去の作品とはまったく異なるプロボクサーの日常と試合などを生身の自分をさらけ出すように演じています。脇を固めるジムの会長には三浦友和、会長の妻に仙道敦子が、ジムのトレナーや家族役などに実力者の俳優陣が脇を固めています。
また撮影には16ミリカメラが用いられたことで、下町の古びたジムやマイナーな女子プロボクシングの世界やケイコの日常の目線などが観る者に親近感を与え身近にいながら、交わることのない生活の一片を感じ取れます。
決して派手さはなく、確かなエンディングは存在しないもののジワリジワリと心にしみわたり、寄せくくる漣を感じられる素晴らしい映画です。