『入場券』の続きです。
イワンはアリョーシャに続けます。
「ありとあらゆる手で両親から痛めつけられ、全身を痣だらけにした5歳の女の子が、天使のように健やかな眠りに沈んでいる女の子が、夜中にうんちを知らせなかったというだけの理由で、顔中に洩らしたうんちをなすりつけて、食べさせ、真冬の寒い日に女の子を一晩中便所に閉じ込めた」母親。
「自分がどんな目に遭わされているのか、まだ意味さえ理解できぬ小さな子供が、悲しみに張り裂けそうな胸をちっぽけな拳でたたき、血をしぼるような涙を恨みもなしにおとなしく流しながら、「神さま」に守ってくださいと泣いて頼んでいるというのに、母親はぬくぬくと寝ていられるんだ。」
自分の犬に怪我をさせた8歳の少年を裸にさせて、母親の目の前で自分の犬にかみ殺させた将軍・・・
「どうだアリョーシャ、そんな大人たちは銃殺か?」と迫るイワン。
耐え切れずに神に仕える身でありながら「銃殺です!」と答えてしまう純粋なアリョーシャ。
つまりアリョーシャの心にも悪魔が、カラマーゾフが潜むわけです。
キリスト教では、善悪を認識するために悪が必要だから、それでも悪を赦せ、としても「そんな認識を全部ひっくるめたとしても、「神さま」に流した子供の涙ほどの値打ちなんぞありゃしない。」と力をこめるイワン。
「たとえ苦しみによって永遠の調和を買うために、すべての人が苦しまなければならぬとしても、その場合、子供にいったい何の関係があるんだい?そんな調和は、小さなこぶしで自分の胸をたたきながら、臭い便所の中で償われぬ涙を流して「神さま」に祈った、あの痛めつけられた子供一人の涙にさえ値しないよ!」
そして「なぜ迫害者のための地獄なんぞが俺に必要なんだ。子供たちがすでにさんざ苦しめられたあとで、地獄がいったい何を強制しうるというんだ?」
もし目の前でわが子を犬にかみ殺された母親が、迫害者を赦したからといったって、それは「自分の分だけ赦せばいい」、子供の分までは到底赦せはしません。
「だから俺は自分の入場券は急いで返すことにするよ。」
「神を認めないわけじゃないんだ、ただ謹んで切符をお返しするだけなんだ。」
これがイワンの述べる『入場券』です。
矛盾をつまびらかにするイワン。
しかし、それでもわが身を犠牲にしてまで、すべてを赦すのがキリストだ、と主張するアリョーシャ。
矛盾をも超越する力と愛を信じるアリョーシャ。
イワンはアリョーシャに続けます。
「ありとあらゆる手で両親から痛めつけられ、全身を痣だらけにした5歳の女の子が、天使のように健やかな眠りに沈んでいる女の子が、夜中にうんちを知らせなかったというだけの理由で、顔中に洩らしたうんちをなすりつけて、食べさせ、真冬の寒い日に女の子を一晩中便所に閉じ込めた」母親。
「自分がどんな目に遭わされているのか、まだ意味さえ理解できぬ小さな子供が、悲しみに張り裂けそうな胸をちっぽけな拳でたたき、血をしぼるような涙を恨みもなしにおとなしく流しながら、「神さま」に守ってくださいと泣いて頼んでいるというのに、母親はぬくぬくと寝ていられるんだ。」
自分の犬に怪我をさせた8歳の少年を裸にさせて、母親の目の前で自分の犬にかみ殺させた将軍・・・
「どうだアリョーシャ、そんな大人たちは銃殺か?」と迫るイワン。
耐え切れずに神に仕える身でありながら「銃殺です!」と答えてしまう純粋なアリョーシャ。
つまりアリョーシャの心にも悪魔が、カラマーゾフが潜むわけです。
キリスト教では、善悪を認識するために悪が必要だから、それでも悪を赦せ、としても「そんな認識を全部ひっくるめたとしても、「神さま」に流した子供の涙ほどの値打ちなんぞありゃしない。」と力をこめるイワン。
「たとえ苦しみによって永遠の調和を買うために、すべての人が苦しまなければならぬとしても、その場合、子供にいったい何の関係があるんだい?そんな調和は、小さなこぶしで自分の胸をたたきながら、臭い便所の中で償われぬ涙を流して「神さま」に祈った、あの痛めつけられた子供一人の涙にさえ値しないよ!」
そして「なぜ迫害者のための地獄なんぞが俺に必要なんだ。子供たちがすでにさんざ苦しめられたあとで、地獄がいったい何を強制しうるというんだ?」
もし目の前でわが子を犬にかみ殺された母親が、迫害者を赦したからといったって、それは「自分の分だけ赦せばいい」、子供の分までは到底赦せはしません。
「だから俺は自分の入場券は急いで返すことにするよ。」
「神を認めないわけじゃないんだ、ただ謹んで切符をお返しするだけなんだ。」
これがイワンの述べる『入場券』です。
矛盾をつまびらかにするイワン。
しかし、それでもわが身を犠牲にしてまで、すべてを赦すのがキリストだ、と主張するアリョーシャ。
矛盾をも超越する力と愛を信じるアリョーシャ。