医師日記

「美」にまつわる独り言です
水沼雅斉(みずぬま まさなり)

オーガスタとアゼリアの美

2006年04月30日 16時44分01秒 | Weblog
 前回からの建築物の話の流れで、しつこいようですが、この写真はマイアミの「アール・デコ」様式の教会です。

 今日の話題の前に、問題です。 「つつじ」と「桜」の共通点は何でしょうか?

 ご年配の方には簡単かもしれませんが、僕と同年代かそれ以下の年齢の方は分かります?

 では・・・、今年はアメリカのフィル・ミケルソンが優勝した、毎年4月の第1週に行われる、プロ競技ゴルフの中で最も面白い(と僕は思う)「マスターズ選手権」があります。

 この、アメリカはジョージア州にある、競技開催ゴルフ場の「オーガスタ・ナショナルゴルフクラブ」は、とっても美しい花と水に囲まれております。

 なぜこの試合が最も面白いと言うのかといえば、まずPGAと呼ばれる、男子プロゴルファーの試合で「4大メジャー」選手権というものがあります。 それぞれ、先の(四月)「マスターズ」、六月の「全米オープン」、七月の「全英オープン」、お盆の頃の「全米プロ」の4つです。

 「マスターズ」の場合、参加資格は開催コースのオーガスタから「招待」です。 もちろん選考基準があって、メジャータイトル優勝者だとか昨年度の世界各地のツアーでの賞金ランキング上位者などになります。

 マスターとは「勝者」とか「親方」とか「巨匠」という意味ですから、およそプロゴルファーはこの「マスターズ」に招待されることが、もっとも誉れ高き栄誉となります(と思います)。

 その招待状が届くと選手は手が震えると言われます。

 他の3つのメジャー大会は毎年開催コースが変わりますが、このマスターズだけは当然「オーガスタ」というゴルフ場の招待ですから、毎年オーガスタで行われます。

 そして「オーガスタ」の特長はなんといってもコースがとっても美しく、ひとホールひとホールが印象深く、グリーンが「ガラスのグリーン」と言われるほどに速くて難易度が高いものです。 もちろんその他のメジャーでも、例えば「全英」はイギリスらしく、海沿いの歴史と伝統ある、寒々として風の吹きすさぶコースであったり、「全米」の2つはやすやすとはパーが許されないコースであったりして、特徴があります。 ちなみに全米や全英の「オープン」というのは、開かれた大会ですから、アマチュアでも予選を勝ち抜けば出場できます。


 「オーガスタ」でのインの11~13番までは「アーメンコーナー」と言われ選手たちは祈るような心境でプレーし、また数々のドラマを生むために「魔女が住むコース」と言われております。 近年意味のない(?)コース全長の引き延ばしが行われ、バーディ数が減ってしまい、オーガスタならではの面白みに欠けてきてしまい、また単純にハードヒッターに有利になってきてしまいました。

 で、そのオーガスタの美しい花が「アゼリア」と「ハナミズキ」であり、特に「アゼリア」は日本では「つつじ」のことです。

 ちなみに「さつき」は「つつじ」の一種で、つつじより遅く陰暦の五月に花をつけるので「さつき」です。

 また「先に花」がつつじ、「先に葉」がさつきです。

 はい、これが正解です。 

 そうなんです、桜もそうですが、葉より先に花をつける「つつじ」と「桜」は花が目立ちますので、花がこぼれるように、咲き狂ったように見え、美しく目に飛び込んでくるのではないかと・・・僕の勝手な思い込みかもしれませんが。 両者の共通点、答えは「花が葉より先」でした。

 また日本のゴルフ場でもたまに見かけるのですが、植えたものではなく、自然に日陰に咲いている「やまつつじ」かなあ、「あかやしお」かなあ・・・ ピンクで少し紫がかった・・・にドキリとします。

 なぜドキリとするのか・・・それは、日陰で見るとこの花はどういうあんばいなのか・・・一般に影の部分は視覚的に立体的にくぼんで見えますが、その中で花の色が鮮やかなのですが、さらにくぼむのか浮き上がるのか、なんとも不思議な錯覚のように目に飛び込んでくるのです。 紫がかったこの花の色と周りの木々の緑の葉との色の対比なのか、日陰という光のコントラストのわざなのか、わかりませんが・・・。なぜかとっても鮮やかな視覚的不思議体験・・・この感覚を体験した方は僕だけではないと思うのですが・・・。

 ちなみに先ほど「あかやしお」の話が出ましたが、那須高原に咲く清楚で可憐な「五葉(ごよう)つつじ」のうちの「白やしお」の花は、愛子様のお印の花です。

 「かたくり」の花の群生も、これまた前述した似たような視覚的錯覚(花が鮮やかにくぼんで見える・・・)を体験でき(僕だけかな?)とってもきれいですね。

 濃いピンクの「ハナミズキ」もとってもきれいなので、この時期はわき見運転事故に気をつけなければなりません・・。

西洋建築美と歴史-11

2006年04月27日 06時08分08秒 | Weblog
 今日の写真は何様式? みなさん、もうおわかりですね。

 アールデコのマイアミのホテルです。

 そして考察ですが、現代の「なんちゃってモダニズム建築」の弊害により、日本の街並は面白くもなんとも無く、現代日本のビルや団地の風景はほとんどがこの機能重視の四角い箱。 表情も個性も優しさも驚きもときめきも何もありません。

 特に「特定の地域や時代を連想させるような要素も一切ない」だなんて、建築家の方はいかがお考えになられるのでしょうか?

 東京をはじめ日本の街の、こんなにも、まったく、と~っても、美しくないビル群の風景に僕はかなり憤慨しております。

 こんなんだったら古いもののほうが全然いいよ。 長屋とかわらぶき屋根とか瓦の風景のほうが日本情緒にあふれよっぽど美しいと思いますでしょ?

 都市の風景として他国よりもかなり遅れをとっていて恥ずかしいとは思いませんか?

 ひょっとして僕たちの閉塞感は、この美しくない街並みに囲まれ、毎日ねずみ色の箱の塊を見せつけられることにも、責任の一端はあるのではないでしょうか? 専門家の方、どうなのでしょうか? ただの四角い箱を次々に、これだけ日本の街に充満させた責任は・・・日本は美しい街並だと言えますでしょうか?

 機能重視でバランスが良いとか、均整がとれているとか玄人に言われても、素人は見た目に訴えるものが無ければ、どこがどう機能的に優れているのかは皆目わかりまっせ~ん。

 実用あるのみの手術用器具などとは違って、建築物は設計者のセンスが問われる芸術的な意味合いも大きいはずです。あんな広い空間を占拠するのですから、言ってみれば街の巨大なオブジェの役割も果たすはずです。機能だけでは街の個性も特色も色艶も何もあったものではありません。

 まるで自分の服装すら奥さん任せにして省みることすらしない・できない、くたびれた背広を着た非紳士の集団みたいだ・・・

 僕が建築家だったら(大仰な物言いで恐縮ですが)、もっときれいな色の和製瓦を効果的に色の演出に利用したり、日本的な三角屋根や木材を材料に取り込んだり、大社造りや平等院鳳凰堂などイメージしたりして、日本独自のビルをデザインしたいと思いますがどうでしょうか? は、コストばっかりかかってだめですか・・・?

 アスファルトやコンクリートの色だって、廉価にちょっと知恵を絞ればもう少し考えた色に着色できないのでしょうか?

 せめて僕たちは無表情のビルをツタや樹木で、そしてせめて美しくない箱の街を花でいっぱいにしませんか? 石原都知事、どうでしょうか? 東京に花をずらりと植える運動をぜひ促進してください。 そういう税金の使い方なら文句も少ないと思うのですが。 

 歩道には放置自転車よりも花のほうがいいと思いませんか?地下鉄の駅や地下道にだって花や樹木があってもいいとは思いませんか? 公共事業が少なくて困っている建築業界の方にも新しいビジネスが生まれると思いますし。

 これからの僕たち日本人には、僕たちひとりひとりの「美意識」という感情も課題なのではないでしょうか?

 街の景観にも、建物にも、美術にも、音楽にも「美意識」を持って楽しむことが。 文化を育てるのは政府でもお役所でもなく、僕たち国民ですから。

 華美ではなく、品のいい「美意識」。

 ビジネスをするにもお勤めをするにも、それだけが人生ではなく、心のどこかに持っていたい大切な「美意識」。 人間としてのゆとりや余裕にもつながるのではないでしょうか?

 宗教を持たない僕たち日本人だからこそ、特に人としての「美意識」が大切なのではないでしょうか?

 「美意識」が人間としての「品格」にもつながると考えるのは、「美意識」に期待し過ぎでおろかなことでしょうか? どこかの政治家の先生が言った「友愛」のように、ひ弱で夢想的なことでしょうか?

 芸術や景色や自然を楽しむ心の余裕。 

 お金持ちにはぜひ株ばかりではなく、美術品・工芸品に投資していただきたいと思うのですけれど・・・。 バブルなお金でゴッホを買いあさって、挙句自分の遺体とともに焼いてくれなどと、世界があきれ返るような品のない戯れ言を述べる愚行ではなく、真の意味での収集や育成です。

 技術ばかりではなく、芸術・美術・工芸・伝統を愛し育て保存する心はこれからの僕たちの重要なテーマではないでしょうか? 

 せっかくの清潔な街並なのですから、ぜひともねずみ色の四角い箱だけの街を個性ある美しい日本の街並に変えましょう!

 なんだか「中年の主張」みたいになってしまってすみません・・・。

西洋建築美と歴史-10

2006年04月26日 12時32分55秒 | Weblog
長い旅でした。 ざっと歴史を駆け足で巡ってまいりましたが。




     <西洋>                             <日本>
中世(5~15世紀)          教会/権威
ロマネスク(11~13)          〃             源氏 : 平等院鳳凰堂
ゴシック (13~15)          ↓              足利 : 金閣
ルネサンス(15~16)  人間、対称、静、軽快、端整      信長 : 茶室
                      ↓
バロック(17)   教会、非対称、動、重厚、装飾、男性的   家康 : 陽明門
                      ↓
ロココ(18)         女性的、貴族的、軽快
                      ↓
19世紀           古典主義(啓蒙主義)→ロマン主義→印象派
                         ↓
20世紀         アール・ヌーヴォー→アール・デコ→モダニズム→ポストモダニズム
                
少し項目が入り乱れておりますが、歴史と美術・工芸・建築における大きなうねりと揺れ戻しを体感していただけたでしょうか?

 写真はマイアミで撮った「アール・デコ」様式のパステル色のホテル(だったかな?)です。

 建築は専門ではないし、間違ったことを言ったらまずいので、下記とウィキペディアをところどころ(かなり?)引用しました。
http://appleworld.com/entertainment/column/construction/construction_index.html


 そして次回にこの旅の考察をしたいと思います。

西洋建築美と歴史-9

2006年04月25日 00時00分02秒 | Weblog
 20世紀からはカテゴリー④の「近代」と呼ばれます。

 「アール・ヌーヴォー」は「1900年式」とも言われます。

 「Art Nouveau」 はフランス語で「新しい芸術」。 ドイツ語では「ユーゲントシュティール」(=young style?)。

 ウィーンの「クリムト」の金(きん)を用いた絢爛で平面的な絵画をはじめとして、ジャポニズムの流行によって、浮世絵に見られるような華やかな色使いや、華美で装飾に満ち溢れた、享楽的で官能的な芸術のうねりが起きます。
http://www2.edu.ipa.go.jp/gz/h-inb1/h-arv/h-kmt/IPA-inb100.htm

 工芸品などは植物をモチーフとしたしなやかな自由曲線で構成されます。

 以前書いたガラス美術での「エミール・ガレ」がいます。

 また、プラハの「聖ヴィート大聖堂」のステンドグラスを作り、ポスターで有名な「アルフォンス・ミュシャ」も代表です。
http://www2.edu.ipa.go.jp/gz/h-inb1/h-arv/h-mch/IPA-inb110.htm
http://www.h7.dion.ne.jp/~mizore/mucha/works.html

 彫刻や建築の装飾でも浮世絵の影響を受け、平面的で装飾的になります。 「浮世絵」はとってもすごいのです。

 建築ではなんと言ってもスペインの「アントニ・ガウディ」。 ガウディはゴシックを継承しつつ、古典主義やルネサンスを否定してバロックに通ずるところもあると思います。 写真はその「ガウディ」のアパート、「カサ・バトリョ」です、確か。 20年近く前に撮った写真です。 屋根が映っていないのが残念ですが、屋根は深海のうねりを表し、窓はかわいい亀?、壁は海のようにきらきら光ります。 ガウディはいつか別にやりましょう その他の「アール・ヌーヴォー」式建築物は下記を。
http://www.homemate.co.jp/useful/life_hobby/house/erp_yousiki/art_nouveau/index.asp

 時の日本の総理大臣として、1900年は伊藤博文氏。

 一方、「アール・デコ 」(1920~1930)は1925年のパリ万博の略称がアール・デコ博だったので(Arts Decoratifs=装飾芸術?)、そこから命名されます。 「1925年式」とも呼ばれます。「1900年式」と「1925年式」ですから、憶えやすいですよね。

 「アール・デコ」では、「アール・ヌーヴォー」への反発のように、なんといっても定規で引いたような「直線」、コンパスで画いたような円、波模様やイナズマ模様といった、いずれも幾何学的模様が特徴です。 ここでも反発と揺れ戻しがあります。

 建築ではNYの摩天楼が有名です。 エンパイアステートビル、ロックフェラーセンタービル、クライスラービル・・・。
http://www1.vecceed.ne.jp/~y-satoh/newyork/empire/empire.html
http://www1.vecceed.ne.jp/~y-satoh/newyork/rockefeller/rockefeller.html
http://www1.vecceed.ne.jp/~y-satoh/newyork/chrysler/chrysler.html
http://www.h5.dion.ne.jp/~t-arc17/photo%20trip/NY-midtown%20north/photo-trip_%20ny_midtown-north03.htm

 次回に写真を載せますが、同性愛者に理解ある(?)街、または著名人の高級別荘地「マイアミ」では、ヴェルサーチ邸をはじめ「アールデコ」の宝庫です。 アールデコの角ばって対称系のビルや装飾が、パステルカラーの明るく柔らかい色彩をまとい、大きなおひさまにきれいに照らされていて印象的でした。 

 アメ車もそうですが家具などでも、アメリカものは大きくて角ばっていて、色はパステルかメタリック・・・ヨーロッパものはフェラーリもそうですが、スマートで美しい局面流面系、色は原色・・・というイメージがあります。

 日本で言えば、大正14年。

 そういえば、「NTTドコモ代々木ビル」が僕的には「なんちゃってアールデコ」。 てっぺんの尖塔は実はクレーンであり、建物の構造上降ろせなくなったって本当でしょうか? あのビルは商業ビルではなく、中はサーバなどでぎっしりといううわさですが・・・。
http://www.eonet.ne.jp/~building-pc/photograph/sinzyuku-6.htm

 そして「モダン建築」へ。モダン建築は機能重視。

 機能に関係のない“装飾のための装飾”というものはまったくなし。 素材イメージは「鉄とガラス」・・・だそうです。

 また特定の地域や時代を連想させるような要素も一切ありませんとも。

 しかも日本における「モダニズム」は本物ではなく、それこそ「なんちゃってモダニズム」であり、本家本元のそれはそれで見ごたえのある洗練された「モダニズム」ではありません。 現代日本の街並があまりに殺風景でなんの面白みも美しさも感じさせてくれないのは、僕の勘違いかもしれませんが、このせいだと僕は思っております。

 ねずみ色の単なる箱が無秩序に無責任にばらまかれた「負の遺産」ですらあると考えております。 後で考察を加えます。

 そして「ポスト・モダニズム」へ。 1970年以降、「禁欲の四角い箱」と言われた、とってもツマラナイ「モダン主義」から、ギリシャ・ローマ時代の建築様式の復活があり、やっと個性的な建物が増えてきてホッとしております。 ようやく横浜みなとみらいやお台場あたりでは街の個性が感じられるようになりました。

 一方美術では、「フォーヴィスム(野獣派)」により「色の開放」が進みます。 また「キュビズム」では「形の開放」が行われ、「ブラック」や「ピカソ」が輩出されます。

 またダダイズム(破壊主義)、抽象絵画、シュルレアリスム(キリコ、ダリ)、ポップアート(アンディ・ウォホール、ロートレック)などを生みました。

 ちなみに映画「バスキア」では、同性愛者(?)のアンディ・ウォホール役を生前交流のあったデビッド・ボウイが演じておりました。

 現代音楽(クラシック)はじぇんじぇん理解できませんので、ご容赦ください。

西洋建築美と歴史-8

2006年04月24日 15時57分39秒 | Weblog
 いよいよ19世紀に突入です。

 18~19世紀は世界的大転換期です。

 アメリカの「独立宣言」、イギリスでは「産業革命」(木炭→石炭・蒸気機関)が、フランスでは「フランス革命」が起きて王制が終焉します。 そしてその後共和制へシフトし、革命後のフランスをまとめあげた「ナポレオン帝政」を経験します。

 日本でも大政奉還から明治を迎えます。

 大きな流れとして「古典主義」→「ロマン派」をキーワードとして覚えてください。

 この頃西洋では有名な仏の「ルソー」、独の「カント」をはじめ啓蒙主義(人間の理性による思考を重んずる主義)が隆盛し、理性と伝統が重んじられていました。

 このことは「宗教」と「科学」を理性的に分離させ、「資本主義」や「主権在民」を発展させます。

 啓蒙主義は進歩的であるとともに、伝統を重んじますので回帰的でもあり、またまた揺れ戻しが起こり、「クラシック・リバイバル」や「古典主義」が起こるのです。

 建築では「ギリシャ様式」の「大英博物館」。
http://all-a.net/a_map/uk_london/b-museum/b-museum01.html

 ナポレオンのオーストリア+ロシア軍撃破を記念して作った「ローマ様式」の「凱旋門」。
http://www.4travel.jp/img/tcs/t/album/1002/src_10022400.jpg

 そして「ゴシック様式」の「イギリス国会議事堂」に「ビッグベン」。
http://wadaphoto.jp/images/uk03.jpg

 音楽ではベートーベンが「古典主義」を完成させます。多音から和音へ。そして調性原理に基づく均斉のとれた理論的構成へ。

 絵画では貴族趣味の強い「ロココ」に対抗してナポレオンの影響もあり「新古典主義」が生まれます。代表者は、ラファエロを尊敬し、アカデミックで歴史主義の「アングル」。代表作は「泉」。
http://www.geocities.jp/nack735/ingres.html

 19世紀はまた、進化論の「ダーウィン」、電池を発明した「ヴォルタ」、遺伝学の「メンデル」、結核菌コレラ菌発見者の「コッホ」や予防接種を発見し細菌学感染症学の父「パストゥール」、その他「モールス」「エジソン」・・・と偉人伝記の宝庫です。

 さらに「古典主義」に反発するように「ロマン派」が生まれます。 ロマン派は中世「ロマネスク」に憧れ、大胆、自由主義、主観的感情、想像性、詩的、夢と現実の混同や非現実的なものへの憧れといった現実逃避の側面も持ちます。

 音楽では「古典派」を基礎として「ロマン主義」のもと感情的・主観的・民俗学的に発展を遂げ、前期にはシューベルト、メンデルスゾーン、ショパンらが。 後期にはブルックナー、ワーグナー、マーラー、R. シュトラウスらスケールの大きい、またより民族的な発展をしていきます。

 絵画ではスペインの「ゴヤ」や、「新古典主義」の「アングル」に対抗する「ロマン主義」の巨匠「ドラクロア」がおります。「民衆を導く自由の女神」はご存知だと思います。
http://www2.plala.or.jp/Donna/delacroix.htm

 輪郭を重視せずに動きをダイナミックに強烈な色彩で彩り従来の古典的な構図を無視する手法。従来の方法論を否定しますので、サロンや展覧会では賛否両論でひと悶着を起こします。

 その後「写実主義」(レアリスム)の「クールベ」が物議をかもし、
http://www2.edu.ipa.go.jp/gz/h-inb1/h-rea/h-crb/IPA-inb390.htm

「ミレー」
http://www2.edu.ipa.go.jp/gz/h-inb1/h-rea/h-mle/IPA-inb420.htmを経て19世紀末の「印象派」へ継承されていきます。蒔いた種はキリストの教えともされております。

 高校を卒業すればもう大学生か社会人です。激変の時期ですから、日本でも黒船は来るし開国を余儀なくされ、否が応でも世界(社会)に放り出されるのです。 激動の19歳。1868年が明治元年。(イヤ、牢屋)です。

 そして19世紀末には印象派の父「マネ」から「ルノワール」、「シスレー」、「モネ」、「ドガ」を経て後期印象派として「ゴーギャン」、「ゴッホ」、「セザンヌ」らが輩出されます。

 「マネ」は元祖印象派とされますが、視覚混合などは用いられてはおりませんので、色調をもってそう位置づけられるのでしょうか?以前も書きましたが、「黒」が印象的です。 また「笛を吹く少年」は浮世絵の影響を受けたとされ、背景をあえて立体化せず、2次元で描いております。
http://www2.edu.ipa.go.jp/gz/h-inb1/h-imp1/h-mne/IPA-inb230.htm

 絵の具を混ぜると濁るため、初めて混ぜずに描いたとされるのは「シスレー」。 いかにもイギリス人好みの風景画です。
http://material.miyazaki-c.ed.jp/ipa/internet_artmuseum/insyou2/sysl/IPA-inb290.htm

 「ドガ」は前述の「アングル」を習い、「線」を重視します。彼は他の印象派とは異なり、自然光よりも人工光を好み、動きをとらえようとしているように見えます。
http://www2.edu.ipa.go.jp/gz/h-inb1/h-imp1/h-dga/IPA-inb220.htm

 「ゴッホ」はご承知のとおり、浮世絵に影響を受け日本の色を求めて「アルル」に住みますが、「ゴーギャン」と一緒に暮らします。 悩ましい関係だったのでしょうか? 耳をそり落とす前日にも「ゴーギャン」にグラスを投げつけたりしていたとか。

 「ゴーギャン」はタヒチでの活動が有名ですが、案外「パクリ」が多かったようですね。

 「セザンヌ」は近代絵画の父とも言われ、プロからの評価はものすごく高いのですが、僕には色使いもタッチも野暮ったく感じてしまいます。 彼は空気を描写すべく「青」を使えとか、後のピカソにつながりますが物質の多面性を重視したり、見たままをとらえずに自然を円柱・円錐・球形でとらえ、花瓶が重力に逆らったり腕が長すぎたりします。
http://material.miyazaki-c.ed.jp/ipa/internet_artmuseum/koukiinsyou/cezannu/IPA-inb350.htm

 次は20世紀の近代です

西洋建築美と歴史-7

2006年04月22日 21時33分49秒 | Weblog
 なんか勢いが出てきてしまいました。 結構皆さんも美しい建造物に興味がおありなようで・・

 さて、ギリシャの石柱で出てきた「コリント式」のアカンサスですが、自宅の近所にありましたので撮影しました。 画像をクリックしていただくと大きくなるようです。

 まだ花は咲いておりませんでした。これはギリシャの国花であり、葉っぱはギザギザで触ると痛いです。葉っぱの形があざみに似ている(似てるかな?)ので「葉あざみ」とも言われます。 

 このアカンサスはなんと「唐草模様」の原型にもなっております。 ご存知でしたか? 

 ということは、ラーメンマークもこれが原型・・? だから「明治安田記念館」の一部の彫り物がラーメンマークなのですね。 この唐草模様が中近東からシルクロードを経て、中国経由で日本に入り、泥棒マークの風呂敷模様になったわけだと。

 イスラムでも使われるので、ヨーロッパでは「アラベスク」。 お供えのアカンサスが成長して遺品を入れたカゴを包んでいた様子に感動して石柱に用いられだしたとか・・。 花言葉は「芸術」・・・納得。

 さあ、本題のカテゴリー③中世はロココ

 ロココはロカイユ(rocaille)に由来する言葉だそうです。

 時代的には18世紀。Wikipediaから引用すると、「ロカイユ」は岩の意味で、バロック時代の庭園に造られた洞窟(グロッタ)に見られる岩組のことでした。それがなぜか1730年代に流行していた、曲線を多用する繊細なインテリア装飾をロカイユ装飾(ロカイユ模様)と呼ぶようになったそうです。

 ロカイユ装飾は、イタリアの貝殻装飾に由来すると考えられていますが、植物の葉のような複雑な曲線を用いた特有のものです。

 男性的で豪華絢爛(けんらん)なバロックに対し、女性的で繊細優美なロココ。 威厳ある緊張感のバロックに対して官能的な陶酔感を与えるロココ。 

 色で表現すれば白地に金。 これでイメージがわきますでしょ 主に室内内装に用いられる言葉です。

 ヴェルサイユ宮殿内や世界遺産であるドイツのヴィースの巡礼教会内部装飾が有名です。
http://world.poo.gs/isan/europe/wies.htm
http://www.geocities.jp/counde14/wies/wies_ich.html

絵画ではアントワーヌ・ヴァトーの「シテール島への船出」が有名です。
http://luckycharm.web.infoseek.co.jp/art2.html

 なんとなく・・あまりに貴族趣味に走りすぎており、ぼくにはちょっと・・・ 女性は好きかな・・

 音楽界ではバロックのバッハに対し、「ロココ」はウィーン古典派に属する「モーツァルト」のイメージ。

 このところ日本ではモーツアルトが生誕250周年でしたか?大ブレイクですが、有名な「アマデウス」という映画がありましたね。

 「ハイドン」が「ソナタ形式」を確立し、「モーツァルト」が発展させ、「ベートーベン」が完成させたのが音楽における「古典主義」です。

 バロックまでは音楽では「声楽曲」中心でしたが、この古典派の頃からピアノも誕生し楽器のみで演奏される「器楽曲」へと主役が変遷していきます。

 18歳になって、女性が急におしゃれに芽生えた心境でしょうか?

 次回は19世紀の激動の時代に突入です。

西洋建築美と歴史-6

2006年04月21日 09時53分08秒 | Weblog
 なんだか勉強チックで、辛気臭いし、若者からは「うざ」がられそうな内容で果たしてどうかとも思いましたが、アクセス数を見ると案外評判が良いみたいです。 でも嘘も多いかもしれませんのでくれぐれもご注意されてください・・・

 さて、近世のキーワードは「ルネサンス」「バロック」「ロココ」です。 今日はその「バロック」について。

 時代は17~18世紀。

 日本で言えば江戸時代初期。

 言葉は由来を理解すれば忘れないものです。 「バロック」はポルトガル語で「Barocco」が由来です。

 粘土がグニャっとしたとか、ゆがんだ真珠という意味だそうです。

 バロックはルネサンス同様イタリア発ですが、「バロック」と言えばぐにゃぐにゃしていびつで不整形のものだとか、グロテスクなまでの過剰な装飾のものという、後のフランス「古典派」の人たちから見た否定的なニュアンスがあったようです。

 ルネサンスの「永遠」に対しての「うつろい」をはじめ・・・。ここに歴史的な反動があります。

 カトリックの揺れ戻し現象です。

 ルネサンスの「民」から、それ以前の「神や権力者」へと価値観がシフトしてきます。

 禁欲的で質素すぎるプロテスタンティズムへの「反」宗教改革現象。 文化の中心がイタリアからフランスへ。 それまでの貴族諸侯の林立時代から絶対王政の中央政権へ。 そして「朕は国家なり」とまで言わしめたフランスブルボン朝の太陽王「ルイ14世」。 そういった社会的背景は見逃せません。

 ルネサンスの精神に対抗するような華麗、不均一、非対称、アンバランス、動、重厚がキーワードです。

 音楽では何といっても重厚な「JSバッハ」。 バッハ一族は音楽家一家なので、このヨハン・ゼバスティアン・バッハを区別するためにJSが付きます。「大バッハ」とも言われます。 他にもヘンデル、ビバルディがおります。

 まだまだこの時代はピアノは発明されてなく声楽が中心で、オペラが誕生し発展を遂げます。

 絵画では対称的で端整で神性の「ルネサンス」よりも、「バロック」のものは非対称で躍動感があり、光と影の表現、繊細さ、・・・僕は最も好きな時代というのは以前に書きました。

 特に画家カラヴァッジョやフェルメール、彫刻家ベルニーニは大好きです。

 その他フランダースの犬でおなじみの巨匠ルーベンス、スペインはトレドのエル・グレコ、「夜警」で有名なレンブラント、「ラスメニーナス」のベラスケス・・・など大物が。

 科学ではニュートンにガレリオ、哲学では「われ思うゆえにわれあり~コギト・エルゴ・スム~」で有名な近代哲学の父デカルト、「人間は考える葦」「クレオパトラの鼻が・・」のパスカル。

 文学ではドン・キホーテ(ドンキ・ホーテではありません、ちなみに←よくある勘違い)、ロビンソン・クルーソー、ガリヴァー旅行記・・・。

 さて建造物はどうでしょうか?

 有名なルイ14世の「ヴェルサイユ宮殿」もバロック様式と言われております。
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/49/Chateau-de-versailles-cour.jpg
 ベルニーニも参画した「ルーブル宮殿」
http://www.geocities.co.jp/Beautycare/4018/1nn.jpg

 などもありますが、下記を見れば建築物は総じてうねっており、なるほどグロテスクというのもうなずけますデス。
http://web.kyoto-inet.or.jp/org/orion/jap/hst/baroque.html

 いよいよ高校生も終わりになると、グロも理解し、化粧やファッション等装飾も過剰になってくるものです。

 以前も書きましたが江戸初期はベルニーニVS乾山、カラバッジョVS光琳です。 そして徳川政権の鎖国という「歪んだ」政策と「バロック」を、そして以前このブログで詳述した過剰な装飾、和製バロックの真髄(と勝手に僕が思い込んでいる)家康・家光の「東照宮・陽明門」と「バロック」をリンクするのは簡単でしょう。

 日本の建築では日本が誇る「迎賓館赤坂離宮」 最高裁判所と東京カテドラル聖マリア大聖堂と並び、最も美しい建物のひとつだと思います。
http://www.yosioka.jp/page070.html内装に隙がないほどの華美な装飾が見られます。

 上野は東京国立博物館にある「表慶館」。どちらも片山東熊(とうくま)氏の作品です。
http://humsum.cool.ne.jp/ue-41.html

 「バロック」堪能していただけましたでしょうか?

 次は「ロココ」です。

西洋建築美と歴史-5

2006年04月20日 01時02分26秒 | Weblog
 さあ、時代はもうカテゴリー③の「近世」 ここでのキーワードは「ルネサンス」「バロック」「ロココ」です。

 「ルネサンス」はご存知のように「再生」(re- 再び + nessance 誕生)を意味するフランス語です。

 時代は15~16世紀。

 本当はここを中心にして、ここより前の時代、ここから後の時代と連想するとイメージが膨らみますので、最後まで行ったら構築しなおしてみてください。

 ローマ人からしたら「中世」は、ドイツ野郎がのさばりやがるわ、教会や神父は堕落して、やたらにいばりちらして気に入らなければすぐ火あぶりにするわ、ペストは流行るわ・・・もう学問や芸術どころではありませんでした。 (必ずしも暗黒ではない、という見方もありますが・・・)

 しかしこの時期になると商業が盛んになって裕福な一般人も生まれ、中世末期のドイツ神学者「マルチン・ルター」を初めとする「宗教改革」によってカトリック教会そのものの価値の低下も手伝って、「人間復興」の気運が盛り上がったのです。

 時代は「コロンブス」が新大陸を発見し、中国から伝わった「羅針盤(コンパス)」が発展して大航海時代へと向かい、スペインもイスラムの支配から独立します。 

 さらにドイツで「活版印刷」が発明されて、これまでの羊皮紙からやはり中国経由の「紙」による印刷物が民間に広まります。

 またまた中国から伝わった「火薬(火砲)」によって騎士階級が没落し(以上がルネサンスの3大発明と呼ばれるもの・・・当時の中国は偉大ですね)、さらには「コペルニクス」が地動説を唱え・・・。

 教会や権威から「人間」へと大きな価値観のうねりが起きます。

 キーワードは「メディチ家」がパトロンとなった「フィレンツェ」の芸術家です。

 「プリマヴェーラ」や「ヴィーナス誕生」でお馴染の「ボッティチェルリ」と、ご存知「ミケランジェロ」「レオナルド・ダ・ヴィンチ」「ラファエロ」の3大スターを覚えましょう。

 天才科学者ダ・ヴィンチは「空気遠近法」と「スフマート」という技法も編み出します。

 「空気遠近法」では大気(空気)によって波長の短い青い色が散乱するため、遠くの山ほど青く見える理屈です。 「モナリザ」でも遠くの景色ほど青っぽく描いてありますよね。 なるほど僕の肉眼でも遠くの山は藍がかって見え、そのたびに僕はダ・ヴィンチってすげーよなと感心しております。 夕焼けがどうして赤く見えるのかもこれで理解したのを思い出しました。

 また「スフマート」は、それまでのように輪郭を描かないで、光と影の境界をぼかす方法です。

 ただしダ・ヴィンチの作品は懲りすぎのため、偏執的に細かいところと手が回りきらないところの差が激しいような気がしちゃう・・・。

 またラファエロの絵もモデルが何だか単に好みではありません・・・。 美意識の感性が僕とは異なるようです(なんちゃってですが・・ごめんなさい)。

 また文学ではダンテの「神曲」が有名です。古代ローマ文学とキリスト教の融和が見られます。

 建築では「教会→民へ」ですから民間の建物で「ルネサンス」様式が見られます。 特徴は1階がごつごつ、2階以上が滑らかになり飾り窓と天井の出っ張りです。一般にルネサンスは端整、均一、対称、均衡、静、軽快等がイメージです。下記をご覧ください。
http://web.kyoto-inet.or.jp/org/orion/jap/hst/renais.html

 どうですか? 初回に書いた「日本橋高島屋」がなるほど典型的ルネサンス様式でしょ?

 一方日本では「織田信長」。 やはり特別な強運の持ち主ですから、「ルネサンス」にぶつかります。

 しかして信長も偶然ながらこの時期に、近代国家成立のためには必然であるわが国の「政教分離」を、延暦寺を焼き払って皆殺しにしてしまうという、まさに「うつけ」者による狂気の沙汰にて一夜にして成し遂げてしまっていたのです。 これにはマルチン・ルターもびっくりでしょう。

 さらに日本でも豪商が現れ、鉄砲やキリスト教が伝来しますので、西洋ばかりではなくこの日本でも「ルネサンス」ですね。

 「ヒト」で例えれば高校入学の15~16歳のときに、革命的なルネサンスが起きるのです。 権威→民、つまり先生→自分に目覚めるのが高校入学時です。

 シンプルで端整な「ルネサンス建築」と、ホントは安土桃山は豪華絢爛なのですが、ここは「わびさび」の究極、千利休の「茶室」をリンクしてみてください。

 次回は「バロック」ですよ~

西洋建築美と歴史-4

2006年04月19日 13時04分00秒 | Weblog
 さてカテゴリー②中世の<ゴシック時代>にたどり着きました。

 ゴシック時代はルネサンス以前の200年をさします。 13~15世紀くらい。

 そもそも「ゴシック」の由来は、ルネサンス時代のローマ人が中世時代の美術を粗野で野蛮なものとみなすために「ドイツ風の」あるいは「ゴート風の」と呼んだことに由来する蔑称なのです。 ゴート人はゲルマン民族の一派です。

 今日では「ゴシック」というと、中世のヨーロッパでキリスト教とともに栄えた美術の様式をさします。 

 中世では「ローマ風」の「ロマネスク」と「ドイツ風」の「ゴシック」というように、<○○風>がキーワードですね。

 建築で言いますと、ここで初めて教会に「フライング・バットレス」と言う外部からのつっかえ棒と、「控え壁」と言われるいわばブロック塀の支えのような内部構造物に支えられ、「尖塔アーチ」と言われる高くてとがった仰ぎ見る天井が登場し、内部空間の上方を広く取る「ゴシック」建築に至ります。 

 その恩恵によって美しい「ステンドグラス」が登場するのです。

 建物で言えば、パリの「ノートルダム大聖堂」を覚えましょう。

 ちなみにノートルダムとは、フランス語で「Notre-Dame」ですから、英語では「Our Lady」すなわち「私達の貴婦人」であり、<聖母マリア様>のことです。 つまり「マリア信仰」に基づくマリア様に捧げられた教会です。ご存知でしたか?

 マリア様はイエスの母親であり(だけでもあり)、神でも預言者でも使徒でもありませんから、本来神学的に信仰の根拠はありません。

 カトリックや東方正教会ではイエスとともに「共同贖罪者」として聖母マリア信仰が盛んですが、プロテスタントでは特別には考えられておりません。

 ちなみに「ロザリオ」はカトリック教徒が身につけているものですが、聖母マリア様にバラの冠を捧げ祈るという意味があります。 この教会は皆様ご存知のように、美しいばらの窓のステンドグラスが特に有名ですが、このロザリオと関係するのでしょうか?

 またここは、「ノートルダムのせむし男」の舞台として、さらにはナポレオンの戴冠式も執り行われ、パリの距離が計測される拠点でもあるので、東京の日本橋みたいなシンボリックな存在なのですね。

 初期ゴシック建築の傑作と言われております。

 下記を見ると、フライング・バットレスや控え壁の様子も良く分かります。
http://www.hum.u-tokai.ac.jp/~nakagawa/cours/page007.html

 ちなみに丹下健三氏設計の「東京都庁第一本庁舎」はこの「ノートルダム大聖堂」の影響を受けているとされています。 二つの塔とそれを抑えるような中間の水平構造物など・・・確かにうなずけます。 見比べてください
http://www.eonet.ne.jp/~building-pc/tokyo/tokyo-243tokyo.htm

 さらにちなみに、丹下健三氏は他にも、美しい代々木体育館、仰天するような目白の東京カテドラル聖マリア大聖堂、赤坂プリンス、広島平和記念公園・・・まさに日本建築界の巨匠ですが、以下の丹下健三の欄で見ることができます。
http://www.archi-map.net/map_index_09.htm

 特に、2005年3月、ご自分の葬儀も執り行われました「東京カテドラル聖マリア大聖堂」はすごすぎるぞ・・・
http://www.tokyo.catholic.jp/katedoraru.html

 ゴシック建築の発展により、天井が高くなり、ステンドグラスや宗教画などの装飾が発展したのですが、一方ではスペインの巨匠「ガウディ」は、ゴシック建築は松葉杖をついた瀕死状態と批判的です。 ガウディについては別の機会にやりましょう。

 またスペインのど真ん中、カスティーリャ・ラ・マンチャ州の首府であるトレドは、かつてのスペインの首都でもあり、やはりゴシック様式の傑作「トレド大聖堂」を中心として旧市街全体が「世界遺産」となっております。

 スペインに1日しか滞在できなければ迷わずトレドに行けと言われ、画家「エル・グレコ」の出身地でもお馴染の美しい街です。
http://blog31.fc2.com/f/fkdk/file/ES02_0009.jpg

 今日のまとめとして、「ゴシック」建築様式は下記をご覧ください。
http://web.kyoto-inet.or.jp/org/orion/jap/hst/gothic.html

 ちなみに「ゴシック文字」は、日本語やワープロのフォントでのゴシック(角ばって、太さが均一)とは異なり、この時代に使われた文字形態であり、今でもドイツでは目にします。
http://www.linotype.co.jp/fonts%20by%20inspiration/blackletter/blackletter.html

 日本国内では、このブログに以前登場している「東京国立近代美術館工芸館(旧近衛師団司令部)」もゴシック様式です。
http://www.ne.jp/asahi/angel/takuan/kindaibijutukankogeikan.htm

 日本の時代では室町時代。 「中(学)生」後期は「足利」塾で「頭を尖らせ」て消しゴムを「ゴシゴシ」というイメージを。

 「ノートルダム大聖堂」と「金閣」をリンクさせましょう。

 次回はいよいよ「ルネサンス」でござんす

西洋建築美と歴史-3

2006年04月18日 16時00分32秒 | Weblog
 黄緑色が一番美しい時期になってきましたね。

 さて、本日はカテゴリー②の<中世>です。

 5~15世紀。ヒトで言えばおおむね小学~中学生(中世)の「義務教育期間」です。この時期は学校にもいやいやながら行きますので「暗黒」なのです。

 西洋史では「中世」を一般に、「西ローマ帝国」がゲルマン人によって滅亡させられた476年~「東ローマ帝国」(=ビザンティン帝国=キリスト教化されたギリシアを中心としたローマ帝国)がオスマン・トルコによって滅亡させられた1453年ころをもって終わりとする見方もあります。

 つまりローマが西と東で2回終わるまでです。 

 その後、ややこしいことにドイツ人が作った「神聖ローマ帝国」ってのも現れますので「ローマ帝国」には3種類ありますから混同しないでください。

 西ヨーロッパの「中世」は、ペストの流行やら異端審問(魔女狩り)などに象徴されるような「暗黒時代」という見方をされております。

 そもそも375年からゲルマン民族(ゴート族)が、アジア系遊牧民族のフン族に圧迫されて、西方への大移動の開始を余儀なくされます。

 そのうちゲルマン王国の中でも「フランク王国」が台頭し、「西フランク」が後に「フランス」に、「東フランク」が「神聖ローマ帝国」を経て「ドイツ」・「イタリア」となりフランス・イタリア・ドイツの原型が中世にできてきます。

 一方で西方ゲルマン民族のうちの「アングロ・サクソン」人がグレート・ブリテン島に渡り「イギリス」に侵入します。

 その頃イスラムは隆盛します。

 8世紀くらいにはヨーロッパは「西ヨーロッパ」と「東ローマ帝国」(ビザンティン帝国)、そして巨大な「イスラム帝国」という「みつどもえ」を呈します。

 ところが西ヨーロッパは12世紀になるまでは経済力・文化などの面などでイスラムや東ローマ帝国に大きく遅れをとっていたのも事実です。

 また8~15世紀はスペインでもイスラムの支配下です。

 このように中世は、ルネサンス時代のローマ人を中心とする西ヨーロッパ人からすれば、輝ける古代ギリシャ・ローマ時代からしても、ゲルマン民族が支配する暗黒時代であったのです。 現在の国々の建国に至る混沌とした時代が中世です。

 仮にギリシャから栄冠を奪って世界一であったイタリアサッカー界が、ドイツやトルコにいいようにやられていたら面白いはずもありません。

 中世は日本で言えば飛鳥時代~足利氏の室町時代まであたりです。

 さてさて、そんな中・・・キーワード「ロマネスク」ですが・・・

 ロマネスクは時代的には11~13世紀を指します。

 中世西ヨーロッパの建築・美術のうち、中世後期のゴシック以前のものを区別して用いられます。

 主に建造物に使われることが多いです。

 ロマネスクとは「ローマ風の」という意味です。

 ローマ時代の木造で平坦な天井から、石でできた半円のトンネル(ヴォールト形式)を用いたのが特長。 徹底して石にこだわりだしたのです。

 そして、スペインにある聖地「サンティアゴ・デ・コンポステラ」の大聖堂を覚えましょう。 
 
 そんな名前覚えられるか!って?・・・大丈夫です。

 「サンティアゴ」は12使徒のひとり、スペインで布教を行った「聖ヤコブ」のことです。 セイント・ヤコブ→サンティアゴでしょうか。

 ヤコブは英語名ではジェイムス、フランス語ではジャック、異形でディエゴとありました。 ということは、「サンディエゴ」もあのマラドーナも聖ヤコブから来ているのですね。

 「コンポステラ」はキャンパス・ステラつまり「星のキャンパス」であり、星に導かれて聖ヤコブの墓を発見したからとのこと。

 そしてこの地が東のエルサレムと並んで、西の聖地となったため巡礼が流行します。このスペイン北西部に至るお隣フランスからの巡礼路は、日本の「熊野古道」と並び、道としては珍しい「世界遺産」です。

 下記をご覧ください。これが「ロマネスク」様式です。
http://hukumusume.com/366/world/isan/itaran/131.htm

 またこの巡礼路が以前「スペイン」で書いた、レ・コンキスタ(国土回復運動)につながるとされております。

 ここを巡礼するために街道沿いの人里離れたへんぴな場所(後述の「ゴシック」は都市部)に作られたのが「ロマネスク様式」です。

 ピサの(斜塔ではなく)大聖堂もロマネスク様式では有名です。

 無骨で「半円形の天井」が目印。

 ロマネスクといえば街道・・・日本で言えば源氏の鎌倉時代。

 小学校を卒業し中学入学時にはロマンあふれる鎌倉を行く姿(ゴロ風イメージ)で憶えましょう。

 一方日本のこの時期の建物も負けてはいません。 世界遺産にして国宝、京都は宇治が誇る、栄華を極めた藤原道長の息子「頼通(よりみち)」が建立したという、かの10円玉の「平等院鳳凰堂」。見よ、この美しさ。 本当に鳳凰が翼を広げているかのごとくのこの反り返った屋根を。 池に映るこの姿はまさに極楽浄土
http://www.byodoin.or.jp/
 
 「ロマネスク」街道に寄り道して、ロマンチックに鳳凰が飛ぶ姿をイメージして、「平等院鳳凰堂」をリンクしてください

 他の「ロマネスク」様式は下記を参考にされてください。
http://web.kyoto-inet.or.jp/org/orion/jap/hst/romanesq.html

 明日は中世のもうひとつのキーワード「ゴシック」に挑みましょう

西洋建築美と歴史-2

2006年04月17日 14時06分02秒 | Weblog
 八重桜がとってもきれいですね ピンクの濃いものも八重桜なのでしょうか

 さて壮大なテーマですが・・・。

 昨日の4期の「キーワード」をつかみましょう。

① 古代:ギリシャ・ローマ時代
② 中世:暗黒時代、キーワードは「ロマネスク」と「ゴシック」
③ 近世:「ルネサンス」「バロック」「ロココ」
④ 近代:「アールヌーヴォー」「アールデコ」

 ここで歴史を「ヒト」に見立てるのです。

 世紀を年齢で換算しますので、今21歳です。

 そしてここが「ツボ」ですが、「ルネサンスを中心」に年代を覚えましょう。
 
 ルネサンスは「15~16世紀」です。 (←最重要

 つまり「ヒト」で言えば、高校一年生の入学時がルネサンスです。

 この「15~16世紀」の西洋の「ルネサンス」と日本の「織田信長」をリンクさせてください。

 また1600年の「徳川家康」(1603年)と17世紀の「バロック」がリンクすれば縦横ともにつながります。

 簡単でしょ?

 おつむを軟らかく使うために、これから後は多少ゴロも使いますね。

 次にそれぞれの時代の解説です。

 本当はルネサンスから始めたいのですが・・・。ここはじっと我慢。

 まず、カテゴリー①<古代>

 これはギリシャ・ローマ時代でしたね。

 ギリシャ時代の列柱の様式を暗記しましょう。

ギリシャ前期:ドーリア式(質実):シンプル・・・「パルテノン神殿」
ギリシャ中期:イオニア式(優雅):渦巻き・・・「アルテミス神殿」
ギリシャ後期:コリント式(華麗):渦巻き+アカンサスの葉っぱ・・・「明治安田記念館」

 それぞれの形は下記で確認してください。

http://appleworld.com/entertainment/column/construction/greek_index.html
http://www1.ocn.ne.jp/~gmw/katarogu/01/kt01.htm

 ローマの格闘技場の「コロッセオ」では1階から順にドーリア式、2階はイオニア式、3階はコリント式なっているので有名です。

 面倒な方は「コリント式」だけ憶えてください。

 この時期は西ヨーロッパからすれば、とっても幸せな栄光の時代でした。

 時代的には375年のゲルマン民族移動前後まで。つまり4~5世紀ですから、ヒトで言えば幼稚園児までは分類はカテゴリー①の<古代>になります。

 明日は中世からです。

西洋建築美と歴史-1

2006年04月16日 14時31分20秒 | Weblog
 女性の皆様、「日本橋」は大好きでしょう。僕も先日、「日本橋三越」に「筑紫樓(つくしろう)」の「ふかひれご飯」を食べに行ってきました。 僕は品が無いので、あの濃い味とスープかけご飯を無性に食べたくなることがあるのです。

 日本橋の「高島屋」でショッピングを楽しむ時も、あのビルを一度じ~っとご覧ください。

 天井のでっぱりと飾り窓は、典型的な「ルネサンス様式」なんです。 美しいでしょ?

 また同じく「ルネサンス様式」の「日本橋三越」と、その隣の「コリント式」柱をもつ「三井本館」(銀行部分、上のマンダリンホテルも有名ですが)とを見比べてみてください。 さらに少し足を伸ばして「三井本館」の裏手に回り、「ルネサンス様式」+「バロック」様式が取り入れられている「日銀」の建物をご覧になってください。

 美しくないですか?

 お前の文章はやれ「バロック」だの「ゴシック」だの、やれ「アール・デコ」だあ「アール・ヌーヴォー」だの・・・「ボジョレ・ヌーヴォー」とどう違うんだ?と質問されまして、僕も知識を整理するために、もう一度復習してみようと思います。

 そもそもそれらは主に西洋の建築・工芸・絵画・音楽・小説などの分野で使われることが多い時代的なカテゴリーです。

 それは古代・中世・近世・近代の4期に分けるものがおおもとになっております。また建築や美術、それぞれの分野で微妙に言い回しが異なります。 僕は専門家ではないので、大雑把に覚えればいいと思っております。

 日本の時代区分も西洋史に倣っておりますので、西洋史と同様に4期分けが好みのようです。

 ただし日本と西洋の横の時系列は一致しておりませんので、日本と西洋の4期区分を混同なさらないでください。

 それにいつも思うのですが、学校の「歴史」の勉強は「世界史」と「日本史」をわけるので横のつながりができないから、面白くもなんともなくなってしまうのだと感じております。

 また石器時代から習ってもつまらないですから、僕の独自法(ただし基本は僕の薄く、はりぼてのような知識ですので・・)をお話したいと思います。 うそも多いかもしれませんので、お読みになられる際はうそを前提に考えてください。

 歴史は美術・芸術・宗教から考えると面白いです。

 それにこのカテゴリーを会得すると西洋の歴史の大きなうねりを体感でき、回顧・懐古、時代の揺れ戻しを感じることができるので震えます。

 僕流の憶え方ですから邪道中の邪道ですのであしからず。

 それと僕は歴史も芸術も建築も素人なので、うそや思い違い、勘違いもあると思いますので、ただし悪意はございませんが、皆様が個人で修復修正の上、皆様の知識としてください。 また、ご専門の方は飛ばすか、お読みになられてもあら捜しをなさらないよう、くれぐれもお願いいたします。

 美しいものを見る場合、少し体系立てて憶えると、また楽しみが膨らみます。

まず大きく分けて、4つを憶えましょう。
① 古代
② 中世
③ 近世
④ 近代~現代

次回へ続いて・・みます・・・

ボヘミアとガラスの美-5

2006年04月12日 12時59分30秒 | Weblog
 若い世代の方は、「ボヘミア」と言うとファッションのことを思い浮かべるオシャレ人も多いのではないでしょうか? アメリカのウェスタンファッションの出生はボヘミアとされており、自由奔放さも加味されて、例えばフリルやレースにブーツを合わせたりするファッションをボヘミアンと言ったりする・・の?

 さてさて、日本での幻のガラス・・・それは鹿児島にあり その名は「薩摩切子(きりこ)」

 切子とはガラスのカット文様をさします。 江戸切子はヨーロッパグラスと同様にカットが急峻なため、はっきりとしたきらきらしたカッティングです。

 それに対し幕末の頃から島津藩の庇護下で発展した幻の「薩摩切子」に見られる「ぼかし」技術は、ガラスに独特の奥行きや立体感、そしてあったか味を与え、さらにはそれが日本的な「わびさび」にまで通じます。

 「薩摩切子」は生麦事件から発展した薩英戦争の影響などで忽然と姿を消したため、「幻のガラス」と呼ばれておりますが、最近復活している模様です。

 ヨーロッパのガラスは冷たい印象ですが、この薩摩切子は同じガラスでも暖かみを感じます。 これは透明なクリスタルガラス上に、青や赤などの色ガラスをわざと厚くかぶせ、角度の浅いカットを加えるので、透明部分と色彩部分に微妙な色のグラデュエーション(ぼかし)をつける方法によるものです。 僕には特に藍色のものが美しく感じるのです。

 ぜひ下記をご覧ください。
http://www.satuma-vidro.co.jp/satuma_vidro_framepage.htm
(特にこのHPの上方のGallaryから入って、右下の「復元薩摩切子秀逸品」の写真をクリックし、「脚付蓋物」と「ちろり」をご覧ください!

 近年の日本では、東京の保谷(ほうや)にその社名が由来する「HOYA」が、遠近両用メガネだけではなく、最近ではHDD(ハードディスクドライブ)用ガラスディスクでもiPodに利用されるなど、健在ぶりを示しております。 これはガラス基板に磁性膜をつけたガラス磁気メモリーディスクで、従来のアルミディスクに比べて表面の平滑性や耐衝撃性に優れており、高密度・大容量化が可能となるものだそうです。(HOYAのHPより引用) ミスユニバースのトロフィでも有名ですけれど。

 またいかにも外資系のような名称の純国産企業「オリンパス」も、われわれ医療従事者には有名な内視鏡のトップブランドです。

 カメラのレンズにまで話がいくと、止め処も無く、また専門外の僕よりもカメラオタクの方はたくさんおりますので、この辺でやめておきましょう・・・。

 さてそんな「ガラス」の原料の主成分である「シリカ(珪酸=けいさん)」は化学式で書くと「SiO2」です。 シリカは石英(せきえい)の砂、珪砂(けいしゃ)や石、珪石(けいせき)から採られます。 シリカは地殻の27.8%を占め、酸素に次いでなんと2番目に多い鉱物界の中心元素なので、ほぼ無尽蔵と言ってもよいくらい埋蔵量が豊富ですから安心です。

 シリコンは僕たちの仕事でも異物反応が少ないため使いますが、珪酸の純度の高いものは半導体シリコンの原料として使用されます。

 また、石英に少し不純物が混ざったために、独特の色がつく場合があります。 うちにも子供の頃、なんとなく家に置いてありましたが、たとえばきれいなバラ色になったものを「紅石英(ローズ・クォーツ)」といいます。 何百年~何千年という悠久の時間をかけて、いくつかの不純物の美しい層を作った場合が「めのう(白黒の場合オニキス)」と呼ばれます。

 「めのう」はまた勾玉(まがたま)とも呼ばれ、ちなみに日本の「三種の神器」のひとつであり、現在皇居に保存されるのが「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」です。 他の2種は「草薙の剣(くさなぎのつるぎ=熱田神宮)」と「八咫鏡(やたのかがみ=伊勢神宮)」です。 見てみたいとは思いませんか?

 さらには石英の結晶が六角形に成長した透明なものは水晶(すいしょう)といわれます。 水晶はそのまま使われたり、砕かれてガラスの原料になる場合もあります。水晶は安定的に発振しますので、水晶(クォーツ)時計などに使われますが、天然水晶が枯渇してきたために開発された人工水晶の約半分は日本で生産されております。

 なお、生物も平均0.1~1%のシリコンを含み、動物の羽毛や爪などに多く含まれています。

 古代エジプトでも作られていた「ガラス」が、悠久の時空を超え現代なおもて最先端技術に応用されている・・・。深いなあ・・・。

ボヘミアとガラスの美-4

2006年04月11日 13時40分42秒 | Weblog
 ボヘミアと言えば、イギリスのバンドQeenの「ボヘミアンラプソディ」でも有名ですね。 この曲を最初に耳にしたら驚きますよね~。

 さて「ボヘミアングラス」はその後、「イギリスガラス」(Flintグラス)にその地位を脅かされそうになるのです。

 「イギリスガラス」は「鉛クリスタル」のため、ボヘミアの「カリクリスタル」よりも柔らかで細工に適しており、さらにボヘミアングラスより屈折率が高いので輝きも良かったのです。

 現代の「クリスタル」と呼ばれるものは一般にこの「鉛クリスタル」であり、鉛の含有率が24%以上のものを「クリスタル」と呼んでおります。 鉛の含有率が高いほど輝き(ブリリアンシー)が増しますが、硬度は低く細工がしやすくなります。

 「Flintグラス」は鉛含有量が多いため、ウィスキーの氷が奏でる「カラ~ン」という音は響きが良く、これにかないません。 

 ちなみに現代ガラスの最高峰の人気を誇るフランスの「バカラ」もガラスに含まれる酸化鉛の割合が普通のクリスタルガラスに比べ30%(普通は24%)と多いので、輝きが美しくなおかつ重量感をともないます。

 ところが「ボヘミアングラス」は、天才エガーマン(エゲルマン)が「マイセン」で学んだ技術をガラスに応用して発展させ、その装飾の美しさで地位を奪還します。 

 彼はガラスではなく、マイセンですから本来は陶磁器の絵付師でしたが、釉薬(ゆうやく=うわぐすりのこと)の知識のもとにそれらをガラスに応用し、乳白色のガラスにエナメル絵付けをして好評を博しました。 

 また不透明な赤色ガラスの表面をステイニング(着彩)によって玉髄・瑪瑙(「めのう」)のような模様をつける技法や、セモンタシオンという着色法の技術ではガラス表面に酸化金属溶液を塗って焼成して半透明に着色する技法(酸化銀による黄色、酸化鉄による赤が有名)を考案します。 その他エガーマンは、黒曜石(溶岩がガラス状に固まったもの)を模倣したヒアリスグラスや、また孔雀石を模倣したジャスパーグラス等を作り、これにカットやエナメル絵付けを行っていたといわれております。
http://www.glass-madrid.com/syukizatugaku/page7-2.htmlを引用しました。)

 ボヘミアングラスでは先に書いた「モーゼル社」やこの「エガーマン社」が有名です。 モーゼル社は鉛を含まないのが特長で、「ゴリオ爺さん」でお馴染のフランスの文豪バルザックをして「The king of glass」と言わしめたそうです。
 
 他にもオーストリアの「スワロフスキー社」は、やはり酸化鉛の含有率を32%として、含有率を高めることによって反射の色などに工夫を凝らしております。 そのため、シャンデリアやアクセサリーでも人気です。

 ヴェネチアングラスの代表「モレッティ」や日本の「佐竹ガラス」などは、ガラス工芸が趣味な方(僕は見るだけ・・)にはお馴染みです。

 日本でも(異常)人気のフランスの「エミール・ガレ」は、ガラス工芸でのアール・ヌーヴォーのナンシー派(ナンシーという地名)ですが、つい最近没後100年となりました。 彼の技術とガラス工芸における発展、その貢献は素晴らしいものがあります。 

 ガレは日本美術愛好家としても知られ、技術的には中国ガラスに影響されて、こと日本人好みの自然の植物やとんぼなどの昆虫、鳥をモチーフとしたガレ美術を発展させます。 月光色ガラスや酸化鉄を用いて色付けした黒いガラスのシリーズ等が有名ですが、彼の「もののあはれ」感をにじませた作品は「ものいうガラス」とも呼ばれます。 

 ただ彼がジャポニズムを愛し、日本的情緒に溢れる作品が多いため、日本での人気が異常であり、フランス本国ではそこまででもないとも思います・・・。 以前確か「なんでも鑑定団」で本物のエミール・ガレが1,000万円以上の値をつけていた気が・・・。 下記を参照してください。
http://wwwi.netwave.or.jp/~hkangawa/newpage58.html
http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/kikaku/page/2005/0122/200501.html

 さあ一方、江戸に伝わって開花した日本のガラス「ぎやまん」も負けてはおりません。 ちなみに「ぎやまん」はオランダ語の「ディアマンテ(ダイヤモンド)」に由来します。 「びーどろ」もポルトガル語でガラスのことです。 次回は日本における「幻のガラス」について始めたいと思います。

ボヘミアとガラスの美-3

2006年04月10日 16時26分11秒 | Weblog
 ボヘミアと言えば「ボヘミア~ン」という歌が有名ですが、ワクにとらわれない自由奔放な生き方っていう意味合いもありますね。

 そしてチェコといえば忘れてはならないのが、「ボヘミアングラス」です。 「モーゼル」社のものが有名ですね。

 皆さんも子供の頃、ガラスとかビーズ、ビー玉など色が透けるものやきらきら光るものに対して憧れたことと思います。 女性は今でも大好きでしょう

 僕は子供の頃、舶来チョコレートの「銀紙」でできた青やピンクや緑やオレンジなどが大好きで、お気に入りの色のものは食べるのを後回しにしたり、今でもなぜか目が留まりわくわくしてしまうのです

 遠い記憶の果ての果てに、おもちゃなのですが・・・テレビの形をしており、その中に電球がはいっており、画面のところに黒い台紙をセットして、透明なプラスチックでできたブロックみたいなものを台紙の線に沿って刺していくと、とってもきれいな蝶などになったりするのがありました。 それを持って押入れに入って、電球で光らせるとピカピカしてなんとも美しかったのを、大人になった今でも夢に見るほどに忘れることができません。

 その後も誰もが折ったと思いますが、折り紙の手裏剣での2色の組み合わせに異常なまでの執着心を持ったり・・・また学校の図画工作などで使うセロファンやらが大好きで・・・。

 今では映画も絵画も「色」にこだわってしまいます。

 僕は男性なので幸いなことに宝石には余り興味がありませんが、どういうわけかガラスが好きなんですよねえ・・。 多分例のテレビのぴかぴかおもちゃの影響だと分析しております。

 ガラスは古代エジプトやメソポタミアでも製造法の記載があります。

 その後、吹きガラスの「ローマングラス」が花開きました。
 
 イスラムの世界でもカッティングの美しい「ペルシャガラス」が有名です。

 しかしガラスといえばイタリアは水の都ヴェネチアの「ヴェネチアングラス」、またの名をムラーノ島の「ムラーノグラス」があまりにも有名で偉大です。 

 ソーダ石灰(ソーダライム)を使用し、華やかな装飾が美しいガラスです。また色グラス、エナメル彩色、レース・グラス、万華グラスなどなどガラスといえば「ヴェネチア」です。 また円形模様のカットも特長で、装飾的なガラス杯や、シャンデリア、鏡も製造されます。

 酸化鉛を入れることで屈折率を上げて輝かせるという製法は、島を抜け出したものを死刑にしてまでの秘法としていたほどです。

 ガラスの色は青色の場合、濃い青はコバルト、水色は銅などを用い、赤色も硫化カドミニウムや銅、金、セレンなどを、紫はマンガン、緑色では鉄、銅、クロム、ウラニウムなど、茶色には硫黄、そして黄色は鉄、セリウム、ウラニウム、チタン、銀などを用います。

 化学の教科書で「炎色反応」ってのがあったの、みなさんも憶えてますでしょ。 僕はあの色にもまいりました。 特に銅の燃える「青緑色」のきれいなこと・・。 焚き火の赤紫の炎は、植物中に含まれるカリウム塩の色、花火ではバリウム塩の緑色、ストロンチウム塩の赤色、銅塩の青緑色などが良く使われます。

 おっと横道にそれましたが、グラスは現代ではフランスの「バカラ」のガラスが有名ですが、みなさんもご存知のようにチェコの「ボヘミアングラス」も「ヴェネチアングラス」と双璧のブランドです。

 「ボヘミアングラス」の特徴は、レースガラスなどで有名な色と輝きのヴェネチアに対し、「クリスタル」といわれる堅くて限りなく無色透明なガラスと、そこに施されるプラハの宝石職人さんによる正確無比なカッティング技術です。

 審美眼に優れたルドルフ2世のもと花が開きましたが、これは輸入して使っていた原料のソーダ灰よりも、国内のブナの木炭を使うことにより、その木炭に含まれる「カリウム」の影響でそれまでのヴェネチアングラスを凌ぐ透明度を獲得できたのです。 そのためヴェネチアの「ソーダグラス」に対し「カリクリスタル」と呼ばれます。

 なんといっても「光沢」が良いのが特長です。

 そんな「ボヘミアングラス」に強敵が出現しますが、それは次回に続きます・・・