【筆洗】:織田作之助の『夫婦善哉(めおとぜんざい)』の中に描かれる大阪、法善寺横丁のぜんざい屋さん。
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【筆洗】:織田作之助の『夫婦善哉(めおとぜんざい)』の中に描かれる大阪、法善寺横丁のぜんざい屋さん。
注文すると一杯ではなく二杯ずつ運んでくる。それで「夫婦善哉」というのだが、商売上手の大阪人の知恵らしい▼小説にこんな説明がある。「一杯山盛にするより、ちょっとずつ二杯にする方が沢山(ぎょうさん)はいってるように見えるやろ、そこをうまいこと考えよったのや」「一人より女夫(めおと)の方がええいうことでっしゃろ」(『夫婦善哉』)▼明治十六年開業というお店は現在も営業しているそうだ。せっかくG20サミットで大阪にいらっしゃったのなら、お二人にもぜひ、寄っていただきたかった。米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席である▼米中の貿易摩擦によって世界経済の下振れリスクは高くなっており、その兆しもある。米中という二杯の椀(わん)。それが仲良くそろっていなければ自由貿易体制の屋台骨は大きく揺らぐ▼その両首脳。昨日の会談では貿易交渉を再開することで合意し、米国は中国の輸出品に対し追加関税を見送ることにした。G20での両国に対する厳しい視線を気にしたか。関係改善の糸口のようなものが見えてきた▼「善哉」の語源は諸説あるが、仏教語で「善き哉(かな)」(素晴らしい)という意味の梵語(ぼんご)を漢訳したものという。大阪の地での両国の歩み寄りにホッとするものの、鍋に小豆が入った程度で「善哉」にはまだ遠い。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【筆洗】 2019年06月30日 06:10:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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