【天風録】:星になった小林亜星さん
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録】:星になった小林亜星さん
園児の描いた似顔絵を商業施設で見掛けるようになった。定番の「父の日」商戦。ひとり親が増え、幼稚園や保育所では「ファミリーデー」に模様替えし、趣向を凝らす所もあるという▲「テレビっ子」と呼ばれた昭和30年代生まれの身には、和やかなサザエさん家族と両極を成すのが、ホームドラマ「寺内貫太郎一家」の世界である。情に厚く涙もろいのに、無愛想で短気―。大黒柱の雷おやじを演じた小林亜星さんの訃報を聞いた▲息子役だった広島市出身の亡き西城秀樹さんとの大げんかは番組のお約束だった。秀樹さんは確か、取っ組み合いのあまり腕の骨を折ったことがあるはず。2人の追悼に番組の再放送はあるだろうか。乱暴な場面に神経をとがらす、昨今の風潮では難しいか▲「犠牲者」は他にもいた。CMソング界では売れっ子作曲家だった亜星さんも演技経験はゼロ。家に帰っても貫太郎気分が抜けず、「オイッ」と怒鳴るわ「フン!」と横を向くわ。家族を嘆かせた裏話が伝わっている▲冒頭の似顔絵に戻ると、どの面(おも)ざしからも「無愛想で短気」な不穏さはうかがえない。頑固や雷が山ほどいた昭和と違い、令和はさて、ナニおやじなのだろう。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】 2021年06月16日 06:43:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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