路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【政局】:麻生太郎氏の失脚を心から喜んでいる…「名誉会長の弔い選挙」に前のめりになる巨大宗教団体の本音

2024-10-11 07:25:30 | 【新宗教=新興宗教と呼ばれる教団は多岐にわたり、時代的には19世紀に創始さ...

【政局】:麻生太郎氏の失脚を心から喜んでいる…「名誉会長の弔い選挙」に前のめりになる巨大宗教団体の本音

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政局】:麻生太郎氏の失脚を心から喜んでいる…「名誉会長の弔い選挙」に前のめりになる巨大宗教団体の本音

 10月1日に石破茂新内閣が発足した。新内閣の誕生は自公政権にどのような影響を及ぼすのか。『宗教問題』編集長の小川寛大さんは「岸田政権では公明党嫌いで知られている麻生太郎氏が影響力を持っていたが、石破内閣の発足によって公明党と関係の深い菅義偉氏や二階俊博系の人材が力を持つことになった。このことによって、自公政権のあいだに吹いていた“すきま風”は弱まるのではないか」という――。

<button class="sc-1gjvus9-0 cZwVg" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="26">首相指名選挙が行われる衆院本会議に臨む自民党の石破茂総裁(上段右端)ら。同左端は麻生太郎氏=2024年10月1日午後、国会内 - 写真=時事通信フォト</button>
 

首相指名選挙が行われる衆院本会議に臨む自民党の石破茂総裁(上段右端)ら。同左端は麻生太郎氏=2024年10月1日午後、国会内 - 写真=時事通信フォト(株式会社プレジデント社)

 ■ 【画像】石破内閣が発足したことで、自民党内の“公明党嫌い”は力を失った

 ■石井新代表への交代はスムーズではなかった  

 9月28日、公明党は党大会を開いて、山口那津男代表の後任となる新代表に、衆議院議員の石井啓一幹事長を選出した。同党の代表が交代するのは、実に15年ぶりの出来事である。  

 公明党の代表は、一応党内で「代表選挙」を開いて選出する決まりになっている。しかし同党が結党されて以来、この代表選挙に2人以上の立候補者が立ったことは一度もなく、結果としてすべて無投票で代表の顔が決まってきた。つまりは事前に党内での入念な調整が行われ、その人事決定に、例えば一般党員がもの申せるような雰囲気の組織ではないということなのだろう。  

 ただ、今回の石井新代表の選出をめぐるその「党内調整」は、必ずしもすんなりいったわけではないらしい。公明党内には、このタイミングでの代表交代に慎重な意見を唱える向きもあり、「山口続投論」もそれなりに支持されていたらしいのだ。  

 それは、公明党の代表人事について報じた一般マスコミの記事などにも表れている。例えばNHKは8月29日に公明党代表選について触れた報道のなかで、「(山口氏の)続投を求める声があり」としているし、ようやく党内の意見が「石井新代表選出」でまとまったらしい9月上旬、その状況を報じた朝日新聞の記事には、「(石井氏へ)二転三転の末に交代へ」(9月6日付、同紙)との表現がある。どうも党外からは見えないところで、相当のすったもんだがあったことは事実のようだ。

 ■「公明党幹部はがん」と発言した麻生氏  

 関係者らへ取材してみると、この混迷ぶりの原因は、同時期に行われていた自民党総裁選で誰が勝ち上がるのかが、当初あまり見通せなかったところにあるようだ。  

 確かに、各派閥が解消された上に、史上最多となる9人もの立候補者が出た今回の自民党総裁選は、最終盤になるまで果たしてどのような展開になるのか、容易に読めない混戦だった。そして公明党サイドとして最も警戒していたのが、自民党副総裁だった麻生太郎氏の影響下にある候補が、総裁選を勝ち上がることだったという。  

 実は2021年10月から始まった岸田文雄政権の期間、連立与党を組む自民党と公明党は、かなりギクシャクした関係に陥っていた。麻生氏は岸田首相の後見人とも見られていた政権の重鎮で、その麻生氏と密接な関係にあった茂木敏充氏は、自民党幹事長の座にあった。そして、この麻生・茂木両氏こそは、自民党のなかでも「公明党嫌い」として名の通った存在であったからだ。  

 実際に茂木氏は幹事長就任後、それまで定期的に行われていた公明党幹事長との会合を中止したと報じられている。麻生氏も2023年9月に行った講演で、公明党について「がん」だと名指しで批判するなどし、マスコミには「自公の間にすきま風が」などといった記事が相次いで載った。自民党が、維新や国民新党を連立に新しく参画させようとしているといった憶測報道が多々出回ったのも、岸田政権の期間中のことだった。

 ■「山口代表の続投」もあり得た  

 2022年末から始まった、次期衆院選での選挙区の区割り再編、いわゆる「10増10減」の問題に関しても、自公はそれぞれの都合から新しい選挙区の取り合いのようなことを演じ、ちょっとした紛争状態に。  

 この流れのなかで23年5月、今回公明の新代表についた石井啓一氏(当時幹事長)がマスコミの前で「(自民党との)信頼関係は地に落ちた」と発言し、騒ぎになったことも、記憶に新しい。ゆえに、自民党総裁選で麻生氏カラーの強い人物が選出される可能性について、公明党は神経をとがらせていたというのである。  

 一方で山口那津男氏は、非常に穏やかで物静かな性格の人物として知られ、与野党問わずさまざまな政界関係者に聞いても、少なくともその人柄の面で批判する声をほとんど聞かない「人格者」だ。  

 自民党新総裁に麻生カラーの強い人物が就くという、公明党サイドにとってよくない展開となっても、「山口代表」を温存することで、その安定感をもって何とか自公の関係を維持したいという考えが、公明党内の一部にはあったらしい。  

 しかしながら、もし山口氏が今回も党代表続投となれば、実に9選。それはさすがに長すぎるし、また自民党のみならず立憲民主党や共産党の代表、さらにはアメリカ大統領までその顔触れが変わるという「刷新感」のなかで山口氏続投となり、公明党の存在が埋没してしまうのではないかという危惧も、同時に根強くあったようだ。 

 元稿:プレジデント社 Onlice 主要ニュース 政治 【政局・石破政権・与党連立】  2024年10月10日  17:17:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【こちら特報部・10.10】:石破政権をどう評価しろと…旧統一教会、米軍、選択的夫婦別姓、能登「すべて先送り」解散に当事者たちの思いは

2024-10-11 07:15:00 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【こちら特報部・10.10】:石破政権をどう評価しろと…旧統一教会、米軍、選択的夫婦別姓、能登「すべて先送り」解散に当事者たちの思いは

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【こちら特報部・10.10】:石破政権をどう評価しろと…旧統一教会、米軍、選択的夫婦別姓、能登「すべて先送り」解散に当事者たちの思いは 

 就任からわずか8日後、戦後最短の衆院解散に踏み切った石破茂首相。前政権から引き継いだ課題の多くは、国会での本格論戦を経ず、選挙の後に先送りされた形だ。裏金議員の処遇に注目が集まるが、他にも課題は山積している。困難と向き合う人たちに政治への思いを問うた。(山田祐一郎、森本智之)

 ◆旧統一教会問題、石破首相は再調査を否定

 2022年7月の安倍晋三元首相銃撃事件を受けて問題となった世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党との関係。
 
 「状況から組織的な関係があるのは明らかなのに、説明がないことに憤りを感じている」
 こう話すのは、元2世信者で関東在住の30代男性だ。岸田文雄前首相は「関係を断つ」と宣言したが、教団との組織的な関係性については否定してきた。
 
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の教団本部=東京都渋谷区で

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の教団本部=東京都渋谷区で

 党の調査で教団との接点が確認できた国会議員は180人。政府は昨年10月、教団の解散命令を東京地裁に請求し、12月には、被害者救済に向けた特例法が成立した。
 
 一方で今年9月、安倍元首相が在任中の2013年に自民党総裁応接室で、教団関係者と面会したと朝日新聞が報じた。7日の代表質問で問われた石破茂首相は「党の説明を覆さなければならないような事情があるとは考えない」と再調査を否定した。
 
 「新しい大臣にも教団とのかかわりが判明している人が複数名を連ねている。本来であれば、第三者による調査が行われなければいけない。選挙でも大きなテーマとなるべき問題だ」と男性は訴える。

◆教団とのつながり、自民の自主的調査で済む問題ではない

 さらにここにきて牧原秀樹法相が8日、教団関連イベントに自身や秘書が計37回出席していたと明らかにした。党には報告していたというが、男性の不信はくすぶる。「教団の被害者で訴訟を起こせているのは氷山の一角。被害者を生み出してきたのは教団と自民党と言える。問題をなかったことにはできない」
 
各党代表質問が行われた参院本会議に出席した牧原法相=8日、国会で

各党代表質問が行われた参院本会議に出席した牧原法相=8日、国会で

 ジャーナリストの鈴木エイト氏も「旧統一教会とのつながりは、自民党の自主的な調査で済む問題では既になくなっている。今後も事例が発覚するはずだ。2013年以降、どのような関係だったのかを検証するべきだ」と強調する。
 
 自民党が、総選挙で非公認を決めた裏金議員12人のうち、旧安倍派の萩生田光一元政調会長や下村博文元文部科学相は、旧統一教会との接点も確認された。しかし双方にかかわった議員は他にもいる。
 
 例えば教団と接点があり、裏金問題でも処分を受けた旧二階派の武田良太元総務相は、国会の政治倫理審査会に出席したことで非公認を免れた。

◆どうなる? 教団の支援を受けない国政選挙

 これに対し、淑徳大の金子勝客員教授(財政学)は「裁判で有罪となった旧安倍派事務局長の『資金還流の再開が幹部議員らとの協議で決まった』との証言は政倫審での弁明を否定するもので、本来は追及の対象となるはずだ」と指摘。誰もが納得できる客観的な基準になっていないとして「依然として派閥の行動論理が基準とされる自民党のモラルこそが問われるべきだ」と述べる。
 
 前出の鈴木氏は今回の選挙について、「教団はこれまで個々の自民党議員の応援態勢を整えており、特に選挙に弱い候補者にとっては貴重な戦力だった。自民党にとっては久々に教団の支援を受けない国政選挙」として、候補者の選挙運動や当落への影響を注視する必要があるとした。

 ◆「これまで一国会議員の考えを述べてきた」とトーンダウン

 石破氏は自民党総裁選では、在日米軍の特権的地位を認める日米地位協定の改定を唱えてきた。9候補が勢ぞろいした9月の那覇市での演説会では、2004年、沖縄国際大(宜野湾市)に米軍ヘリが墜落した事故にも言及。「沖縄の警察は現場に入れず、機体の残骸は米軍が回収した。これが主権国家なのか」「地位協定の見直しに着手する」と踏み込んだ。
 
オスプレイが並ぶ米軍普天間飛行場=沖縄県宜野湾市で(2019年撮影)

オスプレイが並ぶ米軍普天間飛行場=沖縄県宜野湾市で(2019年撮影)

 ところが、首相就任後は一気にトーンダウン。10月4日の所信表明では改定に言及せず、その理由を問われた8日の参院代表質問では「これまで一国会議員の考えを述べてきた。一朝一夕で実現するとは思っておりません」と応じた。
 
 沖縄の米軍基地周辺の有機フッ素化合物(PFAS)汚染を追及する「宜野湾ちゅら水会」の町田直美代表は「沖縄まで来て、県民の前で改定を宣言した意味は大きい。その時から『口だけ』という人もいたけど、私は変えたいという思いがあるから言ったんだと思う」と期待を込める。
 
 ただし持論を封じ込めた今、投票の判断材料は示されていない。石破首相の言う改定の中身や実現性は不透明で、自衛隊の米軍基地共同管理を持ち出すなど日米同盟強化の思惑もにじむ。
 
 基地由来の事件事故に苦慮してきた沖縄県が求めてきた負担軽減につながるかは見通せないが、それでも町田さんは「石破さんは沖縄の負担を軽減するために改定を言ったと信じる。私は可能性が1%でも信じるしかないと思っています。現職総理で改定に言及してくれたんだから」と話す。

 ◆これまで先送りしてきた政府答弁と同じ

 石破氏は選択的夫婦別姓の導入にも意欲を見せていたものの、こちらも首相就任後は「国民の間にさまざまな意見があり、さらなる検討が必要」などと姿勢を一転させた。
 
LGBTQを象徴する虹色フラッグ(イメージ写真)

LGBTQを象徴する虹色フラッグ(イメージ写真)

 導入を求めてきた一般社団法人「あすには」の井田奈穂代表理事は「裏金議員への対応など、自民党を二分する問題がある中で、抵抗勢力に対し火種は増やせないと判断したのではないか」と一定の理解を示した。
 
 その上で1996年に法制審議会で制度導入の指針が示されていることを踏まえ「これ以上の議論は必要ない。来年の通常国会には法案を提出してくれるよう、選挙後の石破さんに期待している。これは絶対に越えなければならない一里塚です」と注文した。
 
 一方、制度導入を求めて東京地裁に集団提訴している原告の女性(51)の思いは複雑だ。
 
「『さらなる検討が必要』という言い方は、これまで先送りしてきた政府答弁と同じ。本当にやる気があるのか分からない。投票の材料のためにはっきり態度を示してほしかった」と嘆いた。
 
 「結局、党内外の反対勢力に負けたのでしょうか。こうやってずっと後回しにされてきた。裁判で決着をつけるしかないのかなとあらためて思った」

◆「復旧は全く進まない」「みんな気持ちが切れてしまった」

 1月の地震に続き9月に記録的豪雨に見舞われた石川県能登地方。復興のための補正予算編成を先送りして衆院を解散したとして、首相には野党から批判が上がっている。
 
 同県珠洲市のボランティア団体代表を務める水野雅男法政大教授は「現地ではボランティアが圧倒的に足りない。緊急時は緊急時の対応が取れるような仕組みをつくってほしい」と現状を嘆く。
能登半島地震で倒壊したビル。10月に入ってようやく公費解体が始まる=7日、石川県輪島市で

能登半島地震で倒壊したビル。10月に入ってようやく公費解体が始まる=7日、石川県輪島市で

 民宿を営む中能登町の島喜久子さんも「復旧は全く進んでいません」と断じる。能登町に所有する民宿は地震で中規模半壊し、周辺も大きな被害を受けた。そこを豪雨が襲った。「地震があってやっと耐えていたのに、たくさんの家が水浸しになり、みんな気持ちが切れてしまった」
 
 10月5日に能登地方を視察した石破首相は防災庁設置も掲げるが、政治は遠くに見える。「地震発生から1年近いのに復旧は進まない。偉い人には奥能登に来てほしい。しっかりと現地を見て支援を考えてほしい」

 ◆デスクメモ

 旧統一教会との深い接点が取り沙汰された国会議員の地盤で行われた昨年4月の地方選。自民への強い逆風で候補者は党名を名乗れずポスターも差し替えピリピリしていた。とりわけ裏金ともかかわる「ダブルパンチ議員」の資質はどうか。その後の対応も含め見極める選挙としたい。(恭)
 
 
 元稿:東京新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【こちら特報部】  2024年10月10日  12:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【社説・10.10】:衆院解散、27日総選挙へ 「裏金」に審判を下そう

2024-10-11 07:13:50 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【社説・10.10】:衆院解散、27日総選挙へ 「裏金」に審判を下そう

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・10.10】:衆院解散、27日総選挙へ 「裏金」に審判を下そう 

 衆院が解散された。自民党派閥による裏金事件後、初めての総選挙は15日公示、27日投開票 の日程で行われる。自ら定めた法律に背き、国民に隠れて違法な資金を手にした議員に、職にとどまる資格があるのか否か。審判を下すのは私たち有権者だ。
 
 衆院選は本来、私たちの暮らしや国の在り方に関わる政策を争点に政権を選ぶ機会だ。しかし、今回の「裏金解散」では「政治とカネ」が最大争点にならざるを得ない。いかなる政策も政治への信頼なしには遂行できないからだ。
 
 実質賃金が伸びない中、国民が納税の義務を果たす一方で、多くの自民党議員が長期間、組織的に脱税まがいの手法で資金を隠し続けていたのが裏金事件だ。
 
 裏金議員は85人。有罪が確定した2人を除き、裏金を理由に自ら辞職した議員はいない。衆参両院の政治倫理審査会への出席は約1割の9人。しかもそろって「知らぬ存ぜぬ」の弁明だった。反省しているとはとても言えない。
 
 岸田文雄政権の対応も極めて不十分だった。聞き取り調査では裏金づくりの経緯や実態を解明できず、国政選挙の非公認につながる処分は5人にとどまった。石破茂首相は衆院選小選挙区の非公認を12人まで広げたが、30人以上は公認される見通しだ。これでけじめをつけたと言えるのか。
 
 立憲民主党の野田佳彦代表は、衆院解散直前の党首討論で「首相は『相当程度が非公認になる』と言ったが、実際は大半が公認だ」と批判した。首相は「同志に対し厳しく、つらい決断だ」と反論したが、党内向けの理屈にすぎず、裏金議員の大半にお墨付きを与えたことは否定できまい。

 ◆長期政権の緩みと驕り

 しかも首相は、首相就任時には新しい事実が判明すれば調査するとしていた方針を覆した。
 裏金事件で政治資金規正法違反の罪に問われた旧安倍派の会計責任者の裁判で、派閥幹部による指示が認定されたものの、再調査を明言しようとしない。
 
 自民党に染み付いた金権体質も問われなければならない。2021年10月の前回衆院選から現在までに「政治とカネ」絡みで起訴された国会議員は裏金4人を含めて8人に上る。全員が自民党所属時の罪状である。長期政権の緩み、驕(おご)りと断じざるを得ない。
 
 再発防止の決意も見えない。先の通常国会での規正法改正は、自民党が野党側の要求をことごとく拒否。金権政治の温床とされる企業・団体献金の禁止、使途公開が不要な政策活動費の廃止、政治資金パーティーの抜本的な規制強化は、いずれも実現しなかった。
 
 若手議員のころ「平成の政治改革」の論客として知られ、総裁選でも刷新を訴えて就任した首相は党首討論で企業・団体献金は「認められるべきだ」と言明した。政策活動費の将来的な廃止検討には言及したが、政策活動費を今回の選挙にも充てる考えを示した。
 
 首相の変節はこれらにとどまらない。衆院解散前に予算委員会を開き、国民に選択の材料を提供するとの総裁選公約を反故(ほご)に。経済運営や外交・安全保障政策も、岸田前政権の方針を引き継ぐ「現実路線」に転じ、総裁選で訴えた独自政策の多くを棚上げした。
 
 首相が長年唱えてきた自説を曲げたのは、党の「顔」を代え、期待感が高いうちに短期決戦で逃げ切るという党内の大勢に屈したからにほかならない。私たち有権者はそんな筋書きに惑わされず、自民党の「中身」が変わるかどうかを見極めねばなるまい。
 
 自民党と対峙(たいじ)する立民は「政権交代こそ最大の政治改革」と打ち出すが、野田氏の代表就任後、保守層にも支持を広げる狙いから、政策が「現実路線」に傾き、自民党との違いが鮮明でなくなったことは否定しがたい。

 ◆緊張感取り戻すために

 最大の問題は、野党側が目標とする「自公の過半数割れ」が実現した場合、どんな政権ができるのか有権者に示していないことだ。立民の小選挙区候補は200人を超えたが、半数以上で日本維新の会と重複。選挙前の野党連立合意はおろか、公示までに候補者調整が大きく進む可能性も低い。
 
 それでも私たち有権者は変化を諦めてはならない。自民党が政権復帰した衆院選以降、8回の国政選挙で有権者のほぼ半数が棄権した結果が、裏金事件に代表される自民党の金権腐敗だ。候補者や政党の主張に耳を傾けて投票することが政治に緊張感を取り戻し、民主主義を再生する第一歩である。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年10月10日  07:13:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【論説・10.10】:衆院解散 短期決戦で何を訴える

2024-10-11 07:08:20 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【論説・10.10】:衆院解散 短期決戦で何を訴える

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【論説・10.10】:衆院解散 短期決戦で何を訴える 

 公認を巡る激震が自民党内に走るただ中で、衆院は解散された。15日公示・27日投開票の衆院選は政権の維持、交代が焦点となる。政治改革は重要だ。一方で、他の論点は見えにくい。各党は政治改革と合わせ、国内外の課題解決への具体的な公約、政策を練り、選挙戦に臨むべきだ。

 自民党は、派閥の裏金事件に関係した12人を非公認とする対応を決定した。政治資金報告書への不記載者は、比例代表への重複立候補を認めない。先の総裁選で石破茂首相は、関係議員の公認に厳しい姿勢を示しながら、総裁・首相就任後は軟化させたとされる。党内では「処分を蒸し返すのはおかしい」といった反発が出ているという。

 蒸し返すどころか、一連の処分に対する国民の理解や納得は元々、得られているとは言い難い。裏金議員などと、やゆされ続けるのが不本意ならば、政治生命を懸け、有権者の支持を真[しん]摯[し]に求めるのが信頼を取り戻す道だろう。

 公認の可否についての石破首相の決断は、内輪の事情や理屈を超え、世論を重視した結果に違いない。ただ、政治不信払拭への覚悟は示したとしても、解散間際まで続いた変節に、後手に回ったとの指摘や、なお不十分だとの批判はある。

 野党は、共闘の在り方が課題として残ったままだ。立憲民主党の野田佳彦代表は野党議席の最大化を掲げ、国民民主党や日本維新の会などとの連携を模索している。政権交代の目標は一致しているとはいえ、個別の候補者調整は党利党略も絡み、一筋縄ではいかないようだ。

 解散に先立つ党首討論は、政治とカネ問題が主な議題となった。立民の野田代表は政治改革の原点に立ち返り、企業・団体献金の禁止などを訴えた。石破首相は、自民党総裁の立場で献金の必要性を改めて説き、使途公開義務のない政策活動費の使用継続にも言及した。

 政治改革を取り巻く論議は依然かみ合わない。衆院選を経ても堂々巡りなら、国政は停滞しかねまい。石破首相は党首討論で、主権者たる国民に選挙で判断を仰ぐ考えも強調している。政治への信頼回復につながる改革の方向性を指し示すのは、有権者一人一人の行動だと、重ねて胸に刻みたい。(五十嵐稔)

 元稿:福島民報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【論説】  2024年10月10日  09:42:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【時論・10.10】:自公政権総括 審判基準に/衆院解散、総選挙へ

2024-10-11 07:08:10 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【時論・10.10】:自公政権総括 審判基準に/衆院解散、総選挙へ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【時論・10.10】:自公政権総括 審判基準に/衆院解散、総選挙へ 

 衆院が解散され、27日の衆院選投開票に向け、事実上の選挙戦が始まった。

 国会での石破茂首相の選出から8日後の解散は、現行憲法下で最短だ。この間の主たる国会論戦は、首相の所信表明演説を受けた衆参両院1日ずつの代表質問と、解散当日の党首討論にとどまった。

 石破首相は解散理由に関し「新しい内閣を信任してもらえるか、主権者の国民に問う」と説明。論戦を通じてその判断材料を提供するのは「政治の義務だ」と明言していたが、突っ込んだ議論ができる予算委員会の開催には応じなかった。

 しかも国会質疑で首相は、前向きだった選択的夫婦別姓の導入など自民総裁選での主張を封印、あるいは後退させた。解散後の記者会見では「日本創生解散」と名付けたが、政策上の裏付けは伴っていない。

 にもかかわらず衆院選に臨むのであれば、有権者の方で審判基準を設定するしかない。

 岸田文雄前首相が踏み切った2021年衆院選以来となる政権選択の機会だ。まずは3年間の自民、公明両党による連立政権のありようを私たちで総括、検証し、投票先を決める尺度にしたい。

 「政治の根幹である国民の信頼が崩れている」。岸田氏は自身の自民総裁選出馬に当たって、そう指摘し、民主主義の再生を誓った。民意軽視とされた安倍晋三、菅義偉両元首相の政権運営に対する反省が背景にあったはずだ。

 ところが岸田前政権下では、裏金事件など「政治とカネ」問題が続出し、かえって政治不信を深めた。

 自民が公明の賛同を得て成立させた改正政治資金規正法は、使途報告に抜け穴を残した。民意に沿えず岸田氏が首相を退いた責任が、公明にもあるのは言うまでもない。

 石破首相は「国民の不信や怒りにきちんと対応する」として、裏金が還流された議員の衆院選での公認要件を厳格化。ただ党首討論では、非公認候補でも、当選すれば追加公認する可能性に言及した。

 自民は、政治資金のさらなる透明化を図る具体策を提起していない。やはり投票に際して重視すべきは、これまでの政治改革の取り組みであろう。

 岸田前政権は、日本周辺の脅威が増しているとして安全保障政策を変更。反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有など防衛力強化を打ち出した。財源には増税が含まれている。原発政策もエネルギー安定供給や脱炭素社会実現を目的に、原発への依存抑制から利活用にかじを切った。

 いずれも前回衆院選では争点にならず、国会審議も十分ではなかった。国内外に歓迎する声もあるが、国民の「命と暮らし」に直結する問題である。石破首相が踏襲方針を示している以上、これらの政策も審判に値する。

 一方、政権交代を目指す立憲民主党など野党は、政治改革以外で掲げる政策に開きがあるものの、対峙(たいじ)すべきは自民、公明両党だ。

 衆院選では対抗軸を明確にし、有権者に政権の選択肢として認定してもらう必要がある。そのために党首らによる公開討論会に積極的に応じるようそろって与党に迫ったらどうか。

 国会論戦同様、首相が回避すれば、それもまた石破政権を信任できるかどうかの判断材料となる。

 元稿:東奥日報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【時論】  2024年10月10日  09:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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《社説・10.10》:解散・総選挙へ 「自民政治」を総括する時

2024-10-11 07:07:40 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

《社説・10.10》:解散・総選挙へ 「自民政治」を総括する時

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説・10.10》:解散・総選挙へ 「自民政治」を総括する時  

 衆院がきのう、解散された。

 石破茂首相が1日に就任してから、わずか8日である。衆院選の投開票までは26日だ。いずれも戦後最短である。

 石破首相は「新内閣が発足したので国民の意思を確認する」ことを解散の理由にしている。

 ただ、「国民に判断材料を提供するのは政府、与党の責任だ」としていたのに、提供された「材料」は、代表質問の答弁と党首討論だけだ。議論が深まったとはいえない。石破首相は総裁選で述べていた政策を次々と後退させており、新内閣が目指す方向性は不明確のままである。

 その一方、今回の衆院選で問われるものは数多く、かつ根深い。2012年に政権に復帰して以降の「自民党政治」そのものの検証と総括である。

 ■「表紙」だけなのか

 最大の争点は、いうまでもなく「政治とカネ」だ。

 自民党の派閥パーティー裏金事件は、政治資金を水面下で処理することを疑問に思わない党の体質を改めて浮き彫りにした。

 何の目的で誰が開始し、何に使われたのか―。今も不明確なままだ。使途によっては税務処理上の問題が生じる可能性もある。政策決定にそうした「カネ」が影響した疑念も拭えない。

 有権者の政治不信は膨れ上がったのに、岸田文雄前首相は軽視した。調査が不十分なまま関係した議員を処分。政治資金規正法の改定は、多くの抜け道を残したまま中途半端に終わった。企業・団体献金の禁止にも触れていない。

 岸田政権が支持率低迷から抜け出せなかったのは「政治とカネ」に対する意識が、有権者から懸け離れていたからだ。垣間見えるのは、長年続く自民党1強政治のおごりだ。

 岸田前首相が総裁選への出馬を断念し、石破氏が新首相に就任して迎える今回の衆院選。問われるのは改革路線のはずだ。

 石破首相は「日本政治全体の危機」というのに、具体案を打ち出せていない。政治資金の「透明性を担保する」とするだけだ。

 使途が不明確な政策活動費も当面は継続で、企業・団体献金も必要性を訴える。事件に関係した12人の非公認を決めた一方で、30人以上を公認した是非も問われる。

 自民党は「表紙」を変えただけなのか、中身も変えていくことができるのか―。有権者は見極めなければならない。

 ■深まる閉塞感

 石破首相が総裁選で打ち出した政策は多岐にわたる。

 「原発ゼロ」に最大限の努力、選択的夫婦別姓に前向き、株式売却益などの金融所得への課税強化、日米地位協定の見直し、マイナ保険証の一本化に伴う保険証の廃止期限の見直し―。これらは従来の自民党政策の枠を超える。

 それでも総裁選の党員・党友票で一定の支持を集めたのは、支持低下への危機感の裏返しだろう。

 ただし、石破氏は衆参の代表質問で、これらについて従来の自民党政権とほぼ同じ路線の答弁に終始した。

 党内基盤の弱い石破氏は「党内融和」を掲げて路線継承を求める岸田氏らの圧力にがんじがらめになっているのではないか、との指摘も根強い。

 石破首相はきのうの記者会見で今回の解散を「日本創生解散」として改革路線を打ち出したが、答弁との差は大きい。

 自民党が政権復帰して12年。日本をとりまくのは閉塞(へいそく)感だ。

 アベノミクスは大企業の業績を改善させたものの、大規模金融緩和は限界に達し、拡大した格差を解消する見通しは立っていない。今後の経済成長につなげる方法も不明確だ。

 地方分権や防災政策、少子高齢化対策なども、問題点や課題が指摘され続けるだけで、解決する方向に踏み出せていない。中国や北朝鮮との対立を解消する道筋も見えないままだ。

 処方箋を十分に示さずに短期間で衆院を解散したのも、内実が伴わない「刷新感」で有権者の支持を取り付けたいという党の思惑が透ける。

 ■野党は連携せねば

 立憲民主党の野田佳彦代表は「トップを変えただけでは政治は変わらない。政権交代こそ最大の政治改革」と訴えている。

 ただし、自民党内で旧統一教会問題や派閥裏金事件などが相次いだのに、立民の支持率は伸び悩む。裏金事件という自民党の「失策」に乗じるだけでは支持は得られない。首相経験者の野田氏が過去の反省を生かし、政権を担当できる能力を示すことが必要だ。

 政権交代には野党連携が欠かせないが、立民と日本維新の会、国民民主党とは改憲や安全保障、エネルギー政策などの重要政策で異なる主張が少なくない。障壁を乗り越えて急がなければ「政権交代」はかけ声だけに終わる。

 元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年10月10日  09:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【社説10.10】:衆院解散/政権選択の判断材料を示せ

2024-10-11 07:07:30 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【社説10.10】:衆院解散/政権選択の判断材料を示せ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・10.10】:衆院解散/政権選択の判断材料を示せ 

 衆院が解散され、15日公示、27日投開票の総選挙に向けて各政党、各候補者が一斉に走り出した。1日の首相の就任から8日後の解散、26日後の投開票はいずれも戦後最短だ。自民党派閥の裏金事件に絡んだ候補者の公認問題で情勢は混沌(こんとん)としており、異例の短期決戦となる。

 石破茂首相はきのう、党首討論で解散理由を問われ「政権がやろうとしていることに信任を賜りたい」と述べた。総裁選で首相は、解散前に予算委員会を開き、国民の判断を仰ぐ材料を示すと主張していた。しかし就任後に予算委の見送りを決めると、野党の開催要求に応じることはなかった。党首討論は「政治とカネ」の問題に時間が割かれ、幅広い政策の議論を深める機会にはならなかった。

 首相がこれで十分な判断材料を示したとするならば詭弁(きべん)だ。自民1強にあぐらをかき、党利党略で物事を進める従来の党の体質と何が違うのか。政治不信が一層深まると肝に銘じるべきだ。

 首相は総裁選で、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の弊害を念頭に、功罪を検証すべきだと主張していた。しかし代表質問では「デフレでない状況をつくり出した」と擁護する一面を見せた。

 総裁選で唱えたアジア版NATO(北大西洋条約機構)創設に関しては「一朝一夕に実現するとは考えていない」と曖昧な答弁に終始した。導入に前向きだった選択的夫婦別姓を巡っても「検討が必要」と述べるにとどまった。

 首相の主張は総裁選時から変わっており、どこを基準に判断すればいいのか分かりにくい。目指す国の将来像や目玉政策をうやむやにせず、説明する責任がある。

 総選挙の争点の一つは裏金事件を契機とした政治改革だ。使途の報告義務がない政策活動費について、首相は「将来的な廃止も念頭に、透明性の確保に取り組む」とやや踏み込んだが、具体的な道筋には言及していない。連立を組む公明党は政策活動費の廃止を公約に明記している。与党はこの違いをどう説明するのだろうか。

 立憲民主党や日本維新の会は、企業・団体献金の禁止など与党より踏み込んだ改革案を掲げる。政治活動の原資を確保する手段を絞るならば、各党は、カネのかからない政治を実現するまでの道筋と方法を併せて語る必要がある。

 3年ぶりの政権選択選挙だ。政治改革だけを争点とすることに終始してはいけない。経済や人口減少など国の課題への対策を明確にし、有権者に判断材料を提供できるかが野党も問われる。

 元稿:福島民友新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【あぶくま抄】  2024年10月10日  08:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【社説・10.10】:衆院解散 総選挙へ/問うべきは民主主義の再生だ

2024-10-11 07:07:20 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【社説・10.10】:衆院解散 総選挙へ/問うべきは民主主義の再生だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・10.10】:衆院解散 総選挙へ/問うべきは民主主義の再生だ 

 石破茂首相はきのう衆院を解散した。総選挙は15日公示、27日投開票の日程で実施される。

 2021年10月以来、3年ぶりの政権選択選挙だ。「民主主義の危機」克服を掲げながら自民党派閥裏金事件で指導力を発揮できず、退陣した岸田文雄前首相の政権運営に審判を下す機会でもある。国民的議論のないまま安全保障や原発などの重要政策を大転換した3年間をどう総括するのかは重要な争点になる。

 失墜した政治への信頼を取り戻し、民主主義をどう再生するのか。人口減少や社会保障など直面する課題への処方箋や、国家像をどう描くのか。与野党は選択肢を明確にし、有権者に判断を仰がねばならない。

                   ◇

 首相就任からわずか8日での解散は戦後で最も短い。臨時国会では首相の所信表明演説と各党の代表質問、党首討論を実施しただけで、政権の基本姿勢や具体的な政策が周知されたとは言い難い。

 総裁選で言及していた予算委員会の開催に応じるかどうかは、安倍、菅、岸田政権と続いた国会軽視の強権的手法を改める試金石だったが、首相が選んだのは早期解散だった。「ぼろが出ないうちに」との党利党略とみられても仕方あるまい。

 ■政治不信を拭えるか

 最大の争点となるのが、自民党派閥裏金事件を受けた政治改革への対応である。

 首相は事件で処分を受けた旧安倍派幹部ら計12人を衆院選で非公認とする方針を表明した。政治資金収支報告書に不記載があった「裏金議員」は公認しても比例代表への重複立候補は認めないとしている。

 厳正な対処を演出し、支持を広げる狙いだろうが、そもそもが党の甘い処分に基づく判断だ。大半の議員が公認される状況では、国民の納得も共感も得られるはずがない。

 本来取り組まねばならないのが、中途半端に終わった裏金の実態解明だ。誰がいつ始め、何に使われたのか。首相は再調査に後ろ向きな姿勢を崩していないが、真相が分からないままでは、いつまでたっても政治不信は払拭できまい。

 再発防止に向けた改正政治資金規正法は成立したものの、多くの「抜け穴」が残る。政治資金パーティーや企業・団体献金、使途報告義務のない政策活動費は温存され、とても「改革」の名には値しない。

 むしろ法改正の過程で明らかになったのは「政治とカネ」の問題に対する自浄能力の欠如だ。国民と政治の信頼関係を築き直せず、岸田政権が行き詰まったのは当然の帰結だろう。現状を放置せず、「カネをかけない政治」を実現するには何が必要なのか。各党は選挙戦で踏み込んだ議論を交わしてもらいたい。

 ■どうする「負の遺産」 

 政策面では岸田政権の評価・検証にとどまらず、9年近くに及んだ安倍、菅両政権にまでさかのぼって総括するべきだ。

 安倍路線を継承して岸田政権は防衛力強化を打ち出したが、他国のミサイル基地などを破壊する反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や防衛費の大幅増額を盛り込んだ安全保障関連3文書の改定などでは、重要政策を立法府に諮らず閣議決定のみで変更する独断的な手法を重ねた。議論を通じて法案の問題点を改める国会の機能を立て直さねばならない。

 原発の最大限活用やマイナ保険証の実質義務化なども国民の幅広い合意なしに進められた。長年にわたる世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党との関係解明もうやむやなままだ。石破政権は安倍政治の「負の遺産」にどう向き合うのか。

 防衛費や少子化対策で安定財源の確保を巡る議論を先送りする一方、度重なる経済対策で歳出を膨らませ、国債残高をさらに積み上げた。各党は持続可能な財政のかじ取りについて考えを明確にしてほしい。

 衆院選では政権選択に加え、格差是正、物価高対策、選択的夫婦別姓制度、原発政策、外交、憲法改正など論点は多岐にわたる。各党には政策の実現可能性について、財源を含む説得力のある訴えを求める。

 長らく「1強多弱」と言われ、強引な政権運営に歯止めをかけられなかった野党にとって、まさに正念場だ。政権批判に終始せず有権者に選択肢を示す責任がある。政治に緊張感を取り戻すためにも、短期決戦の中で真価が問われる。

 元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム【社説】  2024年10月10日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【社説①・10.10】:衆院解散 政権選択に資する論戦を

2024-10-11 07:07:10 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【社説①・10.10】:衆院解散 政権選択に資する論戦を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・10.10】:衆院解散 政権選択に資する論戦を 

 新内閣発足からわずか8日のきのう、石破茂首相が衆院を解散した。27日の衆院選投開票まで18日間の短期決戦となる。

 昨年12月以降、派閥裏金事件をはじめとする自民党の政治資金問題が表面化した。国民の怒りをよそに、裏金づくりの真相究明や再発防止策は極めて不十分だ。

 衆院選で政治改革を問い、国民の信頼を取り戻さなくてはならない。その礎があってこそ、人口減少対策や経済再生といった重要政策を強力に推進できる。

 有権者にとっては3年ぶりの政権選択の機会だ。各党は具体的な公約で選択肢を示し、活発な論戦を展開してほしい。

 ■党利党略は明らかだ

 ばたばたと慌ただしい衆院解散劇である。首相就任から解散までの日数は戦後最短だ。石破氏は解散権を持つ首相になる前に衆院選の日程に言及し、前のめりで突き進んでいる。

 就任前の首相は「有権者に判断材料を提供するのは政治の義務」と語っていた。

 国会で全閣僚が出席する予算委員会の開催が念頭にあったはずだが、新内閣の方針を国民に語る機会を省いてしまった。「判断材料を提供する義務」を果たしたとはとても言えない。

 変節と非難されてもなお、解散を急いだのはなぜか。

 裏金事件などの不祥事で、岸田文雄前首相の内閣支持率は長く低迷していた。すげ替えた「選挙の顔」への期待値が高いうちは、衆院選を有利に運べる。それが本音だろう。まさに党利党略だ。

 急いで国民の信を問う必要はない。石破内閣の方針について各党が国会で議論し、有権者に論点や争点を明らかにした上で衆院選に臨むのが常道である。

 それを軽んじるのは、有権者をないがしろにするに等しい。

 今回の衆院解散は憲法7条に基づく、内閣の助言と承認による天皇の国事行為だ。首相はこれまで、内閣不信任決議案可決などによる69条解散に限るべきだと主張していた。

 7条解散については「すべきではない。今なら勝てるだろうというのは憲法の趣旨に反している」という見解だった。

 近年、政権与党の都合で大義なき解散が繰り返されたことへの批判でもあるのだろう。

 ところが石破氏も「新内閣の発足は解散の大義になる」「憲法の趣旨に沿う」と述べ、7条解散を正当化した。またも言行不一致があらわになった。

 ■不十分な野党の共闘

 解散直前に首相と野党4党首の党首討論があった。通常の45分間より延びたとはいえ、与党が認めた80分では短過ぎ、広範な政策論議にならなかった。

 与党や内閣が国会論議を軽視するのは、第2次安倍晋三政権から続く悪い傾向だ。安全保障の重大な政策転換も閣議決定で済ませ、熟議を避けた。このような政治は改めなくてはならない。

 自民は裏金に関与した議員を原則公認する方針だった。国民の強い反発を察知すると、比例代表との重複立候補を認めず、一部は非公認とした。

 力点を置くべきは関係議員の処遇ではない。政治資金問題の抜本的な改革策を打ち出すことだ。首相は党首討論で明確な考えを語るべきだった。

 牧原秀樹法相と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係も新たに明らかになった。牧原氏と秘書が関連行事に37回出席していたという。首相は「関係は断っている」として問題視しない。本来なら国会で追及すべきものだ。

 衆院選が政権選択選挙である以上は、野党が連携して与党批判の受け皿を形成するのが望ましい。今回は協力がまとまらないまま選挙戦に入ることになりそうだ。

 立憲民主党を中心とする野党が与党の過半数割れを目指すなら、政治改革だけでなく、実現可能な政権構想を示して有権者を引きつけなくてはならない。

 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム【社説】  2024年10月10日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【社説・10.10】:衆院解散 政治への信頼が問われる

2024-10-11 07:07:00 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【社説・10.10】:衆院解散 政治への信頼が問われる

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・10.10】:衆院解散 政治への信頼が問われる 

 発足間もない内閣への信を問うとして、首相が「伝家の宝刀」を抜いた。だが、問われるのは新内閣への是非だけではない。

 「政治とカネ」の問題をはじめ、国民の期待を裏切る事態が相次いだが、政治は説明責任を果たしたとは言えない状況が長く続いている。与野党には、政治不信を脱却する道筋をどう示すかが問われる。

 ◆見えぬ改革の方向性

 危機的な政治状況を脱するには、有権者にも責任ある判断が求められていると、私たちは胸に刻まなくてはならない。

 衆院は9日解散され、事実上の選挙戦がスタートした。15日公示、27日投開票となる。

 石破茂首相の就任から8日後の衆院解散は戦後最短で、就任10日後だった岸田文雄前首相より短い。解散から18日後に投開票を迎える短期決戦となる。

 石破首相は「新内閣発足に当たり、国民の意思を確かめる必要がある」とした。

 党内基盤が弱い首相には、内閣支持率が比較的高い政権発足当初に選挙を済ませ、信任を得た上で政策を推進したい意向があることは想像できる。

 ただ、この選挙で問われるのは、石破政権への信任に限らない。柱となるのは、安倍晋三政権、菅義偉政権、岸田政権を通じて深まった政治への不信と、政治改革の方向性だろう。

 自民党を巡っては、安倍元首相が銃撃されたことを発端に、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係が露呈した。

 その後、派閥裏金事件が発覚し、旧安倍派を中心に複数派閥が、政治資金パーティー券の販売収入を政治資金収支報告書に正確に記載していなかったことが明らかになった。

 閣僚の更迭や、党の処分など、その都度対処してきたとはいえ、十分な説明責任が果たされたとは言えず、問題の真相はいまだに判明していない。

 岸田前首相は裏金事件の責任を取るとして退任した。引き継いだ石破首相に、政治不信の払拭を託せるかどうかが問われることになる。

 解散に伴い、自民は裏金事件に関係した前議員のうち12人を非公認と決めた。非公認方針が固まっていた6人に、本県関係の細田健一氏ら旧安倍派6人を追加した。

 公認を受けられない決定は候補者には極めて重いものだ。

 しかし、裏金事件に関わった前議員では公認される方がはるかに多い。非公認でも当選すれば追加公認するという党の対応は、形だけのけじめに映る。

 政治改革の方向性も、改正した政治資金規正法を順守するというだけで、本腰を入れて取り組む姿勢はうかがえない。

 説明を軽視し、異論に耳を傾けなかった「安倍・菅」政治、国会の議論を経ずに国の根幹に関わる政策を転換させた岸田政権から、自民党政治をどう変えていくのか示してもらいたい。

 首相はかつて「党内野党」として時の首相らに批判的なスタンスで臨み、国民の人気を集めてきた。しかし就任後は総裁選で唱えた安全保障政策などの主張で後退や変節が指摘される。

 解散に当たって首相は「多くの論戦が交わされた。国民に判断いただく材料を提供した」としたが、衆参両院の代表質問や35分延長した程度の党首討論で、有権者に選択肢を示したと強調するのは無理がある。

 政治不信を増幅させたこれまでの政権のような、強権的な政治手法が継承されていくのではないかと懸念が募る。

 ◆地域課題にどう挑む

 野党は、第1党の立憲民主党が野田佳彦代表に代わって20日足らずでの解散となった。

 野田氏は政権交代こそ政治改革だとするが、候補者擁立状況から見ても単独での政権交代は困難で、小選挙区で野党勢力を一本化できるかが鍵を握る。

 出遅れた候補者調整は難航を極め、残された時間で合意を図れるか、正念場となる。

 今回は小選挙区定数「10増10減」などを受けた新区割りで初めて実施される選挙となり、本県は選挙区が6から5に減る。

 どの選挙区も人口減少は著しく、物価高で家計や地域は疲弊している。活性化策が必要だ。原発再稼働問題や拉致問題など本県と深く関わる課題もある。

 地域にどう向き合い、解決を図るか。候補者の地に足の着いた論戦を期待したい。

 元稿:新潟日報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年10月10日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【論説・10.10】:衆院が最短解散 内閣の何を判断するのか

2024-10-11 07:06:50 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【論説・10.10】:衆院が最短解散 内閣の何を判断するのか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【論説・10.10】:衆院が最短解散 内閣の何を判断するのか 

 衆院が解散された。石破茂首相就任から8日後、現行憲法下では最短の解散であり、15日には衆院選公示が迫る。首相は「新内閣の信を問う」と言ったが、何をやりたい内閣なのかまだよく分かっていない今、国民は何を判断すればよいのか。

 首相が自民党総裁選で主張した重要項目は、短期間に次々と変化した。そもそも、憲法7条を根拠に事実上首相が解散を判断するやり方に石破氏は否定的だった。しかし総裁選で勝利したとたん、首相就任より前に解散を明言、総選挙日程も明らかにした。総裁選中に述べた「国会予算委員会の論戦で判断材料を提示した後の解散」を翻した。

 経済政策では、岸田前政権の政策を受け継ぐ構え。首相は利上げ容認が基本的考えとみられていたが「デフレ脱却を確実にする」と述べる機会が増えている。総裁選当選後に株価が下落した市場反応を踏まえた軌道修正といえる。また「2020年代に最低賃金1500円」については、具体的道筋はまだ不明だ。

 外交・安全保障関係では総裁選で訴えた「アジア版NATO」「日米地位協定見直し」を首相就任後に封印した。衆院代表質問で封印の理由を問われ「総裁選では一議員としての考えを話した」と答弁。議論の積み重ねあっての主張ではないと認めた。公約を引っ込めた形だが、アジア版NATOは集団的自衛権にかかわるもの。構成する国々はどこか、仮想敵国をどう考えるかなど、既に海外から懸念を招いた可能性がある。首相は国際的に説明を求められるのではないか。

 政治改革では自民党の公認問題に焦点が当たるが、本来は政治資金規正法の再改正が議論の本筋だ。臨時国会で掘り下げるには予算委が不可欠だったが、その機会は設けられなかった。

 26年度までに防災庁を設けるとの主張に関しては、事前防災の充実が期待されるが、ほかに目につく具体策は乏しい。首相肝いりの地方再生も、交付金倍増を表明したものの詳細はよく分からない。

 一方、野党第一党の立憲民主党の公約をみると、自民との違いとして「再生可能エネの発電割合を50年に100%」「日銀物価安定目標を、2%から0%超へ変更」などが目を引き、この辺りが争点になる可能性がある。ただ、仮に物価上昇率が0%近くになれば年金生活者への恩恵が生じるが、デフレに逆戻りする懸念が大きいことには注意がいる。

 いずれにしても石破首相は自らが口にする「判断材料を国民に示す」を早急に実行しなくてはならない。多くの持論を封印してでも首相が何をしたいのか。しっかり明示してもらいたい。

 元稿:福井新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【論説】  2024年10月10日  07:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【論説・10.10】:衆院解散・総選挙へ 政権選択の政治決戦だ

2024-10-11 07:06:10 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【論説・10.10】:衆院解散・総選挙へ 政権選択の政治決戦だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【論説・10.10】:衆院解散・総選挙へ 政権選択の政治決戦だ 

 衆院が解散され、27日の投開票に向けた事実上の選挙戦がスタートした。衆院選は有権者による政権選択の機会だ。自民党派閥裏金事件による国民の政治不信が払拭されない中、政権選択を巡る政治決戦の色合いが、いつも以上に濃くなっている。

衆院が解散され、一礼する石破茂首相(左列手前)ら=9日、衆院本会議場
衆院が解散され、一礼する石破茂首相(左列手前)ら=9日、衆院本会議場

 国会での石破茂首相の選出から8日後の解散は、現行憲法下では最短になる。党総裁選の討論会などで、国会論戦の場となる予算委員会を解散前に開催する重要性を指摘していたにもかかわらず、首相が予算委を省いて早期の解散・総選挙に踏み切ったのは、「ご祝儀相場」で支持率が高いうちに解散を求める与党内の声に押されたからだ。

 とはいえ、狙い通りになるかどうかは見通せない。最大の争点となる裏金事件の解明と責任の在り方が鍵を握る。

 4月の衆院島根1区補選では自民党候補が立憲民主党候補に敗れるなど、裏金事件の影響は「保守王国」島根にも影を落としている。鳥取出身の石破氏の首相就任に歓迎ムードは広がっているものの、信頼失墜を帳消しにできるほど甘くはない。

 裏金事件の対応で、首相は大なたを振るった。党の処分を受けた議員のうち、旧安倍派幹部ら12人を次期衆院選の小選挙区で非公認にすると決定。公認しても比例代表への重複立候補を認めず、復活当選できなくした。退路を断って有権者の審判を仰ごうというスタンスだ。

 だが、当事者には死活問題。「(首相は)総裁として結束を呼びかけながら、上から弓を引いた。選挙後直ちに倒閣運動だ」と息巻く議員もおり、衆院選の結果次第では党の分裂や政界再編含みの展開も予想される。

 首相は当初、事件を蒸し返さず、処分の重い一部の議員を除き原則公認するという党執行部の考えを追認していたという。ところが世論の批判が強く、厳正な対処へとかじを切った。

 裏金議員に甘い対応をしたと見なされれば衆院選で敗れ、野党に政権交代を許しかねない-という危機感に駆られたのだろう。党内の猛反発も織り込んだ上で、首相自らも覚悟を持って退路を断った格好だ。

 首相は立民の野田佳彦代表との党首討論で、裏金議員の公認対応について「最終的な判断は主権者の国民に任せる」と述べた。ただ、裏金議員が当選しても、それで「みそぎ」にはなるまい。裏金事件の実態解明や抜本的な政治資金改革をおざなりにしたままでは、失墜した自民党への信頼は取り戻せない。

 山陰で暮らすわれわれにとっては、首相が打ち出した地方創生の再起動の行方も気になる。所信表明で地方創生の交付金を倍増すると表明し、人口減少は「静かな有事」と表現した。しかし、交付金の中身や人口減少対策の詳細は不明確なままだ。東京一極集中の是正については触れることもなかった。具体的な処方箋を示してほしい。

 一方、政権交代を目指す立民など野党は、政治改革以外で掲げる政策に開きはあるが、対峙(たいじ)すべきは連立政権を組む自民、公明両党だ。対立軸を明確化し有権者に政権の選択肢として認定してもらう必要がある。

 政治改革や地方創生以外にも経済政策、安全保障、外交、防災など課題は山積する。与野党の積極的な論戦を、主権者としてしっかりと見極めたい。

 元稿:山陰中央新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【論説】  2024年10月10日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・10.10】:衆院解散 国民のための政治示せるか

2024-10-11 07:05:50 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【社説・10.10】:衆院解散 国民のための政治示せるか

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・10.10】:衆院解散 国民のための政治示せるか 

 石破茂首相が急いで衆院解散に打って出たことに違和感が拭えない。きのうの解散は、首相就任から8日後で戦後最短である。15日公示、27日投開票に向け、事実上の選挙戦に入った。

 ■⇒2024年衆議院選挙の関連記事はこちら

 解散の理由を首相はこう言う。「新内閣ができるだけ早期に国民の審判を受けることが重要だ」。信を問うというならば、政治への信頼回復の道筋を国民に示してからが道理だろう。岸田内閣は自民党派閥の裏金事件に代表される「政治とカネ」問題で支持を失い、退陣した。つまり、「信なくば立たず」を突きつけられたからに他ならない。

 首相は、政治資金規正法の抜け穴をふさぐ具体策を示したのか。使途の報告義務がない政策活動費は「将来的な廃止も視野」と言うが、廃止するのかしないのか。何より裏金事件を再調査し、徹底解明する気はあるのか。これでは国のかじ取りを任せられるかどうか、判断材料がないまま投票を強いることになる。

 ■党利党略透ける

 世論とのずれを感じざるを得ない。短期決戦は党内基盤が弱く、人事で挙党態勢を築けなかった首相が、国民の人気を頼みに求心力を得たい狙いが透ける。党としては3年前の前回衆院選に倣い、選挙の顔を代えた総裁選のご祝儀相場に乗って勝利を得る構図を描いているのだろう。党利党略が過ぎる。

 首相はきのうの記者会見で「日本創生解散」と名付け、「防災庁」の設置や地方創生の再起動をはじめとする政策を問うとした。党首討論では「国を守り、国民を守り、デフレ脱却をするためには、私どもが政権を引き続き担うことが最も肝要だ」とも述べた。だが、どんな国家像があろうが、いかなる政策を示そうが、国民の信頼という土台がなければ実行できない。

 「政治とカネ」や世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を「国民がいずれ忘れる」と言わんばかりの姿勢こそが今回問われよう。裏金事件に関わった議員の公認を巡り、党内で紛糾している場合なのか。今からでも政治改革の具体策を示すべきだ。

 ■自公政権を問う

 衆院選で争点にすべき難題は山積みだ。「政治とカネ」の問題に早くけじめをつけなければと、焦りさえ覚える。

 自民党と公明党が政権を奪還して12年になる。国民の不信を招いたのは何も「政治とカネ」問題だけではない。岸田政権は国の在り方を左右する安全保障やエネルギー政策を転換させる際、国会審議を深めずに閣議決定で進めた。これは安倍・菅政権からのやり方だ。主権者を軽んじた政治手法も審判の対象だろう。

 就任前の首相が国民の支持を集めていたのは、与党にあっても時の政権に正論をぶつけ、議論もいとわぬ姿勢からだろう。ところが首相になった途端、持論を封じてしまった。所信表明演説や代表質問だけでは結局、何をしたいのか伝わってこなかった。例えば岸田内閣の経済対策を継承すると言うが、アベノミクスの総括や具体策が聞きたい。

 ■野党は対立軸を

 野党は、政治改革を公約の軸に据え、裏金事件などで自民党を追及する戦略をとっている。第1党の立憲民主党は「政権交代」を目標に掲げる。ただ公約では消費減税や「原発ゼロ」は掲げず、最低賃金の引き上げなど、与党と共通する政策も少なくない。

 自公政権ではできない政策は何か、対立軸を分かりやすく訴えるべきだ。選挙区での野党連携を含め、政権交代実現に向けた道筋や枠組みも示してほしい。

 解散前に国会で議論すべきだった課題は多い。世論を二分する政策はなおさらだ。国民のための政治を進められるのはどの党か。政治の信頼回復に向け、与野党は選挙戦を通じて有権者に判断材料を示す責任がいつも以上にある。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年10月10日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・10.10】:衆院解散 「政治とカネ」問われる

2024-10-11 07:05:40 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【社説・10.10】:衆院解散 「政治とカネ」問われる

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・10.10】:衆院解散 「政治とカネ」問われる

 石破茂首相が今月1日の就任からわずか8日後に、衆院を解散した。15日に公示される衆院選の投開票は27日で、首相就任から26日後となる。いずれも現行憲法下で最も短い。

 首相はきのうの党首討論で解散の大義について「新内閣が発足し、取り組もうとしていることに信任を得ること」と述べた。岸田前政権は自民党派閥裏金事件の責任を取り退陣したが、裏金の実態解明が不十分で、政治資金規正法改正も「抜け道」が残る内容だった。国民は忘れていないはずだ。「政治とカネ」が最大の争点となるだろう。

 首相はかつて憲法7条に基づく衆院解散に反対し、69条を根拠に「内閣不信任決議案が可決された場合に限るべきだ」と訴えていた。7条は解散を内閣の助言と承認を受けた天皇の国事行為の一つと定めるが、天皇は国政に関する権能を有しないため、事実上首相が判断する。今回の解散について「憲法の趣旨に沿う」と正当化しており、前言を翻した姿勢は疑問だ。

 そこまでして解散に前のめりになったのは、総裁選、新内閣発足で支持率が比較的高い「ご祝儀相場」のうちに衆院選を実施したいという思惑からではないか。共同通信社が1、2日に実施した世論調査によると、石破内閣の支持率は50・7%。20%台に低迷していた岸田内閣と比べ大幅に上昇した。

 だが同じ世論調査では、投票先を決める際に裏金事件を考慮するかという問いに「ある程度」を含め「考慮する」が計59・6%。関係議員を自民が公認することを「理解できない」とする回答は75・6%に上った。

 焦点の裏金事件対応で、首相は裏金事件に関係した前議員のうち、12人を非公認とすることを決定。公認34人について比例代表への重複立候補を認めなかった。非公認は当初6人と発表したが、増やした。裏金事件の逆風を意識したのだろう。

 既に不出馬意向を表明した前議員もおり、自民では厳しい処分との受け止め方だ。これに対し立憲民主党の野田佳彦代表は「大半が公認されてしまう」として、甘い処分だと批判する。

 立民は、裏金事件に関係した前議員がいる小選挙区で野党候補の一本化を模索する。しかし現状は日本維新の会、共産党、国民民主党を含む4党のいずれかが競合する選挙区が多い。

 維新の馬場伸幸代表は候補一本化について「現実的にこの段階まで来ると厳しい」と述べた。公示までにどこまで調整が進むかも焦点となる。

 首相が臨んだ主な国会論戦は、所信表明演説に対する両院での各党代表質問、党首討論にとどまった。全閣僚が出席する一問一答形式の予算委員会の開催には応じなかった。これで新内閣を評価するのは難しい。

 政治とカネのほかにも争点は多い。各党は選挙戦を通じ、さまざまな判断材料を有権者に示さなければならない。

 元稿:秋田魁新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年10月10日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【社説・10.10】:「衆院解散」 政治不信とどう向き合う

2024-10-11 07:05:30 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【社説・10.10】:「衆院解散」 政治不信とどう向き合う

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・10.10】:「衆院解散」 政治不信とどう向き合う

 「政治とカネ」問題で政治不信が高まり、暮らしに物価高が重い。地域の活力が失われ、安全保障環境は厳しくなる。課題とどう向き合うかを示し、選択する時だ。

 衆院が解散された。石破茂首相は就任から最短の日程で衆院選へと踏み切った。

 首相は新内閣発足を解散の大義とする。国民の信任を得て、政権の安定へとつなげる意向のようだ。

 だが、そもそも首相は憲法7条に基づく解散に批判的だった。発足直後の新鮮味を生かし、今なら勝てると判断するのは憲法の趣旨に反すると発言している。

 そうであっても、失速を恐れる党内の声にあらがえなかった。自民党総裁選で意識された党内基盤の弱さが政権運営にのしかかる。

 野党は首相の発言が後退していると攻撃した。予算委員会を開かず、本格的な国会論戦を経ない最短解散に強い批判を向けた。党首討論は通例より長い時間がとられたとはいえ、政策論争に前向きと思われた姿勢とは相いれない。

 論点の一つは自民党派閥の裏金事件だった。野党側は新しい事実が出ていると再調査を求めたが、首相は応じなかった。

 とはいえ、世論の逆風は意識せざるを得ない。自民は衆院選で、政治資金収支報告書に不記載があった議員らのうち12人を非公認とする。また、公認しても比例代表との重複立候補を認めないことを決めた。

 公認作業は公示直前まで続くが、一連の対応に党内から不満の声が上がる。選挙後も尾を引くことが想定される。一方、野党は小選挙区での対抗馬の一本化へ調整が進むかが当面の焦点となる。

 裏金事件を受けた政治改革の在り方は、衆院選の争点として引き継がれる。首相は所信表明演説で、国民はそのうち忘れると思っていないかと政治にくぎを刺した。自民議員に衆院政治倫理審査会への出席を求めた議決は、衆院解散で失効した。真相はまだ解明されていない。

 改正政治資金規正法は、資金の流れを監査する第三者機関の検討を付則に盛った。その制度設計や法の実効性を高める議論は不可欠だ。

 物価高に対応する経済対策も重要な争点となる。首相は賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現を掲げた。重要なのは具体策だ。首相は就任後に追加利上げの環境にないと述べ、株価や外国為替市場が混乱した。自らの立場と、市場との対話の重要性を意識したに違いない。

 総裁選で首相が意欲を示した日米地位協定改定や選択的夫婦別姓は、所信表明では触れなかった。現実路線への回帰と、党内力学への配慮が指摘される。石破色が薄れる一方、政権の基本姿勢や具体的な政策は明確にならないままだ。

 衆院解散を受け、事実上の選挙戦に突入した。論点は少子化の進展や社会保障、防災、防衛など多岐にわたる。岸田前政権の3年間を総括する作業でもある。国民に選択肢を示す論戦を期待したい。

 元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム【社説】  2024年10月10日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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