【社説①・03.31】:少子化時代の大学 規模の適正化は地域で議論を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.31】:少子化時代の大学 規模の適正化は地域で議論を
少子化が進む中、日本の国力の土台となる大学教育の質向上と量の調整をどうするのか。制度設計が問われている。
18歳人口の急減で定員割れに陥る大学が増えている。昨春で私立大の約6割に上った。
短期大や女子大は特に深刻だ。京都では龍谷大短期大学部と池坊短大が今春から新入生の受け入れを停止し、京都光華女子大は2026年度の入学生から共学化することを決めた。滋賀でも滋賀文教短大が26年度以降の学生募集を取りやめる。
定員割れや経営状況の悪化は、教育の質と研究力の低下に直結する。大学が高等教育機関としての役割を十分に果たすためには、教育プログラムや研究環境の充実を図る必要があるのは当然として、過剰となる設置数や定員の適正化に踏み込むこともやむを得ない。
中教審は先月、今後の高等教育の在り方について阿部俊子文部科学相に答申した。24年に約63万人だった大学進学者は40年には約46万人まで減少し、現在の定員の7割程度しか埋まらなくなるとして、経営難の大学については、規模の縮小や撤退、他大学への統合を強く促している。
ただ、大学の淘汰(とうた)を市場原理だけに委ねるのは問題が大きい。定員割れに苦しむ大学は地方の私立に多く、都市部と地方の教育格差が広がる恐れがある。大学は地域への人材供給源の役割も担っており、社会インフラとしての公共性も十分考慮する必要があろう。
答申は、地域ごとに産学官の人材育成や大学規模の適正化も含めた教育の在り方を検討する「地域構想推進プラットフォーム」を設けることを提言している。各論に入れば、大学の再編・統合や自治体への支援要請など、地元に一定の「痛み」を伴う策も想定される。都道府県と市町村で視点も異なろう。
地域の将来像と大学の役割を重ね、住民と共有して理解と協力を広げる姿勢が欠かせない。
ただ、地域への丸投げは許されまい。人口減少が想定されながら、規制緩和で大学の新設を認めてきた国の責任も重い。
学部新設や定員増の要件を厳格化するだけでなく、各大学の財務や定員充足率、地域性を見極め、集約や撤退を適切に誘導する透明性の高い仕組みが要る。大学の統合がしやすい環境づくりも求められよう。
答申は、国立大も学部の定員規模の見直しが避けられないとして、大学院重点化で定員に振り替えることを提案している。だが、大学院への進学率が低迷する中、実効性に疑問が残る。
文科省は答申を踏まえ、夏をめどに今後10年程度の政策工程をまとめるという。社会人の「学び直し」や生涯学習の場としての活用、留学生のさらなる受け入れなど多様な選択肢と支援措置を整えたい。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月31日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。