★米大統領ドナルド・トランプの外交と言い難い商法にうんざりな向きは多いだろうが、隣国であるカナダやメキシコだけでなく、都合のいい日本にも矛先を向けだした。6日、日米安全保障条約について「我々は日本を守らなければならないが、日本は我々を守る必要はないという興味深い取り決めがある」「誰がこんな取引を行っているのかと尋ねたのだ」と不満を言い出した。日米安保条約第5条は「日本が攻撃を受けた場合に米国が防衛する義務」を定めている。

 ★むろん、この片務条約が正しいと思っている国民はいないだろうし、日米合同委員会やいびつな日米地位協定にも疑問と矛盾は多い。首相・石破茂は7日の参院予算委員会で「日本は米国に基地を提供する義務を負っている。一方的に米国が日本を守っているという関係ではない」「日本の工業力、治安、親米感情、インフラストラクチャーが米国の世界戦略にどれほどの役割を果たしているか」と、くぎを刺したつもりだろうが、なんなら矛盾の指摘合戦でも始めたらいい。それをドルに換算してみろと一蹴されるだろう。だがトランプの目的は在日米軍の一部撤退ぐらいは認めるだろうが、真の目的は日本の防衛費を2%から3%にさせることだろう。

 ★トランプは1期目にも同様の発言をしている。ジョン・ボルトン国家安全保障担当大統領補佐官の回顧録によれば19年、トランプは1800億円程度だった思いやり予算を年80億ドル(当時約8500億円)にしろと要求。当時の首相・安倍晋三は慌てて調整。岸田政権で22年から26年の日本側負担額は年平均約2110億円に。5年間の総額1兆551億円になった。米仏首脳会談でも同盟や集団的自衛権の在り方の変更を求めたトランプ。フランスは仏独の核を欧州全体に広げる「核の傘」論を提案。現実味を帯びてきた。米安全保障の国定が変わる可能性がある。日本はこれをチャンスととらえるべきだが、政治家や外務・防衛官僚は現状死守に動くだろう。(K)※敬称略