【共同通信社 調査】:70歳就業 慎重論多く 企業は二分、浸透に時間
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【共同通信社 調査】:70歳就業 慎重論多く 企業は二分、浸透に時間
安倍政権が目指す七十歳就業社会は実現するか-。国会では三月末、希望者は七十歳まで働けるよう企業に努力義務を課す改正法が成立したが、主要百十社を対象とした共同通信社の調査によると企業の受け止めは二分した。前向きな社が半数を占める一方、「(法律で義務付けられている)六十五歳までの雇用確保が先」「七十歳までの雇用を一足飛びに検討できない」と慎重意見も多く、浸透には時間がかかりそうだ。
調査は一~二月に実施。七十歳まで働く環境についての設問にはうち百社が答えた。十社が七十歳まで働く環境が「既にある」、四十社が「これから整える」とした。四十六社が「現時点で検討に着手していない」、四社は「対応する予定はない」と答えた。
改正法の特徴は六十五~七十歳の働き方として、起業したりフリーランスになったりした人への業務委託や、自社が関わる社会貢献事業への従事といった選択肢を新設したことだ。多様な働き方が選べるようにとの狙いがある。六十五歳までに適用されている定年の延長や廃止、継続雇用制度を含めて、企業はいずれかの方法で希望者が働けるよう努めなければならない。
しかし、六十五~七十歳の働き方を「これから整える」とした企業の多くが、継続雇用や定年延長など既存の仕組みを選択すると回答。業務委託を検討するのは五社、自社が関わる社会貢献事業への従事を促すのは四社と少なかった。
千葉経済大の藤波美帆准教授(人的資源管理論)は「六十五歳までの雇用環境も十分ではない企業がある中、六十五~七十歳の働き方を考えるのは、企業にはプレッシャーだ」と指摘する。新たな選択肢が広がらない背景について「どういう仕事を提供できるのかイメージしにくく、管理する企業側にはリスクにもなり得るので、ノウハウがある従来の方法でと考えるのではないか」と分析した。
七十歳就業に慎重な企業からは、六十五歳以上の健康状態が人によってさまざまで対応が難しいとの声が聞かれた。「本人の意欲や健康の状況、ニーズなどに個人差が生じる」(繊維業)、「仕事の能力や健康面で個人差が大きいため、検討の予定はない」(製造業)など課題を感じているようだ。
藤波准教授は「年齢に関わるリスクや不安を企業が解消できるよう、政府が指針で示す必要がある」と指摘している。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政策・安倍政権が目指す七十歳就業社会・希望者は七十歳まで働けるよう企業に努力義務を課す改正法】 2020年04月05日 06:15:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。