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ディクスン・カー試論 準備稿 その4

2022年09月03日 | JDカー
1930年から37年までは、『殺人現場の舞台化』『プロットの並行輻輳化 』を駆使して、
開かれた場で烏合の衆が容疑者になる話を、
38年から44年まではドメスティックな場所で家族中心の人間が容疑者になる話を
『登場人物の視点による読者の誘導』を使って書いている、と言えます。

1938年以降は、物語のキーパーソンを設定して『あり得なさそうな事件と実際の事件とをつなぐ要』に使っています。
たとえば、38年『死者はよみがえる』のベローズの父親、39年『読者よ欺かるるなかれ』のペニイク、
同年『緑のカプセルの謎』のある人物、40年『幽霊屋敷』の屋敷の持ち主、
44年『死が二人をわかつまで』の詐欺師、同年『爬虫類館の殺人』の管理係、などがあげられます。
このキーパーソンが事件の鍵を握っているので、カーは念入りにこのキーパーソンがどんな人間かを描きます。
40年『緑のカプセルの謎』では『毒殺講義』がフェル博士によって開陳されますが、
じつはある人物を描く代わりに、講義の中でその人物と同じキャラクターの毒殺者を紹介しています。
その話はこちらの拙ブログで。

44年『爬虫類館の殺人』でのHM卿とトカゲののダッシュ場面と管理係の関わりについては、昔の拙ブログで。


余談ですが、『密室講義』冒頭におけるフェル博士の
『われわれは探偵小説の中に~登場人物であることに徹しようではないか』(ハヤカワミステリ文庫 P289)は、
密室講義がただの『目くらまし』であることの証拠です。
フェル博士の言葉の意味は、『ここは小説の一部であり、著者が仕掛けたミスディレクションがあるかもしれんぞ』
ということです。
本当にそれがあるかどうかは、恥ずかしながら昔に書いた拙ブログで。


さらに、『白い僧院の殺人』と林不忘『釘抜藤吉捕物覚書』との関係については、こちらの拙ブログで。
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