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菊水兵談

2023年11月04日 | 時代
春陽文庫から出た「菊水兵談」(横溝正史)を読む。
正史の作品年表と出版芸術社版で作品名は知っていたけれど、
読むのは初めて。こういう話だったのか。
あまりに皇国史観的な主人公の性格付けに鼻白む。
だけど、2話、3話と進むうちに(短編連作形式らしい)、
主人公らしい菊水兵馬は狂言回し的な役割で、
話の主役は泥棒のほうではないか? と思ってしまう(まだ最初のほうしか読んでいませんが)。
これは、正史が『探偵小説五十年』の「片隅の楽園」で書いていた、
「矢田挿雲先生の「江戸から東京へ」のむこうを張って「大江戸八百八町」なる読物を……」(P213)
という意気込みのプロトタイプみたいなものだったのでは? とも。
菊水兵馬に維新の傑物たちと遭遇させながら幕末から明治へと変わる江戸を描く……のかなあ。
1エピソードの長さも人形佐七捕物帳と似たような感じなので、
佐七が書けなくなった代わりに、あちこちからも怒られないような主人公と筋立てで糊口をしのごうとした、のかも。
佐七ものは主人公がスケベなので書けなくなった、ということを『探偵小説五十年』(P94)で書いています。
人形佐七といえば、なんと創元推理文庫から傑作選がでるとの由。
佐七ファンとしては若干フクザツな気持ち。
ミステリ作品として出すのならば(副題に「ミステリ傑作選」とある)、
作品セレクト理由が解説にあるのでしょうね。
「なんとなくミステリっぽいのを選んだ」なんて理由はナシで。
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