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境界の扉 日本カシドリの秘密

2024年06月22日 | Eクイーン
「境界の扉 日本カシドリの秘密」
■ほぼ50年以上前に読んだきりの再読だったけれど、
筋をほとんど忘れていたせいか、妙におもしろかった。
★妙に、って。
■作中のエラリーが、作者に都合の良いことを言わなかったからだろうね。
★なんですか、それ?
■「チャイナ・オレンジ」でエラリーにハードボイルド探偵の真似事をやらせてみたものの、
あまり上手くいかなかった反省で今回は本物のハードボイルド探偵をほぼ主役に持ってきたんじゃないか。
ヒロインの恋の行方を本筋に設定して、エラリーを脇へ持っていったのが良かった気がする。
「生者と死者と」や「十日間の不思議」などに顕著だけど、
エラリーがあきらかに作者の都合を誘導する無理な言動をしているんだよね。
この作品では、エラリーがあまり登場しない分、そういった無理やりな場面が少なかったと思う。
★そんなにハードボイルドを意識していたんでしょうかね。
■最大の仮想敵だったのでは? とはいえ作者クイーンの想定内でのハードボイルド性だろうけど。
現場が密室で、かつそこにいた人物が犯人ではない、という設定はディクスン・カー風だね。
だからおもしろいと感じたんだろうなあ。
★エラリーが脇に回ったので、ヒロインの目から見たクイーン一家の描写があるんですね。
■帝国大学で教えていた、というリース博士(姉妹の父親)のモデルは「バシル・ホール・チェンバレン」ではないか。
ラフカディオ・ハーンとも知遇があった、というのも一致しているし。
しかし、昔からの疑問だけどクイーンはどこから日本についての知識を引っ張ってきたのかねえ。
★それまでの国名シリーズとは違って、この作品では日本文化がミステリのテーマに深く関わっている感じがします。
■当時に日本ブームがあったとも思えないし、ハラキリの流儀や思想とかに参考資料があるような気がするんだけどなあ。
ちなみに題の「境界の扉」は、殺人現場にあった開かない扉のことだよね。50年ぶりに意味がわかったよ。
★P168で4人の作家名があがっていますが、「オオクマ」って誰ですかね? 小栗宗湛はわかっているのに。
■大隈重信……ではなさそう。
アストンは日本研究者の「ウィリアム・ジョージ・アストン」なのでは。
たぶんクイーンはこの4人(オオクマは不明)の著作を参考にした、のかな。
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