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緑のカプセルの謎 その3

2019年11月05日 | JDカー
■「緑のカプセルの謎」についてちょっとひとこと。

★あれ? 順番でいけば「魔女の隠れ家」じゃないんですか。「緑のカプセルの謎」は前にしつこく書いていたでしょ。

■うん、だけど、ちょっとおかしなところを見つけたんだ。

★はい、はい、どうぞ。これだから年寄りは……

■「緑のカプセルの謎」自体の出来としては、中の上ぐらいで、代表作というには地味すぎるし、
評伝「奇蹟を解く男」でも「緑のカプセル」にはあまり注目されていない。
どちらかというと、「テニスコートの殺人」のほうが重要と書かれているね。

★うーん、まあ、そうですね。ですけど、件の心理試験が有名ですが。

■そうなんだけどね、毒殺者講義って、ちょっとおかしいだろう。

★そうでしたっけ。あれ、おもしろかったなあ。
プリッチャードのハゲ頭とかここで知った人間が多いんじゃないですか。
澁澤龍彦の「毒薬の手帖」とかぶっていないところが不思議でした。

■「毒薬の手帖」の冒頭に「毒殺者には女が多いといわれる。統計学的には動かしがたい真実」(P13 河出文庫版)とある。
それが真実だとすると、「緑のカプセルの謎」の「毒殺講義」はおかしなことになる。
「緑のカプセルの謎」で一番の容疑者は「女」なんだよ。
ところが、毒殺講義ではひたすら男の毒殺者だけが述べられている。

★言われてみれば、たしかに。

■「三つの棺」の「密室講義」と同じように、ここでもカーがフェル博士を利用して
読者のミスディレクションを誘っているんだ。ミスディレクションというより、
読者の目の前に犯人の写真をぶらさげている、と言ったほうが近いかも。

★だから男の毒殺者を恣意的に選んだ、というわけですか。

■作中では被害者が被験者たちに
「目の前にあるけれど、観察力の無さと先入観で、それとは気づかぬもの」を問うているわけだが、
じつはカーも読者にむかって同じことを挑戦をしているわけさ。

★でも、それほど意外な犯人じゃなかったわけで……

■そこなんだよね。お話の構造上、犯人はこれだろうと、たいていの人はあたりをつけるからな。
そこがカーの誤算だったかもね。自分の作風に裏切られてしまった、のかな。
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