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ディクスン・カー試論 ネタ蔵 その1

2022年09月05日 | JDカー
ぺニイクとは何者か ー カー作品における人種
カーの作品には、主要人物として欧米人以外はほとんど登場しません。
有色人種は『絞首台の謎』に出てくる黒人、『青銅ランプの呪』に出てくるアラブ人、
あとは『読者よ欺かるるなかれ』のペニイクぐらいでしょうか。
で、このペニイクって何者なのか。
白人と有色人種とのクォーターと説明されていますが、具体的な国籍は明らかになっていません。
たぶんアフリカ大陸のどこかの国ではないかと思われます。

放送大学・宮本陽一郎先生の講義の中で聞いたのですが、
オーソン・ウェルズがプロデュースして、ハーレムで上演した「黒いマクベス』という舞台があったそうです。
ハイチが舞台になった戯曲なのですが、役者は全員が黒人。
舞台がハイチなので、劇中の呪術師の場面では本物の呪術師を呼んできたそうです。
当然そんな先鋭的な芝居が保守的な評論家連中から誉められるはずもなく、
新聞上である評論家からボロクソにけなされてしまった。
ウェルズががっかりしていると、件の呪術師からその評論家は悪いヤツだから呪っていいか、と聞かれたそうです。
ウェルズは冗談だと思って「やってくれ」と答えたら、本当に呪いを始め、その評論家は二、三日後に死んだとか……。

演劇の世界では有名な話だそうですが、
案外に『読者よ~』は、このあたりからアイデアを持ってきているのではないでしょうか。
そうだ『絞首台の謎』にはエジプト人も出てきたけれど、
イスラム教徒じゃなく、ナイルの神々とか言っているんだから、首をかしげてしまいます。
『青銅ランプの呪い』に出てくるアラブ人もイスラム教徒というより、
「アラビアンナイト」に出てくる人物のように思えます。

要はヨーロッパとアメリカ以外の国や人種には、あまり興味が無かったのでしょう。
さらに第二次大戦の枢軸国側の人間には、やや偏向気味だったみたいです。
短編『ことわざ殺人事件』に出てくるドイツ人のクーン、
敵国人なのにイギリスで収容もされないでいる、ということはユダヤ系の亡命ドイツ人、ということなのでしょうね。
「クーン」という姓はユダヤ系ですし。
でもその彼にナチス風の挨拶をさせる、というのは皮肉というより、あまり考えもしないで書いたのでしょうか。
『猫と鼠の殺人』の被害者は、イタリア人から英国人に帰化した、という設定だからか、
『殺されてもいい』ように書かれているのも理解に苦しむところです。
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