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●斉加尚代監督『教育と愛国』…JCJ賞《選考委員から「ジャーナリストが決意を固めて取り組めばこれだけの作品ができることを示した」》

2022年11月01日 00時00分42秒 | Weblog

[↑ 誰がメディアを殺すのか 毎日放送ディレクター・斉加尚代さん (朝日新聞、2022年5月19日)]


 (20221019[])
教育と愛国』…《教科書採択に「政治家がタッチしてはいけない…」…政治家はタッチしないのが当たり前なのだ》を理解できないアベ様でした。

   『●斉加尚代監督『教育と愛国』:《教育への政治支配が続けば、日本の
     学校は…政府プロパガンダを信じ込ませる場に堕す》(前川喜平さん)
   『●『教育と愛国』《危うさに気づいた…。監督で毎日放送の斉加尚代さんは、
         ゆがむ教育現場のリアルを伝え「教科書は誰のものか」を問う》
   『●《地元テレビはヒレ伏しヨイショの連続》…一方、ある記者は
     《「こんな状態でも、ひるんじゃダメよ」――。橋下市長より大人だ》った
   『●『教育と愛国』《教科書は誰のものか》…「そんなふうに、教科書
     検定だけではなく学校の現場に、有形無形の圧力が押し寄せている」
   『●『教育と愛国』…《教科書採択に「政治家がタッチしてはいけない…」
     …政治家はタッチしないのが当たり前なのだ》を理解できないアベ様

 斉加尚代監督『教育と愛国』――― 前川喜平さん《『教育と愛国』(斉加尚代監督)の試写を見た。従軍慰安婦、集団自決、強制連行を巡る教科書検定などへの政治的圧力、教育右傾化をえぐり出したドキュメンタリー》《教育への政治支配が進めば、日本の学校はロシアや中国のように政府プロパガンダを信じ込ませる場に堕すだろう》。また、《「主戦場」を見た人には「教育と愛国」を見ることもおすすめします》とも。(映画「主戦場」の監督が訴えられていた裁判、二審も勝訴しています。当たり前です。)

   『●映画『主戦場』で、〝否定派〟の論客の皆さん《杉田水脈衆院議員や
     ケント・ギルバート氏…藤岡信勝氏、テキサス親父…櫻井よしこ氏》は…

 お維・橋下徹初代大阪「ト」知事と戦った記者…【橋下氏、女性記者を“罵倒”つるし上げ!君が代条例の波紋】。斉加尚代MBS記者と、《地元テレビはヒレ伏しヨイショの連続》《ハシズム》で当時絶好調の橋本徹元大阪「ト」知事・当時大阪市長とのやり取りが秀逸。

   『●対橋下元〝ト〟知事、どうすべきか?

 さて、毎日放送のニュース映像【MBS製作の映画『教育と愛国』がJCJ賞の「大賞」に 日本ジャーナリスト会議が選定(2022年9月24日)】(https://www.youtube.com/watch?v=0kDgITP2-1Y)によると、《MBSが今年に製作したドキュメンタリー映画『教育と愛国』が、優れたジャーナリズム活動を表彰する「JCJ賞」の大賞に選ばれ、9月24日、贈賞式が行われました。JCJ賞は、毎年、映像や活字などすべてのジャーナリズム活動の中から作品数点をJCJ=日本ジャーナリスト会議が選定し、表彰しています。今年の大賞に選ばれたのは、MBS製作のドキュメンタリー映画『教育と愛国』で、東京で行われた贈賞式では、選考委員から「ジャーナリストが決意を固めて取り組めばこれだけの作品ができることを示したと受賞理由が述べられました。監督のMBS斉加尚代ディレクターは受賞後のスピーチで、「この映画はスタッフに支えられ、そして多くの観客に育てていただきました」と話しました。『教育と愛国』は京都や宝塚で上映されています》。


【MBS製作の映画『教育と愛国』がJCJ賞の「大賞」に 日本ジャーナリスト会議が選定(2022年9月24日)】
https://www.youtube.com/watch?v=0kDgITP2-1Y

 日本ジャーナリスト会議 (JCJ) のWPの記事【【65回JCJ賞決まる】JCJ大賞 映画「教育と愛国」 JCJ賞4点 特別賞1点 24日(土)午後1時から東京・全水道会館で贈賞式】(http://jcj-daily.seesaa.net/article/491247573.html)によると、《日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、1958年以来、年間の優れたジャーナリズム活動・作品を選定して、「JCJ賞」を贈り、顕彰してきました。今年で65回を迎えました。8月31日の選考会議において、次の6点を受賞作と決定いたしました》。
 さらに、《大阪の教育現場で長く取材してきた斉加尚代ディレクターが、2017年にMBSで放送した作品に追加取材をして再構成したドキュメンタリー映画。小学校の道徳教科書で「パン屋」が「和菓子屋」に書き換えられる。滑稽な書き換えだが、斉加は沖縄戦での集団自決について「軍の強制」が削除された問題とつながると感じた。ほとんどの出版社から取材を断られながら、「新しい歴史教科書をつくる会」を支持する立場の伊藤隆・東大名誉教授のインタビューを実現。「歴史に学ぶ必要はないという、歴史学者としてはあるまじき発言に衝撃を受ける。教育への政治介入が強まる中で、教科書から史実が消える。5月の公開から2か月で、2万7千人が映画館に足を運んだ。教育への危機感が広がっている》。

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http://jcj-daily.seesaa.net/article/491247573.html

2022年09月05日
【65回JCJ賞決まる】JCJ大賞 映画「教育と愛国」 JCJ賞4点 特別賞1点 24日(土)午後1時から東京・全水道会館で贈賞式

日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、1958年以来、年間の優れたジャーナリズム活動・作品を選定して、「JCJ賞」を贈り、顕彰してきました。今年で65回を迎えました。8月31日の選考会議において、次の6点を受賞作と決定いたしました。

【JCJ賞大賞】    1点

● 映画「教育と愛国」 監督・斉加尚代


【JCJ賞】      4点(順不同)

● 「土の声を『国策民営』リニアの現場から」 信濃毎日新聞
● 風間直樹/井艸恵美/辻麻梨子『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』  東洋経済新報社
● 北海道新聞社編『消えた「四島返還」 安倍政権 日ロ交渉2800日を追う』 北海道新聞社
● 「ネアンデルタール人は核の夢を見るか~“核のごみ”と科学と民主主義」 北海道放送


【JCJ特別賞】    1点

● 沖縄タイムス社と琉球新報社


JCJ賞 贈賞式:9月24日(土) 13:00~ 全水道会館・4階大会議室(東京・水道橋)
2022年JCJ賞贈賞作品一覧

【JCJ賞大賞】

● 映画「教育と愛国」 監督・斉加尚代

 大阪の教育現場で長く取材してきた斉加尚代ディレクターが、2017年にMBSで放送した作品に追加取材をして再構成したドキュメンタリー映画。小学校の道徳教科書で「パン屋」が「和菓子屋」に書き換えられる。滑稽な書き換えだが、斉加は沖縄戦での集団自決について「軍の強制」が削除された問題とつながると感じた。ほとんどの出版社から取材を断られながら、「新しい歴史教科書をつくる会」を支持する立場の伊藤隆・東大名誉教授のインタビューを実現。「歴史に学ぶ必要はない」という、歴史学者としてはあるまじき発言に衝撃を受ける。教育への政治介入が強まる中で、教科書から史実が消える。5月の公開から2か月で、2万7千人が映画館に足を運んだ。教育への危機感が広がっている。


【JCJ賞】

● 「土の声を『国策民営』リニアの現場から」 信濃毎日新聞 

 日本列島の中央部の自然体系と地形、風土を大きく傷つけながら強行されているリニアモーターカー建設プロジェクト。現下で総工費約7兆円のうち約3兆円を政府が財政投融資で貸し出すという、「国策民営」の事業だが、長野など関係県や市町村にも大きな負担を押し付けられている。その必要性、有効性からも、「21世紀最大の無駄プロジェクト」に対しては、地元住民などの根強い反対運動が続く。86%がトンネル工事の同プロジェクトでは、残土の処理や運搬など「土」の処理が、大きな課題になっている。この「土」に焦点をあてながら、報道機関がとかく及び腰だったリニア問題に、正面から本格的に切り込んだ本企画は、斬新でインパクトが大きい。


● 風間直樹/井艸恵美/辻麻梨子『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』 東洋経済新報社

 この闇の深さに慄然とさせられる。日本は精神疾患の患者数が400万人を超え、精神病床入院患者数約28万人、人口当たりでも世界ダントツ。そして日本の精神病院特有の強制入院制度「医療保護入院」がある。この実態を、東洋経済調査報道部メンバーが丹念に取材した。問答無用の長期入院、DVの夫の策略による入院、40年も退院できなかった男性、向精神薬の薬漬け、「一生退院させない」とおどされてパイプカットした男性、密室での虐待横行……など、家族のしがらみをも利用し、人権のかけらも見られない報告は生々しくおそろしい。少し広げて福祉行政問題にも言及がある。深刻な事態が予想される認知症急増という現在の日本に、警鐘を大きく打ち鳴らす一冊。


● 北海道新聞社編『消えた「四島返還」 安倍政権 日ロ交渉2800日を追う』 北海道新聞社

 北方領土返還問題に関する安倍政権の日ロ交渉はこの上ない稚拙外交そのものであった。
 本書は、従来の「四島返還」から歯舞・色丹の2島返還に独断で舵を切ってしまい、あげくプーチンに手玉にとられた安倍対ロ外交を7年以上にわたって追った地元紙の記録である。
 交渉の背景に見えてくる米ロ関係の悪化、ロシアのクリミア支配、連繋の深まる中ロ関係、ロシアとその周辺諸国との領土交渉の経緯等々、日ロ交渉を考えるうえでのさまざまな要素を含め、広く深く取材と分析をしている。未発表の証言の掘り起こしやロシア周辺諸国の動向への目配りも光る、北方領土問題の全貌を理解する上での必読の書である。


● 「ネアンデルタール人は核の夢を見るか~“核のごみ”と科学と民主主義」 北海道放送

 原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる核のごみ。北海道寿都町と神恵内村で、全国初の核のごみに関する文献調査が行われている。人体に影響がない放射線量になるのは10万年後とされる。今から10万年前はネアンデルタール人がいた時代だ。彼らは核の夢を見ただろうか。私たちは10万年先まで安全に核のごみを管理できるのか。「迷惑施設」を地方に押し付ける構図は原発や米軍基地とも通じる。しかし、道内のテレビや新聞は交付金目当てに調査に応募した町長や反対派住民の動きを中心とした報道に終始している、この番組は、本来、国全体で議論すべき問題が地方に押し付けられている構図を鮮明にし、一人ひとりが考えるべきだとのメッセージを発信している。


【JCJ特別賞】

● 沖縄タイムス社と琉球新報社

 沖縄タイムス、琉球新報の2紙は、ことし復帰50年を記念して、タイムスは「防人の肖像」、「50歳の島で」の企画などで、また新報は「沖縄の日本復帰50年の内実を問う」の特別号などで、ともに復帰50年を迎えた沖縄の基地の現実と、人々の生活を詳しく報道した。県内に2紙が併存するという、厳しい経営状況の下で、真実の報道を求めて切磋琢磨する2紙の活動は、日本の民主主義のために極めて重要である。
 2紙はこれまで戦後77年の日本で、米軍統治下での闘いを含め、県民の人権と日本の民主主義のために、絶えざる報道と評論活動を続けてきた。その活動は、日本のジャーナリズム全体の中で特筆されるべき成果を生んでおり、その果たした役割は極めて大きく、本土の新聞が教えられ、手本とするものでもあった
 特に、「再び戦争のためにペン、カメラ、マイクをとらない」をモットーに活動してきたJCJとして、「反戦」を明確に掲げる沖縄2紙の活動は、特に頼もしいものでもある。
 JCJは沖縄復帰50年に当たり、2紙のこの間の活動の努力と成果に対し、JCJ特別賞を贈り表彰する。

  日本ジャーナリスト会議(JCJ)
  事務局長 須貝道雄
  JCJ賞推薦委員会 大場幸夫
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●『教育と愛国』…《教科書採択に「政治家がタッチしてはいけない…」…政治家はタッチしないのが当たり前なのだ》を理解できないアベ様

2022年07月08日 00時00分24秒 | Weblog

[↑ 誰がメディアを殺すのか 毎日放送ディレクター・斉加尚代さん (朝日新聞、2022年5月19日)]


(2022年06月26日[日])
デモクラシータイムスのインタビュー【斉加尚代 何が記者を殺すのか 【著者に訊く!(鈴木耕)】 20220613】(https://www.youtube.com/watch?v=Z5vAhThnCZM&t=9s)。

 《大阪のテレビ局からの発信が、全国を揺るがしている。映画と本のふたつのメディアで、息苦しい報道現場に風穴を開けた報道記者が殺されるのは、権力の圧力とそれに忖度する社内外の空気。沖縄の基地反対運動、教科書問題、ネット上のバッシングなどを題材に、現代特有の報道の窒息状況へ立ち向かうディレクターとその仲間たち。すさまじい熱気が描き出す、現代テレビ・ドキュメンタリー最前線!》



斉加尚代 何が記者を殺すのか 【著者に訊く!(鈴木耕)】 20220613】
 (https://www.youtube.com/watch?v=Z5vAhThnCZM&t=9s


   『●斉加尚代監督『教育と愛国』:《教育への政治支配が続けば、日本の
     学校は…政府プロパガンダを信じ込ませる場に堕す》(前川喜平さん)
   『●『教育と愛国』《危うさに気づいた…。監督で毎日放送の斉加尚代さんは、
         ゆがむ教育現場のリアルを伝え「教科書は誰のものか」を問う》
   『●《地元テレビはヒレ伏しヨイショの連続》…一方、ある記者は
     《「こんな状態でも、ひるんじゃダメよ」――。橋下市長より大人だ》った
   『●『教育と愛国』《教科書は誰のものか》…「そんなふうに、教科書
     検定だけではなく学校の現場に、有形無形の圧力が押し寄せている」

 斉加尚代監督『教育と愛国』――― 前川喜平さん《『教育と愛国』(斉加尚代監督)の試写を見た。従軍慰安婦、集団自決、強制連行を巡る教科書検定などへの政治的圧力、教育右傾化をえぐり出したドキュメンタリー》《教育への政治支配が進めば、日本の学校はロシアや中国のように政府プロパガンダを信じ込ませる場に堕すだろう》。また、《「主戦場」を見た人には「教育と愛国」を見ることもおすすめします》とも。

   『●映画『主戦場』で、〝否定派〟の論客の皆さん《杉田水脈衆院議員や
     ケント・ギルバート氏…藤岡信勝氏、テキサス親父…櫻井よしこ氏》は…

 お維・橋下徹初代大阪「ト」知事と戦った記者…【橋下氏、女性記者を“罵倒”つるし上げ!君が代条例の波紋】。斉加尚代MBS記者と、《地元テレビはヒレ伏しヨイショの連続》《ハシズム》で当時絶好調の橋本徹元大阪「ト」知事・当時大阪市長とのやり取りが秀逸。

   『●対橋下元〝ト〟知事、どうすべきか?

 この【著者に訊く!(鈴木耕)】インタビューでは、斉加尚代さんは「政治が教育に介入してはいけないというモラルが崩壊している」と指摘。前川喜平さんがアベ様に向けて言ったものと同じ、「いやいや政治家はタッチしないのが当たり前なのだ」…《二〇二一年に日本教育再生機構大阪で開いた会合で熱く語る安倍晋三氏。教科書採択に「政治家がタッチしてはいけないのかといえば、そんなことはないですよ。当たり前じゃないですか」。いやいや政治家はタッチしないのが当たり前なのだ》。

 最後に鈴木耕さん、「(MBSを)辞めないでください!」、本当にブログ主も、そう思います。

   『●前川喜平さん《社会全体が子どもたちを支えられるように、子どもたちに
        税金を使う仕組みを作らなければいけない》…逆行するアベ様政権
   『●【NNNドキュメント カネのない宇宙人 信州 閉鎖危機に揺れる
     天文台】…《「経済的利益」を重視する国の政策によって…資金》大幅減
    「2005年から運営費交付金を年1%削減し続ける文科省。人件費が
     どんどんと削られ、研究者が減らされていく。文系どころか、理系に
     対しても未来に投資しない国。一方、巨額の軍事研究費で研究者の
     良心を釣る。おカネ儲けのことしか考えていない独裁者・アベ様ら。
     この国ニッポンの科学の未来はトンデモなく暗い…。」

   『●前川喜平さん《本来は自由で自律的でなければならない分野にまで
     政治支配が及ぼうとしている…新聞やテレビ…教育、文化や学問…》
   『●《国公立大や公的機関の研究者…大量雇い止め》《研究者が人件費の
     「調整弁」》…指宿昭一弁護士「いつでも切れる状態にする悪辣なやり方」

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●『教育と愛国』《教科書は誰のものか》…「そんなふうに、教科書検定だけではなく学校の現場に、有形無形の圧力が押し寄せている」

2022年07月06日 00時00分49秒 | Weblog

[↑ 誰がメディアを殺すのか 毎日放送ディレクター・斉加尚代さん (朝日新聞、2022年5月19日)]


(20220605[])
マガジン9のインタビュー記事【この人に聞きたい 斉加尚代さんに聞いた:強まる教育への政治介入。この国で今、何が起きているのか〜映画『教育と愛国』】(https://maga9.jp/220525-1/)。

 《この5月に公開された映画『教育と愛国』が話題です。道徳の教科化、教科書検定における圧力、日本学術会議の委員任命拒否問題、「慰安婦」問題を教える中学校教員や研究する大学教授への激しいバッシング……スクリーンに描き出される、教育と教科書をめぐるこの国の現状には、ぞっとするような怖ささえ覚えます。初監督映画となるこの作品を「切羽詰まる思いで作った」と語る毎日放送(MBS)ディレクターの斉加尚代さんにお話をうかがいました》。

 《ゆがむ教育現場のリアルを伝え「教科書は誰のものか」を問う》。「教育は普遍的価値で独立を担保すべき」。
 沖縄タイムスのコラム【[大弦小弦]教育とメディアと愛国】(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/966696)によると、《日の丸の小旗を手に万歳する子どもたち。米国が戦中に作った映画は、日本の教育を「政府が選んだ事実や認められた思想のみが教えられる」「同じように考える子どもの大量生産」と解説した▼公開中の映画「教育と愛国」は冒頭、このモノクロ映像を紹介する。徐々に現代の教室と二重写しになる》。

   『●斉加尚代監督『教育と愛国』:《教育への政治支配が続けば、日本の
     学校は…政府プロパガンダを信じ込ませる場に堕す》(前川喜平さん)
   『●『教育と愛国』《危うさに気づいた…。監督で毎日放送の斉加尚代さんは、
         ゆがむ教育現場のリアルを伝え「教科書は誰のものか」を問う》
   『●《地元テレビはヒレ伏しヨイショの連続》…一方、ある記者は
     《「こんな状態でも、ひるんじゃダメよ」――。橋下市長より大人だ》った

 斉加尚代監督『教育と愛国』――― 前川喜平さん《『教育と愛国』(斉加尚代監督)の試写を見た。従軍慰安婦、集団自決、強制連行を巡る教科書検定などへの政治的圧力、教育右傾化をえぐり出したドキュメンタリー》《教育への政治支配が進めば、日本の学校はロシアや中国のように政府プロパガンダを信じ込ませる場に堕すだろう》。また、《「主戦場」を見た人には「教育と愛国」を見ることもおすすめします》とも。

   『●映画『主戦場』で、〝否定派〟の論客の皆さん《杉田水脈衆院議員や
     ケント・ギルバート氏…藤岡信勝氏、テキサス親父…櫻井よしこ氏》は…

 お維・橋下徹初代大阪「ト」知事と戦った記者…【橋下氏、女性記者を“罵倒”つるし上げ!君が代条例の波紋】。斉加尚代MBS記者と、《地元テレビはヒレ伏しヨイショの連続》《ハシズム》で当時絶好調の橋本徹元大阪「ト」知事・当時大阪市長とのやり取りが秀逸。

   『●対橋下元〝ト〟知事、どうすべきか?

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https://maga9.jp/220525-1/

この人に聞きたい
斉加尚代さんに聞いた:強まる教育への政治介入。この国で今、何が起きているのか〜映画『教育と愛国』
By マガジン9編集部 2022年5月25日

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この5月に公開された映画『教育と愛国』が話題です。道徳の教科化、教科書検定における圧力、日本学術会議の委員任命拒否問題、「慰安婦」問題を教える中学校教員や研究する大学教授への激しいバッシング……スクリーンに描き出される、教育と教科書をめぐるこの国の現状には、ぞっとするような怖ささえ覚えます。初監督映画となるこの作品を「切羽詰まる思いで作った」と語る毎日放送(MBS)ディレクターの斉加尚代さんにお話をうかがいました。
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教科書をめぐる「圧力」が強まっている

──公開中の映画『教育と愛国』は、MBSのドキュメンタリーシリーズの1作として2017年に放映されたテレビ番組がもとになっています。最初にこのテーマで番組を作ろうと思われたのはどうしてだったのでしょうか。

斉加 直接のきっかけになったのは17年3月、小学校の道徳教科書検定の結果が発表され、そこに付けられた検定意見が話題になっていたことでした。
 代表的だったのが、小学校1年生の教科書に収録されていた「にちようびのさんぽみち」という作品。子どもが自分の住む地域を散歩して「パン屋」で友だちに出会うという話なのですが、学習指導要領にある「国や郷土を愛する態度」に照らして扱いが不適切である、という検定意見が付いたのです。
 これを受けて、教科書会社は「パン屋」を「和菓子屋」に変更。「パン屋には愛国心が足りないというのか」「あんパンはどうなんだ」などと、インターネット上で論争が巻き起こっていました。

     (『教育と愛国』より。
      (c)2022映画「教育と愛国」製作委員会)


検定意見……学校で使用される教科書は、民間の教科書会社が編集・制作し、文部科学省による「検定」によって教科書として認定される。検定においては、文科省による「検定意見」が付けられ、それを受けて各教科書会社が修正を行った上で合否が判定されることになる。


──戦後ずっと「特別の教科」という位置付けだった道徳は、小学校で18年度、中学校で19年度から、教科書を使って教えられる正式な「教科」という扱いになりました。それに向けた最初の道徳教科書だったこともあって、大きな注目を集めましたね。

斉加 ただ、「教科書の問題をやらなきゃ」と強く思ったのはそれだけが理由ではありません。その10年以上前の06年に、高校日本史の教科書検定において、沖縄戦での「集団自決」についての記述に検定意見が付き、日本軍による命令や誘導があったと取れる記述が削除されるという出来事がありました。それを知っていたので、戦争の記述と「パン屋」、まったく違う話のように見えるけれど、根っこのところではつながっているのではないかと感じたのです。
 戦前・戦中の日本では、道徳は「修身」と呼ばれ、子どもたちに「忠君愛国」という一つの価値観を押しつけるような、今の言葉でいえば「日本ファースト」の教育が行われていました。戦後、道徳が正式の教科になってこなかったのも、そのことに対する反省があったからです。
 その道徳が73年ぶりに正式教科として復活する。もちろん、「修身を復活させるんだ」なんて言っている人はいなくて、学校でいじめが相次いでいるなどの問題に対応するためというのが表向きの理由でした。でも実際には、教科書検定において、「愛国心」について述べた条項に照らして不適切だ、という意見が付くということが起こっている。事態は思った以上に深刻なのかもしれないと考えて、番組の企画書を書いたのです。

──教科書については検定の問題の他、「学び舎」という教科書会社の中学歴史教科書を採用している学校に、大量の抗議はがきが送りつけられていたという話も出てきました。

斉加 学び舎の歴史教科書は、現場の教師たちがそれまで授業で重ねてきた実践を持ち寄り、独自に作ったもので、16年に初めて検定に合格しました。歴史的事実を単に暗記するのではなく、子どもたちにどのように歴史が作られてきたのかを考えさせ、問いかける内容になっています。それを「反日極左の教科書」などと決めつけ、採用に抗議するはがきが学校に届いているという話を番組の下調べ段階で耳にし、取材することにしました。
 当初は、実際に学び舎の教科書を使って行われている授業の様子を撮影取材したいと思い、いくつもの学校に申し入れたのですが、すべて断られました。誰からかは分からないけれど、ある意味で狙われ、脅されている状況にあるわけで、そんな中で取材は受けられない、と。結局、複数の学校から抗議はがきの現物だけは借りることができたので、それをカメラマンに撮影してもらいましたが、その学校からも「校名は伏せて欲しい」と強く言われました。
 そんなふうに、教科書検定だけではなく学校の現場に、有形無形の圧力が押し寄せている。これは絶対に取材しなくては、と思いました。

     (斉加尚代さん。インタビューはオンラインで行った)


教育をめぐる状況は、明らかに悪い方向へ進んでいる

──そうして制作されたテレビ版「教育と愛国」は、17年度のギャラクシー賞テレビ部門大賞を受賞するなど高い評価を受けました。それを今回、改めて映画化しようと考えられたのはどうしてでしょうか。

斉加 ギャラクシー賞受賞の当時から、「映画にしたらどうか」という声はいくつかいただいていました。でも、私自身はテレビの番組づくりで手一杯で、そんなのはとても無理だと思っていたんです。
 ところが、20年になって新型コロナの感染拡大が始まった後、過去の取材でお世話になった先生たちをはじめ、教員も子どもたちも、学校現場が疲弊しているのがわかりました。その背景にあったのが、20年2月末に安倍首相(当時)が、まだ全然感染者のいない地域もあったにもかかわらず突然の全国一斉休校要請を表明したこと。何も聞かされていなかった現場はもちろん大混乱、卒業式ができなくなって涙した子どもたちも多かったと聞きます。
 そもそも、首相が文科省の頭越しに「休校要請」をするなんて、教育の独立性を重視する戦後の教育基本法の考え方からすればまずあり得ません。ところがその後も、大阪では松井大阪市長が教育委員会に相談すらせず「オンライン授業を一斉に行う」と発言、またしても学校現場が翻弄されるという事態になった教育の独立性が危機にさらされている、このままでは学校現場で子どもたちに向き合う先生たちは、疲弊する一方だと感じました。
 加えて、ちょうどそのころ、テレビ版「教育と愛国」をある映画祭で上映していただく機会に恵まれたんです。大きなスクリーンで見てもらうと、またテレビとは反応が違うと感じて、「表現の場を変えて、映画という形で見てもらうのもいいのかもしれない」と少しずつ考え始めました。
 それでもまだ「難しいだろうな」という迷いがあったのですが、最終的に自分の中で「やろう」とギアが入ったのは、日本学術会議の会員任命拒否問題が起きたときです。


日本学術会議の会員任命拒否問題…日本学術会議は、政府への政策提言などを役割とする内閣府の特別機関。会員には理学・工学、人文・社会など幅広い分野の科学者が揃う。これまで、その会員は会議が推薦した候補者がそのまま任命されてきたが、2020年9月、菅首相(当時)は、会議が推薦した新会員候補105名のうち6人の任命を拒否。拒否を判断した具体的な理由も示されなかった。


──同じ20年の10月ですね。1年半以上が過ぎた今も、その「拒否」の理由について、納得のいく説明はなされていないままです。

斉加 それまでも、政府によって教育の自由が脅かされていると感じてきたけれど、そこにさらに特定の学者が官邸の意向によって排除されるという事態が起こった。教育の自由に加えて学問の自由にも政府が介入してきたわけで、一線を越える時代が到来してしまったんじゃないかと、強い衝撃を受けたんです。
 ここまで来てしまったのは、教育の自由や学問の自由の重要性に気づいていない人が多いからじゃないか。その責任の一端は、報じてこなかったメディア、そしてその一員である私自身にもある。だったら、これからでもより広く事態を伝えていくために、これまでの自分の仕事から垣根を越えて、表現の場を広げていかなきゃいけないんじゃないか──。そう感じて、「映画にしよう」とスイッチが入りました。

──映画化にあたって、たくさん追加取材をされたと思うのですが、もっとも力を入れたのはどのあたりでしょうか。

斉加 当初は、教科書検定制度をもっと詳しく描きたいと考えていました。でも、次々に取材拒否に遭ってしまって、関係者のインタビューがまったく取れなかったんです。

──関係者というと……。

斉加 教科書編集者や文科省の教科書調査官はもちろん、教科書を印刷している会社からも取材は断られました。「発行元の了解が得られない」とか「コロナ禍なので取材は受けられない」とか。
 特に、検定意見を付ける側の調査官には、どういう気持ちで意見を付けているのかをぜひ聞いてみたいと思っていました。教科書執筆者や編集者の側からすれば、調査官は「権力者」に見える。でも実際には、調査官は調査官でびくびくしながら意見を書いているという話も聞くんです。過去には、検定意見の内容について調査官個人を攻撃するような雑誌記事が出たこともあるので、自分が攻撃対象になったり、「この検定意見はおかしい」と裁判になったりするようなことがないようにと、相当迷いながら仕事をされているようなんですね。

──それは聞いてみたいですね。

斉加 そうでしょう。でも、結局は調査官に対する取材は一切できませんでした。インタビューなしで、調査官の姿を遠くから撮るだけでもダメ。調査官が教科書編集者とのやりとりをする部屋や、その看板の撮影も拒否されました。先ほどお話しした06年の沖縄戦の問題のときは撮影できており、局にも映像が残っているのですが……。
 文科省は、表向きは「教科書は民間出版社の創意工夫でつくられる」と言っていますが、それができるような空気ではないと感じます。制作に関わる人みんなが、文科省の顔色をうかがい、さらにはその向こうにいる政治家の顔色をうかがっているそんな教科書が、子どもたちのほうを向いてつくられているといえるのかという疑問がわきました
 そんなわけで、教科書検定の問題を深掘りしたいという構想は、方向を変えるしかありませんでした。それでも、日本学術会議の問題をはじめ、改めて50分番組を1本作れるくらいの追加取材はしましたね。


     (『教育と愛国』より。学び舎の教科書を採用した学校に
      寄せられた抗議はがき
      (c)2022映画「教育と愛国」製作委員会)


大阪は政治主導の教育改革の「実験台」だった

──最初のテレビ版の取材からは5年が経っているわけですが、取材の中で状況の変化は感じられましたか。

斉加 教育をめぐる状況は、明らかに悪い方向に進んでいると実感しました。コロナ禍も影響しているのでしょうが、それだけではないと思っています。

──映画の中に出てきた、大阪府市で次々に教育に関する条例が可決され、政治的介入が強められていく様子が非常に怖くて印象的だったのですが、その大阪でも教員不足などの問題が顕在化してきていますね。

斉加 橋下徹さんが大阪府知事に就任した08年以降、大阪では維新府政・市政の下で政治主導の教育改革が押し進められてきました首長や議会の権限を強め、市場原理を導入して学校間の競争を促し、教育委員会制度を変えて教育現場の管理を強化し……。府知事に就任して間もないころの橋下さんに「知事のやろうとしていることは教育ではなくて政治ですよ」とおっしゃった教育委員の方がいたのですが、その後起こってきたのはまさに「教育が政治の道具にされる」ということだったと思います。
 ただ、教育現場の変化というのは、法律が変わったからといってすぐに表れるものではありません。現場の先生たちはやっぱり子どもたちのほうを見ていますし、悪い方向に行かないように、なんとか踏ん張ろうとする。それでも踏ん張りきれなくなったころに、じわじわと変化が現れてくるものなんです。
 教育改革が始まった当時も、府市の教育委員を務める先生方が口々に、「維新がやろうとしている『改革』の結果は、5年後10年後に現れてくる」とおっしゃっていましたが、本当にそのとおりになった。この10年で、大阪の教育現場は激変したし疲弊してきたと感じています。

──それは、大阪だけの問題ではないように思います。同じようなことが、少し遅れて全国で起こりつつあるのではないでしょうか。

斉加 そうだと思います。教育委員会制度を見直し、首長の権限を強化する地方教育行政法の改正案が国会で14年に可決されたとき、橋下さんは「国が大阪に追いついた」と賞賛しました。そのように、政治主導の教育改革の先兵、実験台の役割を、大阪が果たしてきたということなんだと私は見ています。

──そうした流れの根っこにあるのは、やはり映画の中でも触れられていた教育基本法の改正でしょうか。改正されたのは今から15年以上前、06年のことですが……。

斉加 もちろんです。教育目標に「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」という「愛国心条項」が加えられ、教育は「不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接的に責任を負って行われるべき」という、子どもの学習権をしっかりと保障していた条文が、「不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべき」と、法律に従ってさえいればそれでいいとも取れる条文に書き換えられてしまった。その影響は大きいと思います。
 ただ、ここでも現場はすぐには変わりません。第一次安倍政権のときに改定されて、そこから5年以上経った第二次安倍政権以降に、いよいよ改正の思惑が強く表れてきているということだと思います。


政治の教育への介入の先には「9条改正」がある

──「思惑」とは、政治の教育への介入を強めていくということだと思いますが、その最終的な目的はどこにあると思われますか。

斉加 私が検定合格した道徳の教科書を最初に読んだときの印象は、学習指導要領にある「道徳教育の内容」の中でも、「集団や社会とのかかわりに関すること」という徳目が非常に重視されているということでした。具体的には、規律やルールを守る、協調性を持ってみんなと仲良くする……つまりは、既存の秩序を守りましょう、ということです。
 ここが強調されるということは、既存の社会秩序をそのまま維持していくという、権力者にとって都合のいい方向に子どもたちを誘導しかねない。そのために道徳教育が使われようとしているんじゃないか、と思いました。
 たとえば、何社もの道徳教科書に出てくる話で「かぼちゃのつる」ってご存じですか。

──はい。畑で育っているかぼちゃがどんどんつるを伸ばして、やがて畑の外にまで伸びていこうとする。周りのミツバチやチョウも「だめだよ」と止めるけれど、かぼちゃは耳を貸そうとしない。結局、道路にはみ出たつるが車にひかれてしまい、かぼちゃは「痛い、痛い」と泣く……というお話ですよね。

斉加 あり得ないと思いました。ルールを破って道路にはみ出したから、車にひかれて罰を受けても当然ということですよね。とんでもない、つるを伸ばすのが得意なんだったら、どんどん伸ばしてみんなを喜ばせてあげてね、というのが本来の教育なんじゃないかと私は思うんですけど。

──政府の意向に逆らわない、政府の思うとおりに動かしやすい国民をつくるための教育をしようとしているように思えます。

斉加 そのための仕組みづくりがされていると感じますね。日本学術会議の問題だってそうでしょう。学術会議は戦後2度、科学者は国家のしもべにならない、戦争につながるような研究はしないと表明してきている機関ですから、今の与党政治が目指す方向とは異なる意見の人たちを排斥、排除しようとしているということだと思います。
 また、14年には教科書検定基準の変更が行われ、近現代史について政府見解に沿った記述が求められるようになりました。学問というものは、研究が積み上げられ、検証に検証を重ねてでき上がっていくものです。その学問の書であるはずの教科書に、時の政府の見解に沿った内容を書き込めというのは、教科書を教科書でなくせと言っているようなものです。

     (『教育と愛国』より。(c)2022映画「教育と愛国」製作委員会)

──結果として、一部の教科書では「従軍慰安婦」「強制連行」といった用語の書き換えも行われました


用語の書き換え……14年の教科書検定基準の変更を根拠に、菅内閣は21年4月、「『従軍慰安婦』または『いわゆる従軍慰安婦』ではなく、単に『慰安婦』という用語を用いることが適切」「(朝鮮半島から日本に連れてこられた人々について)『強制連行された』もしくは『強制的に連行された』または『連行された』と一括りに表現することは、適切ではない」などとする答弁書を閣議決定した。これを受け、この年の教科書検定では、一部の教科書会社が高校の地理歴史・公民などの教科書の記述を「従軍慰安婦」を「慰安婦」、「強制連行」を「徴用」などと修正した。


斉加 一つの国の歴史をさかのぼれば、そこには必ず加害と被害の両面があります。その加害の面から目を背けようとする流れが強まったとき、行き着く先は「加害を反省しない」ということ。それは周辺諸国との対立を呼び込み、戦争へと向かってしまう恐れすらあると思います。
 自分の生まれ育った地域や国が好きだという気持ちは、自然に生まれてくる分にはいいけれど、国家権力が主導して「愛国」と叫びだしたとたん、他の国、他の民族を否定して排斥することにつながり、戦争の芽を育てる土壌になっていきます。だから、差別的な言説は決して放置してはいけないし、差別や偏見を解消するためにも歴史を多角的に理解することが必要なはずです。それなのに、「ニッポンは素晴らしい」というような単純な歴史観に染まった人たちの声が大きくなっている現状はとても危うい。歴史を政治の道具にする「歴史戦」という言葉が、公共放送の電波にそのまま乗るという事態も、「ここまで来たのか」と思いました。
 そう考えていくと、こうした教育への政治の介入の先には、やはり憲法、それも9条を変えたいという狙いがあるのではないかと感じます。そもそも、01年に産経新聞に掲載された記事によれば、教育基本法改正は憲法改正と不可分だと、中曽根元首相が明言しているんです。「教育基本法はその(改憲の)根を作る意味で、憲法に先駆けて改正しなくてはならない」とはっきり言っている。その意向を受けた安倍さんが、そこから5年後に教育基本法改正を実行することになるわけです。
 そして、その安倍さんが支援していた「育鵬社」の歴史教科書では、不自然なほど天皇の存在が強調されていたり、平和主義を解説すると同時に自衛隊の役割が賞賛されていたりする。断言はできませんが、教科書に圧力をかけてきた人たちの中には、やはり憲法を、9条を変えたいという思惑があるのではないでしょうか。


歴史戦……「中国・韓国などが、慰安婦問題をはじめとする嘘の歴史認識を世界に広め、日本を不当に攻撃している」という前提のもと、「それを黙って受け入れるのでなく、戦って歴史認識を正していくべきだ」という考え方を意味する言葉。これまでにも一部メディアやインターネット上で用いられてきたが、22年1月にNHKが佐渡金山世界文化遺産登録問題について報じるニュース番組の中で「歴史戦」に言及。官邸が政権の歴史認識に基づき歴史的事実を集めて検証を進める「歴史戦チーム」を作って活動している、などと述べた。


報道ではなく「ビジネスの論理」で動いているメディア

──さて、斉加さんは4月に『何が記者を殺すのか 大阪発ドキュメンタリーの現場から』(集英社新書)という著書も出版されました。在阪のメディア、特にテレビについては、吉村大阪府知事はじめ「維新の会」の政治家が連日のように出演していることが指摘されるなど、その公平性、公共性に疑問を呈する声も強まっています。その中で仕事をしていてどう感じておられますか。

斉加 かつての戦争のとき、国営の放送局は当局発表を一切検証することなく、そのまま垂れ流し続けました。いわゆる大本営発表ですね。実際には戦局が不利になっているのに、日本は勝っているんだと報じ、戦争を煽り続けた。民間放送は、そのことへの反省から生まれたのだから、きっちりと権力を監視し、戦争につながる芽を摘んでいかなくてはならない。そうして平和な社会を築いていくためにこそ、私たちの存在があるんだ──。私はずっと、局の大先輩たちからそう聞かされてきました。
 だから、政治家の人気が高まり、支持率が上がれば上がるほどきっちりと監視をしていかなければならない、その政治家の政策が本当に府民や市民、国民のためになっているかをチェックしていかなくてはならないと考えてきました。その仕事のやり方は、入社してから30年あまり、ずっと変わっていないつもりです。
 ただ、周りのほうが変わったと感じることがあります。

──それは、どのようなことでしょう?

斉加 かつては、報道番組は視聴率の話なんてするな、数字は二の次で、今伝えるべきニュースは何かをまず考えろと言われました。現場を見て感じて、今の社会に必要なニュースを探してくるのが報道記者やディレクターの役割なんだと。私も、番組の企画を立てるときに視聴率を優先するようなことは一度もしてきませんでした
 それがいつからか、これなら視聴率を取れるとか、ネットに記事を出したときにページビューを稼げるとか、そういう言い方がされるようになってきた。「人気がある政治家がいるのなら、どんどんテレビに出てもらえばギャラなしで情報番組の枠が埋まって視聴率も取れる」と考える、そういうビジネスの論理が幅を利かせるようになったと感じています。

──メディアが、報道ではなくてビジネスの論理で動いている……。

斉加 そうした、視聴率を取れるのがいい番組だという価値観に現場が染まってしまったら、言論空間はどんどん歪んでいってしまう。お金のある人、力のある人が言論空間を掌握する世界になっていってしまうのではないでしょうか。それはとどのつまり、穏やかに暮らす普通の人々を苦しめることになっていくと思います。

──そうした空気の中で「視聴率のためではない」お仕事をしようとすることには、難しさもあると思います。斉加さんご自身、取材する中で政治家から罵倒されたり、インターネット上のバッシングにさらされたりといった経験をされていますが、怖いと感じることはありませんか。

斉加 相手が何者なのか「分からない」ことのほうが怖いですね。インターネット上でヘイトスピーチを繰り返している人たちの取材をしたときも、実際に会うまでは「どんな人たちなんだろう」と少し怖さもあったのですが、相手の姿がはっきりと見えることで怖さが薄まると感じました。自分自身にも、取材に行くのが怖いと感じるときは「取材すれば怖くなくなる」と言い聞かせています。
 それに、差別やヘイトをばらまく人や政治家もちろん怖いけれど、もっと怖いのはそれを支持する人たちです。みんなが無視していれば、その人は差別をばらまくこともできなくなるはずだし、政治家なら選挙で落ちて消えていくはずなのに、そうはなっていませんよね。そこがとても怖いと思っています。

──政治家が非常に差別的な発言をしても、なんとなくうやむやになって終わってしまう、という現状があります。

斉加 心の中で「何かおかしい」と思っている人たちも、それをなかなか口には出さないし、出せない。それが今の社会を覆っている閉塞感の一番の原因ではないでしょうか。だから今回の映画も、見て「何か変だな」「引っかかるな」と思う場面があれば、それについて周りの人と語り合ってほしい、ほんの少しでも社会に対してもの申してほしいと考えています。今こそいろんな人たちが「それおかしいよね」と言わなければ、社会全体がもっと悪い方向へ行きかねないと思うんです。
 もう私たちは、その悪い方向への「曲がり角」を曲がってしまったのではないかと迷いながら、それでもまだ間に合うかもしれない、という思いもあってこの映画を作りました。現場の教員のみなさん、教員を目指す若い人たち、子育て世代……幅広い層のいろんな方たちに見て、考えてほしいと思っています。

(取材・構成/仲藤里美)



映画『教育と愛国』
東京、大阪など全国順次公開中
公式サイト https://www.mbs.jp/kyoiku-aikoku/



斉加尚代(さいか・ひさよ) 1987年に毎日放送入社後、報道記者を経て2015年からドキュメンタリー担当ディレクター。担当番組に『なぜペンをとるのか──沖縄の新聞記者たち』『沖縄 さまよう木霊──基地反対運動の素顔』『バッシング──その発信源の背後に何が』など。著書に『教育と愛国──誰が教室を窒息させるのか』(岩波書店)『何が記者を殺すのか 大阪発ドキュメンタリーの現場から』(集英社新書)がある。
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●《地元テレビはヒレ伏しヨイショの連続》…一方、ある記者は《「こんな状態でも、ひるんじゃダメよ」――。橋下市長より大人だ》った

2022年06月02日 00時00分05秒 | Weblog

[↑ 誰がメディアを殺すのか 毎日放送ディレクター・斉加尚代さん (朝日新聞、2022年5月19日)]


(2022年05月21日[土])
アサヒコムの記事【(インタビュー)萎縮するメディア 毎日放送ディレクター・斉加尚代さん】(https://www.asahi.com/articles/ASQ5L31LFQ5HPTIL01B.html)。

 《政治家の記者会見で、激しいやりとりが減ったと感じる。そんな中、著書「何が記者を殺すのか」を出し、上映中のドキュメンタリー映画「教育と愛国」で監督を務めた毎日放送(MBS)ディレクターの斉加尚代さん。「萎縮するメディア」の背景には何があるのか。足を使って現場を回り続ける記者の先輩に、話を聞いた》。

   『●斉加尚代監督『教育と愛国』:《教育への政治支配が続けば、日本の
     学校は…政府プロパガンダを信じ込ませる場に堕す》(前川喜平さん)
   『●『教育と愛国』《危うさに気づいた…。監督で毎日放送の斉加尚代さんは、
         ゆがむ教育現場のリアルを伝え「教科書は誰のものか」を問う》

  斉加尚代監督『教育と愛国』――― 前川喜平さん《『教育と愛国』(斉加尚代監督)の試写を見た。従軍慰安婦、集団自決、強制連行を巡る教科書検定などへの政治的圧力、教育右傾化をえぐり出したドキュメンタリー》《教育への政治支配が進めば、日本の学校はロシアや中国のように政府プロパガンダを信じ込ませる場に堕すだろう》。また、《「主戦場」を見た人には「教育と愛国」を見ることもおすすめします》とも。

   『●映画『主戦場』で、〝否定派〟の論客の皆さん《杉田水脈衆院議員や
     ケント・ギルバート氏…藤岡信勝氏、テキサス親父…櫻井よしこ氏》は…

 お維・橋下徹初代大阪「ト」知事と戦った記者…【橋下氏、女性記者を“罵倒”つるし上げ!君が代条例の波紋】。斉加尚代MBS記者と、《地元テレビはヒレ伏しヨイショの連続》《ハシズム》で当時絶好調の橋本徹元大阪「ト」知事・当時大阪市長とのやり取りが秀逸。

   『●対橋下元〝ト〟知事、どうすべきか?

 どんなやり取りだったのか?
 《大阪市の橋下徹市長(42)が、8日の登庁時に記者団のぶら下がり取材を受け、民放の女性記者と20分以上にわたって舌戦を展開した。大阪府が施行した「君が代起立条例」についての記者の質問に、「質問に答えなければ回答はしない」「あまりにも勉強不足」などと激怒。「不細工な取材するな」と集中砲火を浴びせた》《…などと面罵した。その後も、女性記者から「市長、ちょっと落ち着いて…」と言われると、橋下市長は「君のほうこそ落ち着け!」「(質問から)逃げてますよね?」「逃げてないよ!」などとやり返し、売り言葉に買い言葉状態。君が代の必要性を改めて主張したうえで、橋下市長は「社歌はあるんですか? ない? だからこんな記者になるんだ」と記者の姿勢を批判した》。

 さらに、後日談。【橋下を激怒させた毎日放送女性記者 後日談】。
 《人の弱点を見つけたら、その一点を突破口に徹底的に叩く橋下のやり口弁護士時代そのものだが、逆に反撃されるとムキになってやり返す。まさに子供のケンカだが、こんなやりとりを橋下はなんと30分近くも続けたのだから、呆れるこんな男が次の総理候補? 冗談か寝言でしかない。ちなみに、市長に食い下がった女性記者は番記者と違う。MBSが特番として制作した「君が代条例」への取材と、春採用の新人記者研修の一環として市長の囲み取材に加わったそうだ。市長との舌戦後、新人記者たちにこんなアドバイスをしていたという。

   「こんな状態でも、ひるんじゃダメよ」――。

 橋下市長より大人だ》。

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https://www.asahi.com/articles/ASQ5L31LFQ5HPTIL01B.html

誰がメディアを殺すのか 「反日」と叩かれた私が見た萎縮の現場
聞き手・宮崎亮 
2022年5月19日 11時00分

     (映画「教育と愛国」のポスターの前に立つMBSの
      斉加尚代さん=2022年5月18日午後、大阪市淀川区
      十三本町1丁目、西畑志朗撮影)

 政治家の記者会見で、激しいやりとりが減ったと感じる。そんな中、著書「何が記者を殺すのか」を出し、上映中のドキュメンタリー映画「教育と愛国」で監督を務めた毎日放送(MBS)ディレクターの斉加尚代さん。「萎縮するメディア」の背景には何があるのか。足を使って現場を回り続ける記者の先輩に、話を聞いた。

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毎日放送ディレクター 斉加尚代さん

 1987年に毎日放送入社。報道記者を経て2015年から現職。テレビ版「教育と愛国」でギャラクシー賞テレビ部門大賞。
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 ――映画「教育と愛国」では、政治の力で変化させられていく教育現場が描かれていますね。

 「この映画は、2017年に放送したドキュメンタリーを元に追加取材を加えたものです。私は大阪で長く教育現場を取材してきましたが、10年に大阪維新の会ができて以降、政治主導の教育改革が進みました。その変化が思いのほか速いなと感じていたころ、国が道徳を教科化することになった。そして戦後初めて作られた小学校の道徳教科書で、『パン屋』を『和菓子屋』に書き換える、ということが起きました」

 「一見、滑稽な書き換えです。文部科学省の教科書検定を受け、教科書会社が修正したものでしたが、06年度の高校日本史の教科書検定を受け、沖縄戦の集団自決について『軍の強制』との記述が削られた問題とつながっていると私は感じました(その後、『軍の関与』などとする記述が復活)。それで教科書会社へ取材を申し込みました」

 ――どのような反応でしたか?

 「ほとんどの社から『教育と愛国というテーマでは難しい』などと断られました。ある社の編集者が受けてくれたのですが、それも放送前にストップがかかりました。その方の話で印象的だったのが、文科省から『スタンダードな授業ができるように』と要請されたという話でした。スタンダードとは、発問からまとめまでどの授業でも同じように進める、という意味です。これまで取材してきた先生たちの『授業は生き物。クラスが違えば授業も違う』という実践とは、かなりズレがあるなと感じました」

 「そんな中、自虐史観の克服を掲げる『新しい歴史教科書をつくる会』系の育鵬社で歴史教科書の代表執筆者を務める歴史学者・伊藤隆さんが取材を受けてくれました。話が熱を帯びてきたところで、育鵬社の教科書が目指すものを尋ねると、伊藤さんは『ちゃんとした日本人を作ること』とおっしゃいました」

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「教育と愛国」は、ドキュメンタリー映画に好意的な映画館からも上映を断られたといいます。大阪市長時代の橋下徹さんへの取材では一時、「反日記者」とネットで叩かれたこともある斉加尚代さん。記事後半では、政治や経済との関係を踏まえ、メディアが萎縮する構図をさらに解き明かしていきます。
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 ――ちゃんとした、ですか。

 「『左翼ではない』と断言さ………
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