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●《事実誤認》はどちらか? 《権力を監視し、政府が隠そうとする事実を明らかにするのは報道機関の使命》

2019年03月01日 00時00分22秒 | Weblog

『追及力 権力の暴走を食い止める』(望月衣塑子×森ゆうこ著)…《今、ジャーナリズムと野党の…》↑]



東京新聞の社説【記者会見の質問 知る権利を守るために】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019021902000183.html)。
沖縄タイムスの【社説[官房長官会見]質問封じは許されない】(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/387956)。

 《記者会見での記者の質問は、国民の知る権利を守るために、報道機関として当然の行為だ。権力側が、自らに都合の悪い質問をする記者を排除しようとするのなら、断じて看過することはできない》。
 《事の発端は昨年12月26日の官房長官会見。東京新聞の望月衣塑子記者が、名護市辺野古の新基地建設で同14日から始まった土砂投入に関し「埋め立ての現場では今、赤土が広がっている。琉球セメントは県の調査を拒否し、沖縄防衛局が実態把握できていない」などと質問した。これに対し菅官房長官は「そんなことありません」と一言返しただけだった》。

   『●《官邸の意に沿わない記者を排除…
     明らかに記者の質問の権利を制限し、国民の『知る権利』を狭める…》
    「阿部岳記者は、《民主主義社会における報道はプロパガンダとは違う
     権力から独立し、監視するのが役割
     評価するのは権力ではなく、読者や視聴者だけだ》と言います。
     最低の官房長官は、市民の《評価》を妨害しようとしています。
     「事実誤認」「度重なる問題行為」かどうかは《読者や視聴者》が
     判断することで、最低の官房長官がやるべき事じゃない」

   『●《事実誤認》というフェイクで記者を会見から締め出す前に… 
                 アベ様や最低の官房長官こそ《事実誤認》?
   『●事実誤認の常習犯…《聞きたくない質問、
      都合の悪い質問を遮るような、その先に国民がいることを無視…》

 「事実誤認」の常習犯は一体どちらか? 《権力を監視し、政府が隠そうとする事実を明らかにするのは報道機関の使命》。

   『●阿部岳さん、《基地問題への見解の違いも…
      デマで攻撃された因縁も関係ない。今回は…産経の側に立つ》
    「…と、アベ様の広報紙・産経新聞は紙面で《沖縄2紙》を
     擁護できるだろうか? 《取材に人数制限があり、日本のメディアは
     抽選で代表5社を選んだ。ところが、このうち》朝日《だけ認めない、
     と中国政府が通告した》時に、アベ様の広報紙・産経新聞はどうする?

 それにしても、だらしのない内閣記者会の政治部記者たち。
 ホワイトハウス記者会では、《いっしょになって会見をボイコットホワイトハウス記者会も抗議声明を発表》、《記者たちは食い下がって何度も質問を繰り返す》。一方、ニッポンでも、《▼8月末、日中高官が北京で会談した。取材に人数制限があり、日本のメディアは抽選で代表5社を選んだ。ところが、このうち産経だけ認めない、と中国政府が通告した。これまでも繰り返し狙い撃ちにしてきた ▼各社は足並みをそろえて取材を中止。産経や日本政府は抗議した》。
 内閣記者会の政治部記者、いずれの社も、…《今回は…東京新聞の側に立つ》べきじゃないのですか?

   『●「紙面や番組ではっきりと「嘘つき」…
      「最悪の返答」と批判を浴びせ」る矜持もなく…民主主義の危機
    《対して米国のメディアはどうか。トランプ政権のホワイトハウス報道官
     だったショーン・スパイサー氏が政権に批判的なCNNや
     ニューヨーク・タイムズなどを会見から締め出した際には、AP通信や
     タイム誌はいっしょになって会見をボイコットホワイトハウス記者会も
     抗議声明を発表した。もちろん、スパイサー氏が菅官房長官と同様に
     まともに質問に答えず、批判的なメディアには強権的な姿勢を見せても、
     記者たちは食い下がって何度も質問を繰り返す。スパイサー氏が詭弁を
     振りかざした際には露骨にシラけた表情を向け、紙面や番組ではっきりと
     「嘘つき」「バカ」「大バカ」「最悪の返答」と批判を浴びせている。これこそが
     不誠実な政権担当者へのジャーナリズムの本来のあり方ではないのか》。

 日刊ゲンダイの記事【官邸文書申し入れ問題 記者イジメなぜ内閣記者会ダンマリ】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/247876)によると、《首相官邸が昨年12月、東京新聞記者の質問を「事実誤認」などとして、内閣記者会に対して「正確な事実を踏まえた質問」をするよう文書で申し入れた問題…申し入れに対し、新聞労連は5日に決して容認できないと抗議する声明を発表したものの、“現場”となった肝心要の内閣記者会はダンマリを決め込んでいる。会見の場で菅官房長官に脅し、スカシまがいの対応をされ、上村報道室長には質問を制限される。そんな状況にジワジワ追い詰められる東京新聞記者を目の前で見ていれば、菅氏や上村氏に向かって「おかしいだろう」と詰め寄るのがジャーナリストというものだろう》。
 レイバーネットの記事【官邸による望月記者への質問妨害を許さない!〜学者・文化人・ジャーナリストが立ち上がる】(http://www.labornetjp.org/news/2019/0219shasin)によると、《2月19日参院議員会館で「官邸による取材・報道の自由侵害に抗議する緊急声明」発表の会見が行われた。50人以上のメディアが詰めかけた…服部孝章さんは「内閣記者会が沈黙していることがおかしいメディアが忖度し安倍を支えているいまメディア全体のあり方が問われている」と厳しく批判…梓澤弁護士は「日本のメディアは一人ひとりが会社員になってしまっていると言われている。会社組織の価値観を抜け出し、新聞記者の初心に返って個人で考えてほしい。一人ひとりの良心が問われている」と熱く語った》

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019021902000183.html

【社説】
記者会見の質問 知る権利を守るために
2019年2月19日

 記者会見での記者の質問は、国民の知る権利を守るために、報道機関として当然の行為だ。権力側が、自らに都合の悪い質問をする記者を排除しようとするのなら、断じて看過することはできない

 なぜ今、こうしたことに言及せざるを得ないのか、経緯を振り返る必要があるだろう。

 発端は本紙記者が昨年十二月、菅義偉官房長官の記者会見で、沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設について「埋め立て現場では今、赤土が広がっており、沖縄防衛局が実態を把握できていない」と質問したことだ。

 首相官邸の報道室長は官邸を取材する報道機関でつくる「内閣記者会」宛てに文書で、質問を「事実誤認がある」「度重なる問題行為」とし「事実を踏まえた質問」をするよう申し入れた。

 また報道室長はたびたび、本紙記者が質問している途中に「質問は簡潔にお願いします」などと催促したり、遮ろうとしている

 しかし、質問は本紙の取材、報道による事実関係に基づいたものであり、決して誤認ではない

 もし、政府が事実誤認と考えるなら、会見の場で事実関係を提示し、否定すれば済むだけの話だ

 菅氏は国会で「会見の様子は配信され、国内外で直ちに視聴できる。事実に基づかない質問が行われると、内外の幅広い視聴者に誤った事実認識が拡散される」と答弁したが、政府の反論が正しければ、誤った事実認識が拡散されることはないのではないか。

 憲法は「表現の自由」を基本的人権の一つとして、国民の知る権利を保障している。

 官邸報道室は申し入れに「質問権や知る権利を制限する意図は全くない」としているが、政府に都合の悪い質問をしないよう期待しているのなら見過ごせない。

 申し入れがあっても、質問を制限されないことは、知る権利を尊重する立場からは当然だ。

 菅氏はかつて会見で安倍晋三首相の友人が理事長を務める加計学園の獣医学部新設を「総理の意向だ」と伝えられたとする文部科学省文書を「怪文書みたいではないか」と語ったことがある。

 その後、文書は存在することが分かった政府が常に正しいことを明らかにするとは限らない。一般に権力は、都合の悪いことは隠すというのが歴史の教訓である。

 権力を監視し、政府が隠そうとする事実を明らかにするのは報道機関の使命だ。私たち自身、あらためて肝に銘じたい。
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https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/387956

社説[官房長官会見]質問封じは許されない
2019年2月22日 07:40

 首相官邸が報道室長名で、菅義偉官房長官の会見で特定の記者の質問を「事実誤認」とし、文書で内閣記者会に「問題意識の共有」を申し入れていた。記者会は「質問を制限することはできない」と伝えたほか、新聞社の労働組合でつくる「新聞労連」は「申し入れは国民の『知る権利』を狭めるもので、決して容認できない」との声明を発表した。申し入れは、記者が質問する権利を制限しようとする行為で、撤回すべきだ。

 事の発端は昨年12月26日の官房長官会見。東京新聞の望月衣塑子(いそこ)記者が、名護市辺野古の新基地建設で同14日から始まった土砂投入に関し「埋め立ての現場では今、赤土が広がっている。琉球セメントは県の調査を拒否し、沖縄防衛局が実態把握できていない」などと質問した。これに対し菅官房長官はそんなことありませんと一言返しただけだった。

 官邸側が記者会に「沖縄防衛局は埋め立て材(土砂)が仕様書通りの材料と確認している」など望月記者の質問は事実誤認とする申し入れ書を提出したのは2日後だ。

 しかし実際には、土砂投入後「性状が確認できない土砂が投入されている恐れがある」として調査を求めた県に、防衛局は「(土砂は)確認した上で使用している」と回答し、立ち入り調査を拒否している。望月記者の質問が事実誤認との指摘は当たらない。

 官邸の申し入れは、気に入らない質問をする記者を排除し、それに対して記者会の同意を求めることに等しく、著しく不適切だ

    ■    ■

 検証記事を掲載した東京新聞によると、菅官房長官の記者会見では約1年半にわたり、望月記者の質問を、会見の進行役である報道室長が何度も遮ったり、質問を制限したりする行為が繰り返されている

 今回の申し入れが、こうした異様な会見の延長線上にあることは明らかだ。

 西村康稔官房副長官は申し入れについて「質問権や知る権利を制限する意図は全くないと官邸報道室長から報告を受けている」と釈明した。

 だが、望月記者は「文書は私や社への精神的圧力だ」と反論している。

 政府は自由党の山本太郎参院議員の質問主意書に対し「一方的に質問を制限できる立場になく、その意図もない」とする一方、「質問を簡潔にまとめたり、質問数を絞ったりするよう協力を求めることはある」との答弁書を閣議決定した。

 質問制限を事実上容認する回答で到底納得できない。

    ■    ■

 安倍晋三政権下では、河野太郎外相が、記者会見で日ロ平和条約交渉についての記者の質問を繰り返し無視する前代未聞の対応で批判を浴びたことも記憶に新しい。政権の中に、国民への説明責任を軽視する雰囲気がはびこっていないか。

 記者会見は事実確認をする場でもあり、報道機関の務めは権力を監視することだ。記者の質問に応じるのは、官邸や政治家の義務であるということを肝に銘じるべきだ。
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●アベ様の政権の「暴走」許す、批判精神無き、「牙」無きメディア

2015年01月22日 00時00分16秒 | Weblog


マガジン9』の記事【柴田鉄治のメディア時評:昨年は安倍政権の『暴走』がまかり通った年、メディアのチェック機能は弱かった】(http://www.magazine9.jp/article/shibata/17314/)。

 「特定秘密保護法から始まって武器輸出三原則の撤廃、集団的自衛権の行使容認を閣議決定、さらに長期政権の維持を目指して『大義なき解散・総選挙』を断行して圧勝したのだから、「やりたいことは全部やった」という状況は否定できまい」。
 メディアが「チェック機能」を果たすどころか・・・・・・『アベ様のNHK』や『産経』なんて酷いモノ。ナベツネ氏の『読売』もね。 

   ●原発再稼働・もんじゅ推進を無批判に放送できる
                 公正中立な公共放送「アベ様のNHK」
   『●トップからして腐敗したメディア: 「きょうの安倍将軍」「安倍様のNHK」
   『●ジャーナリズムの矜持無きこんな「公共」放送なんて要らない!
   『●内閣法制局、NHK、秘密保護法、消費税増税・・・、
                「肝いり人事」という安倍首相の暴走人事
   『●「治安維持法」を止めるために:
         「アベ様のNHK」などマスメディアだけに任せてはおれない
   『●「アベ様のNHK」に、なぜ「皆様」が受信料を支払うのでしょうか?
   『●「鼻血問題」: 圧力に屈した「アベ様のNHK」
   『●「一体誰が朝日の記者に吉田調書を流したのか」
           ・・・・・・犯人捜しなどやってる暇があるのか?
   『●東京電力原発人災鼻血問題: 風評被害に矮小化していて良いのか?
   『●「鼻血」「死の街」問題と「金目でしょ」発言に対するマスコミ対応の落差
   『●(非)特定秘密「隠蔽」法を大歓迎:  
       「たかり記者」だった?読売新聞ナベツネ氏は正気なのでしょうか?
   『●「政権批判」だったら歌うなとでも?  
        「アベ様のNHK」は「放送禁止歌」にでもしますか?


 アベ様の露骨なメディアへのプレッシャーの賜物。いまやメディアに「政権チェック」「政権批判」の気概もなく、「牙」もなし。

   『●アベ様は「報道がそれで抑圧される、
       そんな例があったら私は辞める」と明言・・・ETV番組改編問題は?


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http://www.magazine9.jp/article/shibata/17314/

2015年1月14日up
柴田鉄治のメディア時評

その月に書かれた新聞やテレビ、雑誌などから、ジャーナリスト柴田さんが気になったいくつかの事柄を取り上げて、論評していきます。


昨年は安倍政権の『暴走』がまかり通った年、メディアのチェック機能は弱かった

 年末に体調を崩し、緊急入院したため2014年を総括する「12月のメディア時評」を休載させていただいた。幸い年明けに退院できたので、遅ればせながら「2014年を総括するメディア時評」をお送りする。

   *

 2014年はどんな年だったか。私の見方は「安倍政権の暴走がまかり通った年だった」という表現が一番ぴったりだと思っている。いや、私だけでなく、安倍政権を強く支持している人たちだって、『暴走』という言葉を除けば、この見方に反対はしないのではあるまいか。

 特定秘密保護法から始まって武器輸出三原則の撤廃、集団的自衛権の行使容認を閣議決定、さらに長期政権の維持を目指して『大義なき解散・総選挙』を断行して圧勝したのだから、「やりたいことは全部やった」という状況は否定できまい。

 安倍首相がやりたかったことをひと言でいうと、「戦後レジームからの脱却」、つまり「戦前の日本はよかった、戦後の日本はよくないという歴史観を日本中に広めたいというものだろう。この歴史観に同調する人たちが、「戦前の日本はよくなかった」という人たちを「自虐史観だ」といって攻撃するのも、その一環だと考えれば分かりやすい。

 この「歴史観の社会への浸透」というのは、一見どこまで広がったかは分かりにくいものだから、安倍首相の悲願をもっと具体的で分かりやすい言葉で言えば、「憲法9条を改定したい」ということになろうか。

 この安倍首相の目指しているところを、東京新聞の「論点明示報道」の手法で表現すれば、「日本を戦争のできる国にしよう!」となるのではないか。論点明示報道というのは、その政策のもたらす結果を先取りし、一面トップの見出しで大きく表示しようという試みで、2014年度の日本ジャーナリスト会議のJCJ大賞に選ばれた手法である。

 たとえば、5月13日に首相の個人的諮問機関、安保法制懇が報告書を出し、首相が記者会見した時の東京新聞の一面トップの見出しは、「『戦地へ国民へ道」と踏み込み、また集団的自衛権行使容認の閣議決定の時には「海外で武力行使可能に」と他紙とは一味違う大見出しをうたったのである。

 東京新聞の頑張りはなかなかのものだったが、メディア全体の批判は必ずしも厳しいとは言えず、安倍政権の暴走はとまるどころか、「もうすべて実現したようなものだと見ている人も少なくないかもしれない。


安倍政権の『メディア懐柔策』が目立った年でもあった!

 安倍首相の悲願は「憲法9条の改定」だとしても、9条の改定についてはどの世論調査でも反対意見のほうが多いため、そう簡単にはいかない。そこで政府・与党では国民の間に反対意見の少ない「環境権」の導入などから提起して、地ならしをしてから9条の改定にかかろうと計画しているようだが、果たしてどうなるか。

 問題はメディアである。50~60年代はどの新聞も野党精神が旺盛だったが、70年代にまず産経新聞が政府・与党寄りに論調を転換し、次いで80年代に読売新聞があとを追い、「新聞論調の二極分化」の時代と呼ばれるようになった。

 その後、安全保障問題については日経新聞も同調し、「読売・産経・日経新聞 対 朝日・毎日・東京その他主要地方紙」という構図が生まれている。これは、原発政策などでも同じ構図になっている。

 国民の意識を変えるには、カギを握るのはメディアだろうと、2014年は安倍政権がメディアの懐柔策に全力を挙げた年でもあった。

 いや、正確に言えば就任早々からメディア戦略に並々ならぬ努力を重ねている。たとえばメディアのトップと個別に次々と会食を続けており、従来の政権が避けてきた各メディアとの個別のインタビューにも応じるという、新方式も平然と実行しはじめた。

 個別のメディアへの懐柔策は、2014年の年頭、まずNHKの会長人事への介入から着手した。会長の任命権をもつ経営委員への人事権を活用して、首相と同じような歴史観を持つ作家の百田尚樹氏や埼玉大学名誉教授の長谷川三千子氏らを経営委員に送り込み、籾井勝人会長の実現を図ったのである。

 籾井会長は就任の記者会見で「政府が右というものを左とは言えない」とか「従軍慰安婦問題は世界中どこにでもあった」とか、メディアのトップにはふさわしくない発言を繰り返し、各方面から批判の声が上がったが、政権に支えられていまだに辞任には至っていない。

 ただ、NHKのOBたちから「辞任を求める」署名が2千人を超えたというから相当なものだが、現役からの声が少ないのは残念だ。籾井会長の時代になってからNHKのニュースの時間に、安倍首相の出てくる場面が多くなったという声が聞かれるが、どうだろうか。

 メディアへの直接の介入と言えば、解散の前日、自民党は、荻生田光一・筆頭副幹事長と福井照・報道局長の連名で、NHKと在京の民放5局あてに「選挙報道の公平・中立を求めるという『要望書』を突きつけた。

 要望とはいっても、出演者の発言回数や時間、ゲスト出演者の選定、テーマ選び、街頭インタビューや資料映像の使い方まで、4項目にわたって細かく注意するよう求める内容で、過去の総選挙にも前例のない異例のものだという。

 本来なら受け取ったテレビ局がすぐに公表して問題にすべきものだと思うが、どこのテレビ局も取り上げず、1週間後にそれを知った新聞が報じて明るみに出た。要望書には「過去にあるテレビ局が政権交代を画策した偏向報道を行い、大きな社会問題になった事例もあった」とも示しており、テレビ局の選挙報道を牽制したものだ。

 立教大学の服部孝章教授(ジャーナリズム論)は「放送法の文言を引いて公平・中立を求めているが、実態はテレビ局への恫喝だ」と語っているが、私もそう思う。

 要望書が挙げている事例というのは、1993年の「テレビ朝日報道局長発言」を指しているのだろうが、これは民間放送連盟の内輪の会合で「非自民政権が誕生するように放送せよと指示した」などと産経新聞が報じ、記事を見て怒った自民党が国会喚問を要求したものだ。

 あとで分かった発言の全容と比べると、発言のごく一部をとらえ、しかも多少捻じ曲げて報じたものだったが、テレビ朝日の対応がおかしく、国会喚問に応じて平謝りに謝ってしまったため、自民党の追及が正しかったような印象を与えてしまった事例なのである。

 付言すれば、この産経新聞の記事が同年の新聞協会賞に選ばれたため、新聞協会賞の権威まで地に堕ちてしまったということまであった事例なのである。

 自民党にとっては過去の成功例として挙げたつもりかもしれないが、放送にある公平・中立の原則というのは、本来、政府に批判的な意見や少数意見などを報道するための武器として使われるものであろう。圧倒的な力を持つ側に厳しい姿勢でのぞむことこそメディアの使命であり、公平さなのである。


特定秘密保護法も、朝日新聞問題も安倍政権のメディア戦略?

 安倍政権が「戦争ができる国」への第一歩として特定秘密保護法の制定から着手したのも、メディア戦略の一環だと言えば言えよう。特定秘密保護法は、秘密を漏らした公務員を罰する法律のように見えて、実は、メディアを規制しようとするものだからだ。メディアが公務員から秘密を得ようとする行為を「教唆・煽動」として罰しようとしていることからも、それは明らかだ。

 このメディアを規制しようとする法律の制定に、賛成するメディアがあるとは信じられないことだが、日本の現状は残念ながらそうなのだ。安倍政権を全面的に支持する読売新聞と産経新聞が、特定秘密保護法にも賛成を表明しているのだ。

 ただ、唯一の救いは、他の安全保障問題などでは読売・産経と論調を同じくしている日経新聞が、特定秘密保護法については反対の態度を表明していることだ。したがって、新聞論調の二極分化とはいっても、特定秘密保護法に関しては地方紙のほとんどが反対しており、日本のメディアの圧倒的多数は「反対」という健全な姿をしているといっていいだろう。

 「何が秘密か、それが秘密だ」という言葉が象徴しているように、この法律違反で処罰される人が出てきても、恐らく裁判でも秘密の内容は明らかにされないのではないか、とさえ言われている。

 特定秘密保護法についてはその危険な側面がしだいに明らかになり、あと一歩で阻止できるかもしれないという状況が生まれたが、政府・与党がそれを察知して2013年暮れに強行採決により成立させた。反対運動の立ち上がりがもう一歩早かったら、と残念でならない。

 同法の施行は制定から1年後の2014年末だったので、同法をめぐる政府・与党とメディアとの闘いはこれからが本番だ。幸い、法律の施行で終わりではなく、「粘り強い闘いこそ」と反対運動を続けているメディアも少なくなく、メディアが安倍政権の思いのままに操られると思ったら間違いだろう。

 メディア問題を論じるなら2014年8月の朝日新聞の従軍慰安婦をめぐる検証報道から嵐のような「朝日バッシングが巻き起こり、それに幻惑されてか、次々と失態を繰り返した朝日新聞問題を避けて通るわけにはいかない。

 この問題については8月、9月のメディア時評で取り上げたので、繰り返すことはやめるが、第1は検証記事の出し方の失敗、「いまなぜ」の説明がなく、吉田清治証言を取り消したのに当然つくべき謝罪がないうえ、それに「今後も従来と同じ姿勢で従軍慰安婦報道を続ける」という決意表明を一緒にしたため開き直っているような印象を与えたこと。

 第2の失敗は、池上論文を没にした「信じられないような判断ミス」、第3は、原発「吉田調書」の記事を誤報でもないのに「虚報扱い」にして「記事を取り消し、社長も責任を取って退任」とした、将来の報道姿勢をも揺るがしかねない大失敗であり、いずれも朝日新聞が自ら招いたもので、サッカーでいう「オウン・ゴール」だったと私は思っていた。

 ところが、それから約3か月が過ぎ、朝日新聞社が委託した第三者委員会の報告書などが次々と出てきたこともあって、「オウン・ゴール」であるという性格は変わらないとしても、安倍政権のメディア戦略に朝日新聞も乗せられたのではないか、という疑いが色濃く浮かび上がってきた。

 たとえば、従軍慰安婦問題については強制連行を認めて謝罪した「河野官房長官談話」があり、安倍政権は河野談話を取り消したいのだが、そうもいかないので「河野談話の制作過程を検証して発表する」という策を取った。その内容に韓国が猛反発していたちょうどそういう時期に朝日新聞の検証報道は当たっていたのである。

 朝日新聞が20~30年前の吉田清治証言を取り消すと発表した途端に、「待ってました」とばかり、新聞、テレビ、週刊誌、月刊誌、ネット……が一斉に「朝日バッシング」に乗り出し、「朝日新聞の報道が慰安婦問題を浮かび上がらせ、日本を貶めたのだ」として「国賊!」「売国奴!」「反日!」といった罵声が乱れ飛んだのである。

 安倍政権から朝日新聞社に「過去の慰安婦報道について検証してほしい」という依頼があり、朝日新聞社がそれに応じるのを、安倍政権支持のメディアが手ぐすね引いて待っていた、と考えると分かりやすいのではあるまいか。

 それに、そう考えると、朝日新聞社の木村伊量社長が「従軍慰安婦報道の検証はやるが、絶対に謝罪はするな」と厳命したという不思議な事実が「なるほどな」と浮かび上がってくる。つまり、メディアとして過去の報道に問題があれば正すことはやるが、安倍政権の狙い通りには意地でも従わないぞ、というメディアの責任者としての思いが、記事を取り消しながら謝罪を拒否するという奇妙な命令を生み出してしまったのだ、と考えると納得がいく。

 さらにもう一つ、従軍慰安婦報道とは全く関係のない原発「吉田調書」の記事を朝日新聞が取り消した背景には、「慰安婦報道も原発報道も日本を貶める点では同類だ」という批判の声が高まってきたのを見て、安倍政権がまず産経新聞に、次いで読売新聞に吉田調書をリークして、朝日新聞批判を後押ししようとしたことはほぼ間違いあるまい。

 もちろん、こう見てきても、安倍政権の要請に勝手に応じた朝日新聞の「オウン・ゴール」であることには違いなく、とくに原発「吉田調書」記事を1950年の伊藤律事件や89年のサンゴ事件と同じ「虚報扱い」にした間違いには、一刻も早く気付いて修正してもらいたいと願わずにはいられない。
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●アベ様は「報道がそれで抑圧される、そんな例があったら私は辞める」と明言・・・ETV番組改編問題は?

2014年12月02日 00時00分15秒 | Weblog


asahi.comの記事【「報道の抑圧があれば私は辞める」 首相、秘密法を説明】(http://www.asahi.com/articles/ASGCM0D9CGCLUTFK01G.html?iref=comtop_list_nat_n02)。
nikkan-gendaiの書評『「NHKと政治権力」永田浩三著』(http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/155016)と、
記事【選挙報道に露骨な注文…安倍自民党がテレビ局に“圧力文書”】(http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/155292)。
東京新聞の記事【自民、文書で「公正に」 TV各局に解散前日要求】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014112802000123.html)。

 「「これはまさに工作員やテロリスト、スパイを相手にしているから、国民は全く、これは基本的に関係ない。施行してみれば分かる」と説明した。そのうえで、「報道がそれで抑圧される、そんな例があったら私は辞める」と明言」!!
 え~っ、オトモダチを送り込んでのNHK暴走人事や『朝日』叩きは「報道の抑圧」とは言わないのかな? 古くはNHK ETV番組改編問題。「平成の治安維持法」を作ったアベ様の言うことを誰が信じられようか。さらには、歴代与党自民党の幹部についていえば、沖縄密約事件もそうだ。

   『●トップからして腐敗したメディア: 「きょうの安倍将軍」「安倍様のNHK」
   『●ジャーナリズムの矜持無きこんな「公共」放送なんて要らない!
   『●内閣法制局、NHK、秘密保護法、消費税増税・・・、
                「肝いり人事」という安倍首相の暴走人事
   『●「治安維持法」を止めるために:
       「アベ様のNHK」などマスメディアだけに任せてはおれない
   『●「アベ様のNHK」に、なぜ「皆様」が受信料を支払うのでしょうか?
   『●「鼻血問題」: 圧力に屈した「アベ様のNHK」
   『●「アベ先生、悪いのは『アサヒ』君だけじゃありません!」
                  ってなぜ言わぬ!、『読売・産経・・』君



   ●『DAYS JAPAN』(2014,APR,Vol.11,No.4)の
                        最新号についてのつぶやき

    「斎藤美奈子さん【OUTLOOK 首相の怨念を背負った
     NHK会長の迷走】、アベ氏・中川一郎氏の圧力による
     「ETV2001 問われる戦時性暴力」番組改悪事件
     (http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/b10639d941800e71bd52f8fb2bf4ce9a)」

   『●『創(2009年4月号)』(2/2)
     「「・・・中川氏は安倍晋三議員とともに、NHKの従軍慰安婦を取り上げた
       番組の放送前日に・・・NHK幹部を呼び、番組を「偏った内容だ」と
       指摘し」、番組を改悪するように政治的圧力をかけ、NHKは
       それに屈した訳だ」

   『
●『創(2009年12月号)』読了(1/2)
    「綿井健陽さん・・・「報道やジャーナリズムに携わる者が、
     「言論・報道の自由」という言葉を抵抗手段として公に訴える場合は、
     それは対国家対公権力に向けて使うべきだと私は考えている。
     たとえばNHKの「ETV番組改編問題」のときの
     安倍晋三や故・中川昭一ら国会議員(当時)の対応、古くは毎日新聞
     西山太吉記者(当時)の沖縄返還密約記事での逮捕・有罪、
     最近では映画『靖国』上映中止問題のときに国会議員らが試写要求と
     文化庁に口出しや取材対象者に接触する行為など、これらは
     「言論・報道の自由」の問題として、それこそ良い意味での
     〝メディア・スクラム〟でもって対応すべき出来事だった」

   『●『官僚とメディア』読了(3/3)
    「朝日新聞の誤報などでは決してない「番組改変が政治的圧力によって
     行われた」間違いのない事実(p.150、『国家とメディア』)。
     「NHK・・・らが中川昭一・経産相(当時)、
     安倍晋三自民党幹事長代理(当時)内閣総理大臣に呼ばれ、
     ・・・などと放送中止を求める発言もした」。
     「中川NHKに事前に圧力をかけたことをはっきり認めている
     これだけはっきりしゃべったことを後でひっくり返すのは、
     無責任極まりない態度だと言うほかない」(p.167)。
     辰濃哲郎記者の〝無断〟録音〝事件〟。「・・・辰濃の名誉は
     どうなるのだろう。ことの真相を伏せられ、必要以上の汚名を
     着せられたまま退社処分になった彼の人権はどうなるのか」(p.170)」

   ●三十数年前の映画 ~『密約 ―外務省機密漏洩事件―』
   『●白々しかった歴代首相・関係者(1/2)
   『●白々しかった歴代首相・関係者(2/2)
   『●白々しい歴代首相・関係者
   『●密約破棄
   『●『密約 ~外務省機密漏洩事件~』読了
   『●〝沖縄密約〟東京高裁判決、原告側の逆転敗訴
   『●『沖縄密約』文書破棄という歴史の冒涜
      ~「捨てちゃったんだからもういいジャン」の国~
   『●沖縄密約と日曜劇場『運命の人』
   『●『運命の人』というフィクション・ドラマと沖縄密約事件についての
                                    ノンフィクション
   『●『運命の人』余話 ~あるフィクサー的政〝界〟記者の反論~
   『●続『運命の人』余話 ~ある元政〝界〟記者の筋違いな激怒、はさておき~


 NHK ETV番組改編問題について、日刊ゲンダイの『「NHKと政治権力」永田浩三著』の書評には、「第2次安倍政権がゴリ押し実現させたNHK籾井会長人事。その背景は13年前の「NHK従軍慰安婦番組改変問題」にある。当時の安倍晋三自民党幹事長代理と中川昭一経産相が放送前日にNHK幹部を呼びつけ、「偏向報道」をとがめる露骨な圧力をかけた」。 その問題の当事者・アベ様が「「報道の抑圧があれば私は辞める」 首相、秘密法を説明」してもね~、説得力ゼロというもの。 

 さて、【自民、文書で「公正に」 TV各局に解散前日要求】だそうだ。・・・・・・「「過去にあるテレビ局が政権交代実現を画策して偏向報道し、大きな社会問題となった」などと記載。出演者の発言回数や時間、ゲスト出演者などの選定、テーマ選定を中立公平にし、街角インタビューや資料映像も一方的な意見に偏ることがないよう求めている」・・・・・・「「公平中立な放送を心がけよ」――。自民党がこんな要望書をテレビ局に送りつけたことが大問題に・・・・・・おそらく萩生田氏が安倍首相にゴマをするために行ったのでしょうが、もし首相も了承しているなら、日本は世界から相手にされなくなります」。
 アベ様達こそ歪んで「不公正」であるし、しかも、その自覚がないときている。さらには、世界に恥さらし。あ~それなのに、アベ様信者や自公投票者ときたら、『●選挙を何度やっても、「騙されることの責任」「考えないことの罪」を自覚し得るかどうか?』。

   『●壊憲、原発推進、平成の治安維持法、TPP、
         高江・辺野古、カネ、ダーク・・・「アベ様政治」全体が争点


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http://www.asahi.com/articles/ASGCM0D9CGCLUTFK01G.html?iref=comtop_list_nat_n02

「報道の抑圧があれば私は辞める」 首相、秘密法を説明
2014年11月19日01時41分

 安倍晋三首相は18日夜、TBSの報道番組で、12月10日に施行される特定秘密保護法について、「これはまさに工作員やテロリスト、スパイを相手にしているから、国民は全く、これは基本的に関係ない。施行してみれば分かる」と説明した。そのうえで、「報道がそれで抑圧される、そんな例があったら私は辞めると明言した。
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http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/155016

「NHKと政治権力」永田浩三著
2014年11月18日

 第2次安倍政権がゴリ押し実現させたNHK籾井会長人事。その背景は13年前の「NHK従軍慰安婦番組改変問題」にある。当時の安倍晋三自民党幹事長代理と中川昭一経産相が放送前日にNHK幹部を呼びつけ、「偏向報道」をとがめる露骨な圧力をかけた。そのとき番組の現場責任者として矢面に立った当時のNHKチーフプロデューサーは圧力に抗しきれず番組の改変に着手。あげくに放送された番組内容に、今度は取材された側の「女性国際戦犯法廷」を主催した市民団体が強く抗議したのだ。

 立ち往生したプロデューサーは組織の中での孤軍奮闘もむなしく退社に追い込まれた。そのプロデューサーが本著の著者。辞職したのち、一連の過程を当事者として赤裸々に記した回顧録だが、単なる暴露や告発ではなく、ジャーナリストとしての深い反省と真摯な教訓に達しているのが特徴。これまで上司や同僚として絆を交わしたはずの相手が組織の論理の中で豹ひよう変へんするさまなどは日本の「組織」をめぐる秀逸なルポでもある。

(岩波書店 1240円)
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014112802000123.html

自民、文書で「公正に」 TV各局に解散前日要求
2014年11月28日 朝刊

 自民党が衆院解散の前日、選挙期間中の報道の公平性を確保し、出演者やテーマなど内容にも配慮するよう求める文書を、在京テレビ各局に渡していたことが二十七日、自民党などへの取材で分かった。

 自民党広報本部は取材に「報道の自由は尊重するという点は何ら変わりない。報道各社は、当然ながら公正な報道を行ってもらえると理解している」と回答した。

 文書は二十日付で、在京キー局の編成局長と報道局長宛て。差出人は自民党筆頭副幹事長の萩生田光一氏と、報道局長の福井照氏となっている。

 文書で自民側は、衆院選は短期間で、報道の内容が選挙に大きく影響しかねないとした上で「過去にあるテレビ局が政権交代実現を画策して偏向報道し、大きな社会問題となった」などと記載。出演者の発言回数や時間、ゲスト出演者などの選定、テーマ選定を中立公平にし、街角インタビューや資料映像も一方的な意見に偏ることがないよう求めている

 民放各局は自民党から文書が届いたと認め「これまで通り公平中立な報道を続ける」とした。NHK広報局は「個別の件についてお答えはしていない」としている。

 立教大の服部孝章教授(メディア法)は「報道の自由への不当な介入や圧力といえる対応だ。『公平』と繰り返す文書の内容からは、安倍政権が報道機関による批判報道におびえていることがうかがえる。姿勢が一方的で、報道機関や市民と『キャッチボール』をしない政権といえる。受け取った時点で報道しなかったテレビ各局の対応にも疑問が残る。あまりに鈍感だ」と話している。
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http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/155292

選挙報道に露骨な注文…安倍自民党がテレビ局に“圧力文書”
2014年11月28日

     (差出人は萩生田筆頭副幹事長/(C)日刊ゲンダイ)

 「公平中立な放送を心がけよ」――。自民党がこんな要望書をテレビ局に送りつけたことが大問題になっている。

 文書は「選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い」というタイトルで、20日付で在京のテレビキー局に送付された。差出人は筆頭副幹事長の萩生田光一と報道局長の福井照の連名。その中身がむちゃくちゃなのだ。

 投票日の12月14日までの報道に〈公平中立、公正な報道姿勢にご留意いただきたくお願い申し上げます〉と注文をつけた上に、〈過去においては、具体名は差し控えますが、あるテレビ局が政権交代実現を画策して偏向報道を行い、(略)大きな社会問題となった事例も現実にあったところです〉とクギを刺している。文中には「公平中立」「公平」が13回も繰り返されている。要するに自民党に不利な放送をするなという恫喝だ。

 さらに4項目の要望を列記。露骨なのは〈街角インタビュー、資料映像等で一方的な意見に偏る、あるいは特定の政治的立場が強調されることのないよう、公平中立、公正を期していただきたい〉という要求。この一文は、恐らく安倍首相から直々に注文があったのだろう。

 11月18日、TBSに出演した安倍首相は、街頭インタビューで一般国民が「景気がよくなったと思わない」「全然アベノミクスは感じてない」と答えると、「(テレビ局の)皆さん、(人を)選んでおられる」「おかしいじゃないですか!」とキレまくり、国民から批判を浴びたばかりだ。安倍周辺は有権者の率直なコメントに神経質になっているという。

 テレビ関係者が言う。

   「要求を丸のみしたら、安倍首相の経済政策に批判的な人は
    排除するしかなくなる。街頭インタビューでは、景気停滞に
    苦しむ地方の不満や、右傾化路線を批判する声も放送できなくなります」

 まさに言論の封殺だ。政治評論家の森田実氏が言う。

   「自民党がこんな要望書を出したのは初めてでしょう。
    萩生田氏は党副幹事長のほかに総裁特別補佐を
    務める政権の中心メンバー。その幹部が自民党には
    『自由』も『民主主義』も存在しないことを宣言した。
    実に恥ずべき行為です。国民から言論の自由を奪うのは
    明らかに憲法違反。彼は今度の選挙で立候補する資格は
    ありません。おそらく萩生田氏が安倍首相にゴマをするために
    行ったのでしょうが、もし首相も了承しているなら、日本は
    世界から相手にされなくなります

 26日、自民党幹事長室に要望書の真意を問いただしたところ、「質問を文書にして送れ」と要求した上、質問状を送ったら、「取材にはお答えできません」との回答だった。このペテン政党に、国民は正義の鉄槌を加えなきゃダメだ
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