Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

「歓待する文学」

2022-01-02 22:07:12 | 読書
小野 正嗣,NHK出版 (2021/11).

Amazon の紹介
*****あなたに寄り添い、あなたを迎え入れる世界文学16選
悲しい時、苦しい時に手にした本が、まるで自分に向けて、自分のために書かれていると感じたことはないだろうか。本から聞こえてくるメッセージによって、私たちは自分が発していた心の声に初めて気づかされることがある。物語を読む行為には、そのような双方向のやりとりが存在し、私たちが本に没頭するとき、本は丸ごと私たちを受け入れ、「歓待」してくれていると著者は語る。NHKラジオテキスト『こころをよむ 歓待する文学』を大幅に加筆・修正し、新たに3章分を書き下ろした。

あなたを「歓待」してくれる、選りすぐりの作品は、ゼーバルト『移民たち』/イーユン・リー「千年の祈り」/アキール・シャルマ『ファミリー・ライフ』/小川洋子『ことり』/ハン・ガン『菜食主義者』/クッツェー『マイケル・K』/カズオ・イシグロ『浮世の画家』/多和田葉子『雪の練習生』/村上春樹『職業としての小説家』/マリー・ンディアイ『三人の逞しい女』/マリリン・ロビンソン『ハウスキーピング』/レイラ・スリマニ『ヌヌ 完璧なベビーシッター』/村田沙耶香『コンビニ人間』/瀬尾夏美『あわいゆくころ』など。
情報としての読書案内を超え、小野文学として昇華した一冊。*****

表紙はメルヘン調,文体はです・ます調で読みやすい.紹介は行き届いていて,作品を読まなくても読んだ気にさせられる.
しかし読者を歓待してくれる文学の多くは,陰々滅々とした内容.
例えば,最初のゼーバルト『移民たち』のテーマはユダヤ人に対する迫害と虐殺で,語り手が回想する4人の人物は,みな過去に苦しみみずから死を選ぶ.
スリマニ『ヌヌ 完璧なベビーシッター』では,ベビーシッターがシットさせる子供を殺す.フランスでもっとも重要な文学賞であるゴンクール賞受賞作だそうだが,本書で紹介される作品には xx 賞受賞というのがほとんど.本書の著者・小野さんと作品の著者との面識が語られることが多いが,『ヌヌ 完璧な...』は例外.

全 16 章で 14 の現代の作品を紹介しているが,小説でないのは村上春樹と,「彼女」こと美智子による『橋をかける』.

ロビンソン『ハウスキーピング』は読んだことがある.この翻訳本が気に入って,原著も買ってしまった.ぼくが思い入れを感じた女性に対して,小野さんは批判的らしい.ぼくは淡々とストーリーを受け入れたが,小野さんは (というより,文学の学者というものは) なんだかんだと深読みして深刻に解釈するのだなぁというのが,正直な感想.

図書館で借用した.
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