埼玉県高校・障害児学校教職員「九条の会」

教え子をふたたび戦場に送らないために

木村草太氏講演会 憲法という希望 in かわごえ

2018-07-10 18:10:37 | 活動報告


 7月1日に開かれた埼玉県高校・障害児学校教職員九条の会の総会で地域でのとりくみを報告してくれたHさんから、「今度、川越でこんな集会を開くんだけど」と整理券をいただいた。TVでもおなじみの木村草太氏の講演会、主催は「九条の会」かわごえ連絡会とある。
 以前、川越では九条の会の運動はどうなっているの?と川越法律事務所のWさんに尋ねたところ、あちこちに一杯できているが連絡が十分でなく統一がとれていない、という話を聞いたことがある。かわごえ連絡会は、川越「九条の会」、高階「九条の会」、盲学校「九条の会」、川越西「九条の会」によって構成され、2010年から合同のとりくみがはじまった。今回は9回目になるということだ。
 会場はウェスタ川越、西口再開発の一環としてつくられた。私が川越を離れてからずいぶんの時をへて建造されたから、外観には接しているものの内部には入ったことがなかった。そんなこともあり、あれこれ期待しながら出かけることにした。
 集会は2部構成で、第1部は藤枝貴子さんによるアルパの演奏。アルパはスペイン語でハープのことで、別名ではラテンハープと呼ばれたりするとのこと。藤枝さんは第2回全日本アルパコンクールで3位入賞したのを機にパラグアイに留学し、帰国後はCDを制作したり、全国各地で公演活動を行っている。20分という短い時間だったが、ときに軽快に、ときに情感にあふれた演奏が披露された。
 続いて木村草太氏の講演会である。冒頭、「護憲派、改憲派ということでなく、一人の憲法学者としてお話しをしたい」という断りがあった。考えようによってはたいへん重要な観点であると思った。憲法を守ろうとすれば、護憲か、改憲か、立場を鮮明にしている人々ではない人たち、あるいはその間で揺れている人たちとも話をしていかなければならない。そのとき、そもそも憲法とは何か、人権とは何か、国際法との関係は何か、というような原則をきちんと踏まえておくことは大切だ。
 話されたことはそのようなことだったと思う。近代国家は権力の一極集中(主権国家)によって統治システムを完成させたが、そのことで①戦争、②人権侵害、③独裁の危険を生んだ。憲法はそのような危険を回避するための○○してはなりませんという「張り紙」なのである。「大日本帝国憲法」(1898)も本来は立憲主義のもとに制定されたはずであるが、「法の制限」を認めたために「法律」を作り出す政府の権限が強くなりすぎた。現在の「日本国憲法」(1947)はその弊害を克服するものとして作り替えられた。
 憲法上の権利のうちで「表現の自由」が優越的地位をしめること、その理由と意義、差別されない権利は平等権とイコールではない、それは19世紀末アメリカの「人種分離法」の問題点を解明することから明らかになる、というような話題はどれも興味深いものであった。
 講演の後半は「教育無償化と憲法」と「自衛隊と憲法9条」に焦点がしぼられた。教育の無償化問題についても懇切な説明があったが、日本政府は「無償教育の漸進的な導入」をうたった「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)第13条2(b)及び(c)の規定に係わる留保の撤回」を国連に通告(H24.9、外務省)しており、野田政権時に国際社会に公約したことを5年間放置してきたというのが安倍政権の現状だ、という指摘があったことだけ記しておきたい。
 憲法9条に関連しては、「国連憲章」2条4項に定められているのは「武力不行使」の原則であり日本国憲法9条と共通していること、ただし国連憲章では侵略を行った国があった場合にそなえて42条「集団安全保障」、第51条「個別的自衛権、集団的自衛権」が定められているが、日本国憲法には規定がない。そこで、「9条の禁止範囲はどこまでか」が第一論点となるが、「あらゆる武力行使の禁止」が政府見解であり、通説である。
 つぎに、「9条の例外を認める根拠はあるか」が第二論点となる。これには例外規定は存在しないとする個別的自衛権・自衛隊違憲説と、憲法13条を根拠とする個別的自衛権・自衛隊合憲説がある。憲法13条は「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」を定めており、その趣旨からして「自国の安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置」を禁じているとは「到底解されない」とするのである(「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」2014.7.1)。つまり、国内防衛作用については「行政」の範囲に含まれるとするわけだが、他国防衛について例外を許容した条文は存在せず、集団的自衛権・国連軍参加は憲法違反となるのである。
 こうしてみると、9条への自衛隊明記改憲については、個別的自衛権+集団的自衛権限定容認を内容とした2015年安保法制を国民投票にかけることになること、従来型の専守防衛にとどめた場合には安保法制の違憲が明確になるなど、重大な矛盾をかかえたものとなる。
 と、内容の紹介が長くなった。TVのニュース番組に出演しているときなどは見解を求められても短時間の中であり、鋭くも無駄のないコメントが出来る人だな、という印象だったが、この日の語り口はユーモアにあふれ、終始聴衆の笑いを誘いながらの講演会となった。
 最後のところで次の予定があり、参加者数を聞き損なったが、あとから尋ねたところ550部用意したレジメが足りなくなってしまったとのことだった。会場にいても盛況は実感していたが、開催にたずさわった方々、お疲れ様でした!



 講演会風景。月曜日の午後の時間帯ということで高齢者の方たちが多かったですが、学校では折から期末考査期間ということで、午後休暇をとりました、という現役の教職員も多数参加していました。

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