ずっと読もうと思ってきた井上靖の「氷壁」を読んだ。有名なナイロンザイル切断事故をモデルに創作された山岳小説。読後の感想・・理系出身として読んだとき、切断されたロープの断面観察がまず第一ではないかと思うのだがそうしていない、技術的に無理だったのかどうかわからないが、このあたりの展開には不満を感じる。しかし、ナイロンザイルの切断に関する展開はもとの事件とはかなり変えている。たぶん、末尾の解説にあるように、この小説は事件そのものを中心に書かれたものではなく「恋愛小説」であり、事件と鑑定にかかわる科学者は「恋人たちの前にたちはだかる壁」として扱われているからなんだと理解した。