「私・・・体にイイケーキなの」
今朝、家を出る前にきゃつはうつむいたまま管理人に言った。今日1月18日は管理人邸宅に在住のアップルジンジャーケーキの賞味期限の日であることは言うまでもない。今日を境にきゃつは徐々に『旨さ』という美貌を失ってゆき、悲しき結末を迎えるにちがいない。そうなる前にきゃつを救うことができるのは、短い間ではあったがともに暮らしてきた管理人以外に誰ができよう・・・今になって独り邸宅に残したきゃつの存在が脅迫的感覚をおびて管理人を刺激した。
まだ1月18日は終わらない。
今からでも遅くはない。
きゃつに飽和した管理人の意識は、ためらいから確信へと導いた。
青森からやってきた自然の恵み、アップルジンジャーケーキとひょんなことからともに生活するようになった、都内に住む甘いものが苦手な管理人の関係をシュールに描いた宝玉の一作