◎「ナチス」の意味とその語源について
新聞報道などによると、七月二六日に起きた「津久井やまゆり園」事件の植松聖容疑者は、本年二月一九日、同園の入倉かおる園長らに対し、「ずっと車いすに縛られて暮らすことが幸せなのか。周りを不幸にする。最近急にそう思うようになった」と語ったという。園長が「ナチスの思想と同じだ」と指摘しても、「そう取られても構わない」と譲らなかったという(容疑者や園長の発言内容は、マスメディアによって微妙に異なっている)。
このことが報じられるや、各種マスメディア、あるいはネット関係者が、にわかに「ナチス」という言葉を口にしはじめた。おそらく、こうしたことは、二〇一三年七月二九日の麻生太郎副総理(当時)の「ナチス憲法」発言以来のことではないかと思う。
さて、本日、このコラムで論じたいのは、「津久井やまゆり園」事件でもなければ、「ナチス思想」でもなければ、「ナチス憲法」でもない。
「ナチス」という言葉の意味と、その語源である。「そんなことは、広辞苑を調べればわかる」とおっしゃる方もおられると思うが、そう簡単なものではない。
広辞苑第五版(電子辞書)で「ナチス」を引くと、「ナチス【Nazis(ドイツ)】/(ナチの複数形)ナチ党の通称」とある。続いて、「ナチ」を引くと、「ナチ【Nazi(ドイツ)】/ドイツで、国民社会主義者(Nationalsozialist)の略称。また、ナチ党員」とある。
ナチがナチ党員を意味し、これが複数形のナチスになると、ナチ党を意味するという説明は、いかにも、もっともらしいが、はたして本当なのだろうか。
まず、Nationalsozialistの略称が、なぜ、NatiではなくNaziなのかがわからない。また、NaziあるいはNazisが、本当にドイツ語なのか、当時のドイツ人が、本当にこのNazi、Nazisという「通称」を用いていたのか。このあたりもよくわからない。
参考までに、ナチ党(ナチス)の正式名称は、国民社会主義ドイツ労働者党(Nationalsozialistische Deutsche Arbeiterpartei)である。論文などで用いられている、その略称は、NSDAPである(Nazis ではなく)。【この話、続く】
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