◎『横浜事件と再審裁判』(2015)を読む
本年二月一八日、インパクト出版会から、『横浜事件と再審裁判』という本が刊行された。「横浜事件第三次再審請求弁護団:編著」となっているが、この本の実質的に編集されたのは、再審請求人のひとりで、巻末に「御礼そしてこれから」という文章を書いておられる木村まきさんであろうと理解した。
私はかつて、横浜事件の被害者である木村亨〈トオル〉さんから、親しくお話を伺ったことがある。したがって、事件については、ある程度のことは知っていた。
しかし「再審請求」という問題になると、話は別である。再審請求にあたっての論点、あるいは具体的な流れというのは、きわめて複雑であって、素人には理解しにくかった。しかし、実際に、第三次再審請求が始まり、横浜地裁で、弁護団による弁論をお聞きしたあたりから、かなり問題の本質が見えてきた。「傍聴」というよりは、「勉学」であった。まさに裁判というのは、「講演」や「講義」に勝る勉学の場であるという実感を、強く抱いた。
さて、本書『横浜事件と再審裁判』を読みながら(まだ、読み切ってはいない)、当時の記憶がよみがえってきた。忘れかけていたこともあれば、今回、この本を読んで、初めて理解できたことも多かった。
若い方など、「横浜事件」そのものを知らないという方も多いと思うが、そうした読者にも、この本は親切にできている。「はじめに」(大島久明弁護士・執筆)から順番に読んでゆけば、事件の概要がつかむことができ、問題の本質を理解することができ、さらには関係者の、この間の思いを感じ取ることできるはずである。
本日は、とりあえず、この本のオビにあった文章を引用しておこう。
治安維持法違反容疑で作り上げられた「横浜事件」。獄死者四名。生き延び被害者と家族は、事件を背負い続けた。特高の拷問による虚偽の自白を唯一の証拠として有罪判決。
司法は、GHQの上陸による戦時中の人権抑圧の暴露をおそれ、横浜事件の判決など裁判記録のほとんどを焼却した。
被害者は敗戦後から闘い開始。一九八六年の第一次再審では、判決文がないことで棄却され裁判が長期化。ついに第三次において再審開始決定が確定。
司法とは、この国とは。九八年から十年余に及ぶ第三次再審請求弁護団の活動を、弁護士各人が冷静に分析しつつ、熱く、豊かに綴る。
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