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礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

武田泰淳「推薦のことば」(平凡社「人間の記録双書」)

2015-09-09 05:27:10 | コラムと名言

◎武田泰淳「推薦のことば」(平凡社「人間の記録双書」)
 
 昨日の続きである。平凡社の「人間の記録双書」シリーズについて紹介している。本日は、このシリーズを推薦する武田泰淳〈タイジュン〉の言葉、および、シリーズの最初の数冊の内容を紹介してみたい。
いずれも、佐藤一『被告――松川事件の二十人』(一九五八)にはさみこまれていた、宣伝用のチラシからの引用である(改行は、原文のまま)。

  権薦のことば  武田泰淳
「人間の記録双書」は、「日本」という秘境に
おける、日本人の執念劇だ。ともすれば、人び
とを無気力に陥れ、あきらめへ誘う現代の悪気
流の中で、積極的に生きる工夫をこらし、新し
い哲学を蓄電した記録である。明日を生きよう
とするすべての人びとに、逞しい活力素をふき
こむに違いない。

水野茂一著 谷間の教師 定価 一七〇円
 陸の離れ島、丹沢の山奥。ここもまた教育の真空地帯だ。
これは山に暮し、谷川に戯れる子供たちとともに、村の因
襲や迷信と闘い、から貧困と病気を追放し、灰色の谷
間に虹をかけた、若い田舎教師の村づくりの記録。

久保辰雄著 広島商人 定価 二二〇円
「利益だけが道じゃない!」と屍の街広島の復旧事業に尽
力した今様天野屋利兵衛の物語。原爆が生んだ新しい商人
像――死の商人から平和の商人へ変貌した、おどろくべく
美しい人間変革の記録であり、不死鳥の物語である。

酒井寅吉著 ジャーナリスト 定価 一八〇円
 昭和の乱世二〇年を「黒い潮」に抗して生き抜いた新聞
記者の素裸の記録。朝日・時事・産経・東京……と遍歴し
つつ、真実の報道をめざしてメカニズムのなかで悪戦苦闘
する著者の苦悩は、暗い時代に燈台の火を探し求める。

桑沢洋子著 ふだん着のデザイナー 定価 二〇〇円
 田中千代が皇后さまのデザイナーなら、桑沢洋子は庶民
のデザイナーだ。日本版バウハウス運動をふり出しに、既
成服からふだん着、労働着のデザイナーへと辿る彼女の足
跡は、日本服飾史の異色であり、女の生き方の一道標だ。

 武田泰淳の推薦文もよいが、各冊についての紹介文も、気合がはいっている。【この話、続く】

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