礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

グロッパリ『社会学綱要』の訳者小序(高田保馬)

2014-08-01 04:34:38 | コラムと名言

◎グロッパリ『社会学綱要』の訳者小序(高田保馬)

 高田保馬の初期の著作(翻訳)、グロッパリ著・高田保馬訳『社会学綱要』(有斐閣書房、一九一三)を紹介している。本日は、「訳者小序」を引用してみよう。

 訳者小序
 本書は伊太利モデナ大学法科大学教授アレッサンドロ・グロッパリProf. Dott. Alossandro Groppaslliの著Elementi di Sociologia. 1905を訳出せるものなり。現代社会学が到達したる研究の成果を綜合集成して一般読者にこれを知悉せしめむとした点に於いて其特徴を見るべきもの、初学の人に取りては最も良好なる一書たるを疑はず。既に斯学に興味を有せる諸賢に対しては、以て伊太利社会学の趨勢をトす可き〈ボクスベキ〉代表的著作としてこれを薦めむと欲す。若し夫れ、清新なる独創の見解に至りてはこれを此種の書に求むること或は酷ならむ。かゝる目的を以て成れるが故に原著は其叙述極めて平明にして趣味に充ちたれど、訳者の不文なる、平明を化して難渋となし、趣味を転して生硬となしたり。原著者と読者とに向ひて其寛容を請はざる可からず。
 原著は訳者の京都文科大学在学中、同分科大学講師米田庄太郎先生に社会学購読用書として教授を受けしものなり。これを訳せしは明治四十三年夏なりしが故ありて長く筐底〈キョウテイ〉に蔵したるを、此度公にするに先ちて〈サキダチテ〉再び其閲正を経たり。我〈ワガ〉不敏を以て此訳を終了したるもの、これ全く先生の教導にもとづく。
訳者は此小著及び付録の訳了に関しても指導と示教とを京都法科大学教授河上肇先生に忝う〈カタジケノウ〉したり。先生はまた、此書の出版のために、懇切なる斡旋の労を与へかつこれを其編纂せるゝ経済学資料に収録することの厚意を賜はれり。かゝる蕪雑〈ブザツ〉なる訳筆を以てして此書が公刊の期を得たるもの、一に〈イツニ〉先生による。
小訳一冊、何等かの寄与をなし得可くば〈ナシウベクバ〉、そは専ら両先生の賜〈タマモノ〉なり。茲に深く感謝の意を表す。
 付録として加へたる新史観二論はこれを原著者の手に成れるSaggi di Sociologiaより採れり。第四章経済現象の起原及び其の社会的変化の補説として見る可きもの、独立の論文として見るもまた妨げず。
 終りに臨み、本書の翻訳に対して快諾を与へたる原著者グロッパリ教授に謝意を表し、併せて其健康を祈る。
 大正二年十月三日   京都にて 高田保馬

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