俺はワルポンだっ!

ちょいワルおやじを卒業したワルポンの斜め下から見た現代社会

『のら猫に城を明け渡す』

2007-11-03 20:57:19 | Weblog
我が家の庭にはデッキがあります。

デッキの道路側には藤棚があり、季節には白い花房がそよ風に吹かれなびいて、外から見るとなかなか趣のある立派なお屋敷の車庫上のデッキに見えます。
(注:立派なお屋敷とは、ある方向から、ある角度で、その時期に、贔屓目で、その部分だけ見れば、見る人によっては見えるということです。はっきり云って誇大表現です。)

このデッキは、愛犬「もん次郎」を我が家に迎えた15年前に、彼の生活の場とするために、まさに彼のために、デザインし、強度計算・図面を描いて設計し、木材などの材料を調達、切断加工し、組み立てたものです。約2ヶ月の間、ほぼ毎土・日曜日の朝から晩まで、ワルポンの全精力をかけた汗と涙の結晶なのです。

居間から同じレベルで張り出した部分と、それよりも50cmほど一段高い車庫上の部分とで、広さが20m2強あり、居間から出たすぐ脇の軒下に犬小屋を設けました。デッキの周りは高さ90cmの縦格子の柵で囲い、東側の道路を見通せる位置の、彼の頭の高さにのぞき窓を設け、顔を出して通りを眺められるようにしてあります。

段差を上ったり降りたり、駆けずり回ったり、晴れの日は木陰で昼寝したり、又、雨の日には小屋で熟睡しようが、時には彼ののぞき窓から門番よろしく通りの見張りをして、彼女が通りかかると声をかけたり、来客の人が来れば吠えて知らせて役に立ったり、家族のお見送り・お出迎えでは尻尾を大げさに打ち振って愛嬌を振りまいたりと、気の向くまま、思うまま、自由奔放に暮らすスペースとなったのです。

彼は特に猫の侵入には敏感で、庭に入ってこようものなら唸り声をあげて追い掛け回し、敷地の外に追いやりいます。頼もしい番犬でもあるのです。

ところが昨今、寄る年波には勝てずめっきり老け込んで、部屋の片隅の彼の布団に丸くなって死んだようにぐっすり熟睡したり、家族の脇に寄り添って来たり、日がな一日、家の中で寝そべっています。

11月に入ったら、さすがにこのところ、夜など冷え込むようになりました。
ソファーは彼のせいでボロボロになったので、隣町の焼却場まで運んで処分してしまったのですが、今度は電気マッサージ椅子の上に寝るようになってしまいました。寝る時に暖房を止めるため夜中に気温が下がると、床よりも少しでも暖かい高いところへ移動するようなのです。かしこいのです。生活の知恵です。

今朝も、起きていっても気づかずに、マッサージ椅子の上に仰向けになって、天下泰平極楽とんぼでスースー寝ていました。
カーテンを開けると、雲は多いけれど晴れていて今日も一日なんかよさそうな朝だなァ、とか想いながら外の空気を入れようとドアを開けると、突然足元から白っぽい塊がデッキの先に転がるように飛んでいきました。“ビックリ!” 

デッキの端に立ち止まり、振り向いてこちらをジッと見ています。白っぽいグレーの、太めの猫でした。ひと呼吸の睨み合いの後、「シッシー!」と追い払うと、植え込みの影に隠れたので、さらに「こらーッ!」と追い討ちをかけるとゆっくり道路に飛び降りて、「朝から何をカリカリしてるのかいな」てな雰囲気で、わざとらしく悠々と道路を歩いて去って行きました。

犬小屋に泊まっていたのです。主は留守で布団も敷いてあるし外は冷え込むので、これ幸いに泊まったのです。
それにしてもまるまる太っていたなあ。いったい何を食べているのやら?

ふと、もん次郎を振り向くと、「朝から騒々しいなぁ、何かあったの?」と、これまた太目の腹を出して眠たそうにしているではないか。「猫が居たんだ!」と云うと「ふーん、あっそう」と再び寝てしまった。
これでは城をとられるぞ!

「ああ、どいつもこいつも・・・。」
「お前は番犬なんだぞ!」と言い残して、新聞を取りに行った。