まずは2005年に導入された“飛ばないボール”にまつわる都市伝説を紹介しよう。
当時はまだ球団別に使用球を決めていて、ある大手メーカーのものが「よく飛ぶ」と評判をとっていた。
実際に'04年にそのメーカーのボールを使っていた巨人は、年間259本塁打と驚異的な数字をマーク。また同じ球を使っていた横浜も194本、パ・リーグでもロッテ以外が使って5球団合わせて777本の本塁打が乱れ飛ぶシーズンだった。
そして'05年に“飛ばないボール”が導入されて、本塁打は激減した。この年の巨人の本塁打数は186本と実に73本減。横浜も51本減って143本塁打で、パ・リーグ5球団の総数も684本と100本近く減少した。
■シーズン途中でボールが変質し、本塁打が出るようになった!?
ところが・・・・
2年後の'07年ぐらいから、徐々に本塁打数が増え始め、'10年にはついに巨人の本塁打は226本と200本の大台を突破した。
パ・リーグでも'08年に西武が198本塁打を記録するなど、“飛ばないボール”のはずなのに、再び本塁打の時代がやってきたのである。
そこでこんな都市伝説が流れだした。
「実は飛ぶボールを作っていたメーカーが、大量の在庫を抱えていて、ほとぼりの冷めた頃から、それを混ぜて出荷し始めた。その結果、再び本塁打が増えたのだ」
そのメーカー関係者に話の真偽を尋ねると、もちろん一笑に付されたのは言うまでもないが、いまだにこの説を説く関係者は少なくない。
そして“飛ばないボール”が統一球として導入された昨年、シーズンが終わると、再びこんな話が流れてきた。
「選手に聞くと、どうもオールスター明けぐらいからボールの感触が変わったようなんですよ」
ある球団の打撃コーチの話だ。
■球宴明けから本塁打を量産し始めた広島の栗原健太。
確かに球宴明けから本塁打を量産した広島・栗原健太内野手の例もある。栗原は7月まではわずか3本塁打だったのが、8月以降は大爆発して14本塁打を量産した。また巨人打線も、7月までの80試合で54本塁打(1試合平均0.68本)だったのが、8月以降の64試合で54本(同0.84本)とわずかながらも数字をアップさせている。
「大きな声じゃ言えないけど、あまりにホームランが出ないから、ボールの質を少し変えたんじゃないですかね……」
例の都市伝説もあってか、そのコーチはまことしやかに、こう推理していた。
■打球は飛ばず、投球そのものが低目に集まる“統一球”。
さて、ここからはそんな都市伝説を離れて、少し科学の話を書こう。
流体力学の専門家で、ボストン・レッドソックスで活躍したティム・ウェークフィールド投手のナックルボールの研究なども行なってきた福岡工大・溝田武人教授が昨年、統一球に関する様々な研究を行ない、学会でも発表した。
その中で面白いデータ結果が出ていることを報じた記事が、昨年のサンケイスポーツに掲載されていた。
統一球は、ホームベースを通過する時点で旧公式球に比べて約4cm低い軌道を通る――。
これは投手がマウンドから毎秒40回転で時速144kmのボールを投げた場合に、18.44m先のホームプレート付近までの軌道を計算した結果だった。
同教授によると、統一球は旧公式球に比べて縫い目の高さが0.2mm低く、幅は1mm広くなっている。その結果、旧球より揚力が下がるために、この現象が見られるという。
「この4cmの差は大きいと思いますよ。今までクリーンヒットのはずだったものがボテボテのゴロになり、ゴロは空振りとなる。打者がボールの上っ面を叩いてしまったことによって凡打が増えて、平均打率が下がり、本塁打が激減したと説明できる」
サンケイスポーツ紙上で、この結果を同教授はこう解析している。
■計算上、打球の飛距離は2m落ちるだけだったが……。
もちろんこの4cmというのは、机上の計算である。すべてがすべてこんなに大きな違いが出ているわけではないだろう。
ただ、反発係数の計算上(これも机上の計算だが)では、統一球は今までのボールに比して2m弱、飛距離が落ちると言われていた。しかし、実際の試合を見ると、その差は明らかに2mを越える、大きな壁のように映っていた。
これほどまでに本塁打が激減し、ほとんどの打者が苦しんだ。その現実を説明する理由の一つとして、溝田教授の指摘したこの4cmの話は、非常に説得力のあるものだったと感じるわけだ。
そして、この4cmの話を読んで妙に合点がいったのが、「シーズン後半になってボールが変わったのでは……」という例のコーチの話でもあった。
■なぜ中村剛也は、シーズン序盤に球筋を見極められたのか?
投手の指から同じ軌道で放たれたボールに対して、これまでと同じ感覚でバットを振っていれば、この4cmの誤差で打ちとられる。ただ、打者は機械ではなく、そうした経験を重ねることで、無意識にでも徐々にスイングを修正していくものでもあるのだ。
統一球を苦にもしなかった西武の中村剛也内野手は、本塁打量産の秘密を「右手の押し込みにある」と語っている。
それは即ち、ボールを呼び込み、軌道を最後まで見て正確にコンタクトして、右手で押し込んでいくということなのだ。こうして4cmの差を見極められているからこそ、統一球は苦にもならなかったというわけだ。
この中村とは違って、当初は統一球に戸惑った打者たちも、経験を積み、試行錯誤を繰り返していくうちに、少しずつ新しい軌道をつかんでいっている。
それがいわゆる「慣れる」ということなのである。
■“4cmの溝”をいち早く埋めた打者が本塁打を量産した。
'05年の“飛ばないボール”にも、こうして少しずつバッターが「慣れて」対応していった。その結果、本塁打は増えていったわけだ。
もっと短いスパンで、昨年の統一球導入でも、少しずつこの4cmの溝を埋められていった選手は、栗原のように後半戦に結果を出していった。また、結果はそれほど出なくても、芯で捕らえる感覚を次第に身につけたことで「ボールの感触が変わった」という感想につながったのかもしれない。
以上「プロ野球亭日乗」鷲田康 = 文。
高校野球はどうなんだろうか? ボールが統一球に変わったとは聞いたことはナイんだが・・・。
もし変わったとするなら打球速度や飛距離に影響が出るんだろうか?
もともとバットの芯が大きい金属バットには関係ないんだろうか?
気になります・・・・どれくらい気になるかと言うと、
AKB48の『まゆゆ』が体調不良で全国ツアーを今日、明日の2日間休演。
その代役として『川栄』
がどれくらいのパフォーマンスが出来るのか?
ってぐらい気になります。