宗教法人の解散には「法令に違反」が必要。宗教法人法81条。
その「法令」に民法を含むか、が、1年半、争われてきており、まだ、東京高裁で争われています。案件は、家庭連合田中会長の過料決定で。
今年2024年3月26日に出た、この過料決定に関する東京地裁(鈴木謙也裁判長)の判断は、
民法709条が禁止規範だ
だから民法709条も「法令」に含まれる
との判断でした。
なお、この3月の過料地裁決定は、H7オウム高裁決定を「個別事案に対応した説示」(いわゆる事例判例)にすぎないとして、踏襲していません。
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なお、岸田首相は、2022年10月に、以下の態度を取りました:
- 2022年10月17日:永岡文科大臣に質問権行使の調査を指示
- 翌18日:衆院予算委員会で「H7オウム高裁決定を踏襲し、刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反する可能性がある。民法不法行為は『法令』には含まない」こちら(衆院議事録)
- 翌19日:参院で「やっぱり、組織性・悪質性・継続性あれば、民法不法行為も含む
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これを振り返って気づいたのは、上記流れで、10月17日には、もう質問権行使が「既定路線」だったんでしょう。
だから、翌18日、岸田主張は衆院で「民法は含まない」って言ったけど、「刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反するおそれがある」ことは前提にしていた。
つまり、質問権を行使する意気マンマンだった。
翌日には「3要件あれば民法も含む」と言って、「一夜での解釈変更」をしたけど。
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今年3月の過料地裁決定(鈴木謙也裁判長)は、以下の点で、「玉虫色」の判決を書いている。
1 結論として、過料決定を出した
…政府に日和った
2 民法(709条)が「法令」に含まれると言った
…過料決定を出すためには論理的にこれは不可避
3 民法709条が禁止規範だと言った
…H7オウム高裁に配慮した(先例に敬意を払った)
4 ただ、オウム高裁決定を踏襲するとは言っていない
…踏襲したら、「刑法等の実定法規の定める禁止規範・命令規範」に拘束されて、なぜ「刑法等」と限定が付いているかについて弁解しなければいけなくなるから?
…ここまで書いて気づきましたが、「法令」に民法を含むって解釈する人は、このH7オウム高裁決定の「刑法等の」を死文化させますね。
民法を含むなら、わざわざあえて「刑法等」って書く必要がない。
こう考えると、我々法曹は、「なぜH7オウム高裁決定が<刑法等の>という4文字を利用したか」を深堀りすべきですね。
裁判所の判決には、一字一句に、意義があります。裁判所は文章のプロ。弁護士よりはるかに文章のプロ。
その「だれよりも字句に長けている文章のプロ」は、意味のない文字を一文字も書いたりしない。すべての字句、すべての文字に、獲得目標がある。
なぜH7オウム高裁決定は「刑法等の」という4文字をわざわざ書いたのか?
これを我々法曹は吟味すべきなんじゃないだろうか。
あらゆる法律を「法令」に含むなら、わざわざ「刑法等の」って書く必要はないんじゃないか?
法曹諸氏の、Feedbackを期待します。