【執筆原稿から抜粋】
美学とはやせ我慢
やせ我慢ついでに(論語や武士道のみならず)、美学もやせ我慢です。
美学とは何でしょうか。
辞書的には「美しさに関する独特の考え」です。
独自のこだわりがカッコよく見えると、美学と呼ばれます。誇り高く、カッコいいこだわりが美学です。信念に基づくスタイル、美意識の矜持です。
皆さんの周りで、「美学」と聴いてピンと来る例がありますでしょうか。
僭越ながら、私の母親の美学を紹介します。
齢80でまだ働く愚母は、生涯で2回仕事を変えました。
20~30代は、大学でフランス語を教えていました。
40代では、大学受験の中規模予備校のチューターをしていました。高校生を相手に受験指導です。
50代から今は、老人ホーム(グループホームの施設長)で介護の仕事をしています。
なぜこのように、全く関係のない3つの仕事を選んだのかを尋ねたら、
「女は容貌が衰えるもの。老醜を人前に晒さぬのが私の美学」
と言っていました。
若い頃は多くの大学生の前に立ち、次にやや少人数の高校生の前に立ち、最後はさらに少人数の老人の前で仕事をする。
我が母ながら、カッコいい美学だなと思いました。