めちゃ法律マニアックなネタで恐縮です。
家庭連合の解散の先例は、2つのみ。オウム真理教と、明覚寺。
この先例で、オウム真理教の高裁が、「法令に違反」を「刑法等の実定法規が定める禁止違反」とかを提示した。
そのオウム高裁の書きっぷりは、一目見れば、事例判例ではないと分かる。宗教法人の解散一般に当てはまる書き方をしている。
中山国際法律事務所のパラリーガル(司法試験合格者、司法修習前)も「これは事例判例とは言えないっすね」的に言っていた。
この、オウム高裁を、明覚寺判例が踏襲した。
ただ、その明覚寺の高裁は、判決検索でどうしてもヒットしない。だから、中山国際法律事務所で、国会図書館から取り寄せました。
そしたら、案の定、明覚寺高裁が、オウム高裁をばっちり引用しています。
というか、わざわざ、「オウム高裁をコピペして明覚寺地裁に追記している」のが、明覚寺高裁だと分かりました。
1 明覚寺高裁
宗務時報No.108(H15.8)99-100頁で、オウム高裁判決が提示した、「一般的な」理由(事例判例ではない理由)をほぼコピペして、地裁に追記しています。
追記させてドッキングした文章は、以下のようになります。Boldが、追記(明覚寺高裁の加筆)部分です。
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本件解散命令申立ては、宗教法人法81条1項1号,2号前段に該当することを理由とするものであるところ,
宗教法人法が81条1項1号及び2号前段において宗教法人に対する解散命令制度を設けたのは、宗教団体が、国家又は他の宗教団体等と対立して武力抗争に及び、あるいは宗教の教義もしくは儀式行事の名の下に詐欺、一夫多妻、麻薬使用等の犯罪や反道徳的・反社会的行動を犯したことがあるという内外の数多くの歴史上明らかな事実に鑑み、同法が宗教団体に法人格を取得する道を開くときは、これにより法人格を取得した宗教団体が、法人格を利用して取得・集積した財産及びこれを基礎に築いた人的・物的組織等を濫用して、法の定める禁止規範もしくは命令規範に違反し、公共の福祉を害する行為に出る等の犯罪的、反道徳的・反社会的存在に化することがありうるところから、これを防止するための措置及び宗教法人がかかる存在となったときにこれに対処するための措置を設ける必要があるとされ、かかる措置の一つとして、右のような存在となった宗教法人の法人格を剥奪し、その世俗的な財産関係を清算するための制度を設けることが必要不可欠であるとされた
からにほかならない。
右のような同法81条1項1号及び2号前段所定の宗教法人に対する解散命令制度が設けられた理由及びその目的に照らすと、同各号所定の「法令に違反して,著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」(1号)及び「第2条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」(2号)とは,宗教法人の代表役員等が法人の名の下において取得・集積した財産及びこれを基礎に築いた人的・物的組織等を利用してした行為であって,社会通念に照らして,当該宗教法人の行為であるといえる上,刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反するものであって,しかもそれが著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為,または宗教法人法第2条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱したと認められる行為をいうものと解するのが相当である。
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2 中山コメント
以上青字の通り、オウム高裁を見るだけで一目瞭然だと思いますが、オウム高裁が「事例判例ではない」ことが、より明らかになりました。
つまり、明覚寺高裁は、オウム高裁と同様に、「法令」を「刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範」と解釈した。
それは、明覚寺高裁も「オウム高裁が事例判例(その事案でしか当てはまらない判断)だからではない」と判断したからだ、ということがよりハッキリ分かりました。
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僭越ながら、家庭連合の解散命令問題で、「オウム高裁が事例判例なのか」「明覚寺高裁がどう判断したのか」を論じるのは、今日の、このブログが初めてで、他の誰も論じていないはずです。
日本に法曹は6万人近くいます。6万人が、6万人、上記のロジックをなぞれば、中山国際法律事務所のパラリーガルと同様、
「ふむ、オウム高裁が事例判例とは言えないね。明覚寺高裁でも、ばっちり、引用しているし。
明覚寺でも、オウム高裁を(事例判例ではない、先例的価値の高い)判例として扱っているし」
ってことが分かってくれると思います。
それなのに、文科省とか、東京地裁(過料決定)は、「オウム高裁は事例判例」として斥けています。
これでいいのか日本!
これでいいのか日本の法実務!
法曹諸氏の、奮起に期待します。