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一日一書 375 殺人事件・萩原朔太郎

2014-08-05 17:15:09 | 一日一書

 

萩原朔太郎「殺人事件」全文

全紙二枚(136×140cm)

 

 

第54回現日書展に出品している作品です。

この作品で「同人格推挙」となりました。

 

 

展示の様子はこんな感じです。

出入り口の脇の壁面に、ぼくの作品だけが飾られています。

目立つ所で、まったくお恥ずかしい次第。

 

 

原文は以下のとおり。

 

  殺人事件

とほい空でぴすとるが鳴る。
またぴすとるが鳴る。
ああ私の探偵は玻璃(はり)の衣装をきて、
こひびとの窓からしのびこむ、
床は晶玉、
ゆびとゆびとのあひだから、
まつさをの血がながれてゐる、
かなしい女の屍体のうへで、
つめたいきりぎりすが鳴いてゐる。

しもつき上旬(はじめ)のある朝、
探偵は玻璃の衣装をきて、
街の十字巷路(よつつじ)を曲つた。
十字巷路に秋のふんすゐ、
はやひとり探偵はうれひをかんず。

みよ、遠いさびしい大理石の歩道を、
曲者はいつさんにすべつてゆく。

 

 

なんで「殺人事件」なのか? と聞かれても困りますが

とにかく、高校生の頃から好きだった詩です

としか答えようがありません。

どこをとっても、透明感のある、夢のような

それでいて硬質なイメージに溢れている詩。

「とほい空でぴすとるが鳴る」の衝撃。

殺人事件で、血が流れているのに、生臭さがまったくない世界。

これほど見事な詩はぼくは他に知りません。

 

 

全紙二枚は、ぼくにとっては初めての大きさだったのですが

こうして展示されてみると、やっぱり小さい。

今度は、もっと大きなものに挑戦することになりそうです。

 


 

 ■本日の蔵出しエッセイ うちひしがれた(9/39)

去年の現日書展では、こんなことを思っていたのでした。

今年は、こんなことはなかったのですが

やっぱり、まだまだの感でした。

「細くて今にもちぎれてそうな糸」に必死にしがみついてきたことは

確かなようですが

何よりも、よき師に恵まれた幸せを感じています。


書道を始めたころのエッセイをいくつか蔵出し。

57の手習い(5/96)

きっかけは友のひとこと(5/99)

愛の水中花(6/27)


 

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