スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

The Pirate Bay の裁判

2009-02-18 05:09:06 | スウェーデン・その他の社会
世界中の注目を浴びる裁判が、月曜日からストックホルム裁判所で始まった。被告は24歳から48歳までのスウェーデン人男性4人。罪状は、著作権法に違反する犯罪行為への幇助

実は、この4人は世界的に有名なサイト「The pirate bay」を立ち上げ、その運営やサイト所有に関わってきた人たちだ。


インターネットを通じて、誰でも自由にファイルを共有・ダウンロードできる、Bittorrentという技術がある。これはまず、自分がダウンロードしたい音楽や映画などのファイルの、一種の認証札(torrent)をインターネット上でダウンロードする。その上で、別のサイトから入手したファイル交換ソフトを使いながら、その認証札を通じて、もとのファイルをダウンロードする、というシステムだ。

では、この「The pirate bay」というサイトは、というと、一種の掲示板サイトであり、誰でもこの認証札を掲載したり、検索したり、ダウンロードしたりできるサイトなのだ。だから、もし私があるCDの音楽ファイルを手に入れたければ、このサイトで検索して、認証札を手に入れたうえで、ファイル交換ソフトを使って欲しかった音楽ファイルをダウンロードできる。もしくは、私があるDVDの映画をパソコンのハードディスクに持っていて、他の人と共有したい場合に、この認証札を作成し、この「The pirate bay」というサイトに掲載すれば、他の人が私の持つデータをダウンロードできる。

日本でもWinnyとかWinMXといったファイル交換ソフトの開発者が「著作権侵害行為への幇助」の疑いで訴えられた事件があったが、この「The pirate bay」はあくまで掲示板サイトに過ぎず、実際のファイルのダウンロードにつかうソフトは、別の誰かが作ったものだ(いくつか種類がある)。

しかし、このサイトには、スウェーデンの有名歌手だけでなく、世界的な流行歌手や映画、パソコンソフトのダウンロードに使うための認証札(torrent)が掲載されている。そして、そのほとんどが著作権法で保護されたものだ。

とはいえ、これらの認証札はすべて、このサイトの運営者ではなく、スウェーデンおよび世界中の一般の人々が掲載したものだ。しかし、サイト運営者はそれが著作権のあるデータのダウンロードに使われることを知った上で運営し、その違法行為を幇助してきた、という疑いで、今回、裁判にかけられることになったのだ。検察側は、音楽業界や映画業界が追った経済的被害に対する損害賠償として1億1700万クローナを要求している。

だから、もしファイル共有ソフトの作成者が訴えられたのであれば「著作権のない自作ソフトや音楽、映像の共有のために開発したが、一部の人々がそれ以外の目的に用いた」と弁明できたかもしれない。日本のWinnyの裁判では弁護団が「もし国土交通省が、高速道路では多くの人がスピード違反しているのを知った上で、高速道路を管理・建設しているとすれば、大臣は逮捕されるのか?」との趣旨の発言を行っていた。

これに対し、「The pirate bay」に掲載されている認証札(torrent)のほとんどは、著作権法で保護されたデータにリンクされた認証札であり、しかも、サイトの管理者は、それを削除できる立場にありながら、それを放置してきた(一方、ポルノなどに関わるものは管理者がこまめに削除してきた)。だから、違法行為が行われることを主要な目的としたサイトの運営であり、違法行為への幇助であることは、逃れ難いのではないか、と思う。しかも、サイトの名前自体が「海賊(pirate)」。悪いことだと知りながら行っている確信犯であることには、疑いがないのではなかろうか。


スウェーデン発のこのサイト「The pirate bay」は、スウェーデン人の利用者が多いとはいえ、世界的にも知られたサイトであり、スウェーデンでの判決が今後の論議に影響を及ぼすと見られるため、世界的な注目を集めているのだ。裁判は13日間にわたって行われる。

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