スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

社会民主党党首の後任は・・・?

2006-11-24 09:22:25 | スウェーデン・その他の政治
社民党の党首Göran Perssonは名実ともに「重く」、1996年以来、党首及び首相の座に、どっしりと座ってきたけれど、自らキャンペーンを率いた総選挙の敗退をもって、党首の座も自ら辞任を表明した。

さて、社会民主党の新しい党首には誰が就くのか?もちろんこれは、彼の辞任直後から、騒がれていた。


Margot Wallström(52歳)
一番人気は、この彼女。1990年代に社会民主党政権で文化大臣と社会大臣を担当した後は、1999年から活躍の舞台をEUに移す。EUの行政をつかさどる最高行政府であるEU委員会(欧州委員会)で環境問題担当委員を担当した後、2004年からはEU委員会副委員長に就き、敏腕を振るわせている。本国スウェーデンで要職大臣ポストが空くたびに、首相Perssonが「戻ってきてくれないか?」とうかがいを立てた。国民に幅広く人気だったので、彼としても政権の人気挽回を図りたかったのだ。しかし、どうやらPerssonと折り合いが悪いと噂され、いつもNejの返事。今もEUでの仕事が気に入っているらしく、今回も返事はNej。


Carin Jämtin(42歳)
今年の春、スキャンダルで辞職した外務大臣の後任選びの際に、名前が挙がったが、結局選ばれたのは当時、国連総会議長を務めていたJan Eliassonだった。彼女は、2003年から2006年まで外務省下の国際援助担当大臣に就いている。それを除けば、国会の場での活躍や経験はあまり見られないが、この大臣職の以前には、暗殺されたOlof Palmeを記念して作った「パルメ国際センター」の国際援助部長をやっており、実務と管理職の経験がありそうだ。今は国会議員ではなく、ストックホルム市の市会議員。今回はストックホルム市でも政権交代があり、右派ブロックに政権が移った。彼女は、野党の代表の一人として市の執行部に席を持っている。


Wanja Lundby-Wedin(54歳)
社会民主党の支持母体である、ブルーカラー系労働組合LOの代表を2000年以来務める。准看護婦としてまず働き始め、そのうち職場の労働組合を手始めに、地方公務員系の労組Kommunalでオンブズマンなどをした後、LOに移り、今に至っている。ただ、議員としての経験は全くなし。


Mona Sahlin(49歳)
東京経済大学のKyotonC先生が「スウェーデンの八代亜紀」と呼ぶのはこの人。1982年に25歳で国会議員に選出されたときは、この時点で史上最年少だった。男女共同参画などに力を入れており、90年代に日本で書かれたスウェーデンについての本を見れば、スウェーデンの男女平等社会を推し進めるキラ星のごとく書かれているはず。大臣職としては、労働市場大臣、副大臣を務めたほか、90年代前半に社民党が野に下った時には、党官房職についているのだ。Göran Perssonの前任者で首相でもあったIngvar Karlssonが1995年辞任を表明したときには、後任として名前が唯一挙がったのは、実は彼女だけだった。だから、この時点で、彼女が社会民主党党首になり、首相になっていてもおかしくなかった。しかし、スキャンダルがメディアに流され、その夢ははかなくも消えてしまった。その悪いイメージが消え去らないのか、今でも本国スウェーデンでの人気はかなり低い。


Pär Nuder(43歳)
1994年以来、社民党の国会議員。2004年秋に財務大臣に抜擢される。予算案発表の際に、USBメモリーを首からぶら下げて、財務省から国会議事堂まで行進したのは彼。テレビのインタビューや国会の答弁は冴えない。台本を読み上げているだけの感じで、同じことばかりを繰り返す。私のつけたニックネームは「テープレコーダー」君。


Thomas Bodström(44歳)
ストックホルム大学で法律専門コースを履修していた時代にもサッカーに打ち込み、80年代終わりにはAIK(ストックホルムのプロ・チーム)の選手として、Allsvenskan(スウェーデン・トップリーグ)でサッカーをプレーしていたという異色の経歴。それだけでなく、その後、ちゃんと大学で学位を取得し(jul. kand.)、弁護士として90年代は過ごす。2000年に法務大臣が突然辞職(なんと、今年の春、外務大臣を辞職したのと同じ女性大臣。このときもスキャンダル)。このとき当時の首相Göran Perssonから突然彼のもとに電話がかかり、彼は法務大臣職を快諾。その日に、同時に彼は社民党の入党届を提出して、社民党員となる。なぜ、彼が選ばれたのか? 彼は社民党員でこそなかったが、かつて社民党政権の下で外務大臣を務めた議員の御曹司だったこと。それから、90年代終わりにスウェーデンを騒がせたヨーテボリ・ディスコ放火事件で被害者の弁護をしたこともあり、世論に少しは顔が知れていたことも関係しているだろう。首相Göranも法律の専門家で若い人材を確保したかったのかもしれない。ちなみに、無料新聞Metroが一年ほど前に若者を対象にアンケートしたところ、一番人気のある政治家は彼で、Göran Perssonの後任に最適だとされた。ただ現実問題として、政界での経験が浅い。

と、このような名前が挙がっている。初の女性社民党党首の誕生を、という声が高く、男性二人はチャンスがないと見ていいだろう。今のところ、EU委員会の副委員長を務めるMargot Wallströmが党内では一番人気らしいが、彼女はブリュッセルが気に入っているらしく、帰ってくる気配がない。そこで、次に人気が高いCarin Jämtinに焦点が絞られつつあるようだ。社民党系のタブロイド紙Aftonbladetは、彼女を推したがっているようだし、「ヨーテボリのドン」と呼ばれる市会議員Göran Johanssonも彼女が適任、と後押ししている。しかし、こちらも本人にはその気がないようで・・・。

1995年から96年にかけての党首選びでは、勝ち馬と見られたMona Sahlinが失脚した後、仕方なく挙がった名前の中にGöran Perssonがいた。あまりパッとしない上に、本人もやりたくない、といっていたのだが、度重なるNejがしまいにはJaに変わった。だから、今回もMargot Wallströmにしても、Carin Jämtinにしても、最後にはJaというのではないか、と皆が見ている。

正式に後任が決まるのは来年3月の臨時党大会で。もし、今Anna Lindhが生きていたなら、即決だっただろうにね。


最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
さすが、yoshiさん! (東京経済大学のキョトンCです。)
2006-11-24 21:17:59
 いつも、勉強させていただいています。ゼミ生達もよくyoshiさんのこのブログを話題にしています。
 畳に正座して真面目にブログを拝見していたのですが、候補の4番手のモナ・サリーン氏のところで、一人大爆笑!転調の天才ですね。さすがです。
 彼女のスキャンダルをご存じない読者もいると思いますので、解説していただければと思います。スウェーデンでは、スキャンダルの軽重は関係ないとは思いますが、彼女のスキャンダルが、あのチョコ&クレジカ問題だけであるならば、少し同情してしまいます。
返信する
なんで八代亜紀なの?(お化粧が濃いとか?) (Shoko)
2006-11-24 23:47:09
こんにちは!2週間ほどしたら、日本へ帰ります。

この話題をニュースで見たとき、女性ばかりが候補に上がっているのに、驚きました(男性もちゃんと候補として挙げられているのね笑)。”本命”候補、写真で見る限り、キャラクターは対照的な感じがしますね(動と静というか・・・)。今の副首相(しっかり者の姉って感じの人)もそうだけど、スウェーデンの政界上層部(?)の女性は、ショートカットで、ちゃきちゃきした感じの人が多いのかしら?近頃話題の、フランス社会党大統領選候補のロワイヤルがフェミニティを前面に出している感じであるのと比べると、こんなところでもスウェーデンの政界は男女関係ない世界なんだなと感じたりしたのですが(そういえば、近頃またスイスの機関の調査で、スウェーデンは最も男女平等が進んだ国に選ばれていましたね)。

私だったらEU委員か前の法務大臣に1票入れそう(ミーハー)。やっぱりリーダーって、実行力とともにカリスマティックな強い雰囲気も必要って思うのですけど(「テープレコーダ」では厳しいわ!)。
返信する
Unknown (Yoshi)
2006-11-26 09:01:41
先生、さすがスウェーデン通です。
Mona Sahlinのチョコレート・スキャンダルをちゃんと押さえておられるとは! スウェーデンでは、高校現代史の期末試験に必ず出題される重要事項なので、これなくしてはスウェーデンは語れませんよね(真っ赤なウソです)。

前置きが長くなりましたが、彼女のイメージダウンの原因は、やはり例のスキャンダルが大きいようです。それについては、私も思うところがありますので、後ほどまとめたいと思います。
返信する
Unknown (Yoshi)
2006-11-26 09:07:35
<フランス社会党大統領選候補の
>ロワイヤルがフェミニティを前
>面に出している感じであるのと
>比べると、

なるほど。面白い比較ですね。女性であることを一つの売りにしているのですね。フェミニティを前面に押し出すというと、具体的にはどういうことを売りにしているのか、とっても興味があります。また教えてください。

フランスでは、レディーファーストの習慣はあるのでしょうか? スウェーデンでは、そういう面倒な習慣はないし、女性もそういう特別扱いをされるのを嫌がる傾向があるので、とてもスッキリしていて、いいと思いますが。
返信する
レディファーストって? (Shoko)
2006-11-30 08:33:31
道を譲るとかそういうことですか?でもそれって、こちらでは割と当たり前のようにみんなしてません?茶目っ気たっぷりのおじいちゃまにも、電車で通路で、先に行かせてもらいましたよ。むしろ、逆に男性の友人を、ドアを開けてお通ししたら、「日本ではレディファーストの習慣はないの?」って聞かれたことがあったのですが。。。でもそもそもレディファーストとは?佐藤さんの定義は?

ロワイヤルについては長くなるので、メールします。ってこんなコメントでいいのかな。ごめんなさい。
返信する
Unknown (Yoshi)
2006-12-03 05:51:01
道を譲るとか、エレベーターに乗るときに先に通してあげる、とかいったことを指して「レディーファースト」と書きましたが、私が考えているのは、むしろ受けての側の女性のほうです。

敢えて特別扱いされることを嫌がる傾向があると思いますし、驕られるのが当然なんて思っている人はあまりいないのではないかと思います。とても素晴らしい、見上げた根性だと思います。

レディーファーストをする側の、オッサンのことは分かりません。こういう人はどこにでもいるのでしょうか・・・ネ。
返信する

コメントを投稿