スウェーデンの医療はどうも需要に対して供給が追いついて行ってないようで、日々の報道を見ていると、手術のための順番待ちが数ヶ月以上だ(夏休みの間はさらに長くなる)とか、初診までの待ち時間も病種によっては半年以上だ、といった話をよく耳ににする。待ち時間を少しでも短くするため、医療を管轄する県議会や県行政は様々なプランを立てて、医療供給の効率化や医者の確保、さらに、地域によっては民営診療所のさらなる活用などに取り組んでいる。中央議会でも、vårdgarantiという国レベルの指針を設けて、初診や手術までの待ち時間に上限を設けようとする議論も聞かれる。
そんな状態だから、重大な病気にかかって手術を待つ間に、命を落とすケースもかなりあるのではないか? なんて、傍から見ていると、思えてしょうがない。実際に、そういう統計があるのか、その国際比較はあるのか、気になるところ。あれば見てみたい。(今思い出した最近の例では、鬱病にかかり自殺願望を持つ子供が、精神科の診察をすぐに受けられず、何ヶ月か待つうちに命を絶った、という親の話をニュースで耳にした。)
だから、下のニュースを聞いて、ちょっとビックリした。
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癌にかかった後の生存率は、ヨーロッパの中では北欧(スウェーデン・フィンランド・ノルウェー)が一番高い
ヨーロッパ諸国23カ国の癌による生存率の比較がなされた。5大がん(肺がん・乳がん・前立腺がん・大腸がん・子宮がん)のどれかが発見された5年後の生存率は、スウェーデン・フィンランド・ノルウェーが57%と一番高いのに対し、ヨーロッパの平均は男性45%、女性55%であることが分かった。
北欧の後に、中欧(おそらくここではドイツ・フランス・オランダ・ベルギーなどのことと思われる)が続く。南欧は平均付近。逆に東欧諸国は下位を占め、イギリスやアイルランド、デンマークもそれに続いて低い。
イギリスが低いのはガンの予防検診があまり発達していないためだ、と思われる。
比較の結果、それぞれの国の生存率は、その国でどれだけのお金がガン医療につぎ込まれているかと密接な関係にあることも分かった。
SVTのニュースより
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さて、この研究はThe Lancet Oncologyの最新号に掲載されるとのこと。今回の研究は、ヨーロッパ諸国の比較だが、それに比べて、アメリカの生存率は、男性66%、女性63%と、ヨーロッパよりもはるかに高いという。アメリカの医療費が高いことは世界的にも知られているが、もしかしたら、ガン医療につぎ込まれるお金の額も多く、それがアメリカの生存率の高さを説明しているのかもしれない。(定かではありませんが)
ストックホルム県では、今後、60~65歳のすべての住民を対象にガン検診を実施するという。
そんな状態だから、重大な病気にかかって手術を待つ間に、命を落とすケースもかなりあるのではないか? なんて、傍から見ていると、思えてしょうがない。実際に、そういう統計があるのか、その国際比較はあるのか、気になるところ。あれば見てみたい。(今思い出した最近の例では、鬱病にかかり自殺願望を持つ子供が、精神科の診察をすぐに受けられず、何ヶ月か待つうちに命を絶った、という親の話をニュースで耳にした。)
だから、下のニュースを聞いて、ちょっとビックリした。
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癌にかかった後の生存率は、ヨーロッパの中では北欧(スウェーデン・フィンランド・ノルウェー)が一番高い
ヨーロッパ諸国23カ国の癌による生存率の比較がなされた。5大がん(肺がん・乳がん・前立腺がん・大腸がん・子宮がん)のどれかが発見された5年後の生存率は、スウェーデン・フィンランド・ノルウェーが57%と一番高いのに対し、ヨーロッパの平均は男性45%、女性55%であることが分かった。
北欧の後に、中欧(おそらくここではドイツ・フランス・オランダ・ベルギーなどのことと思われる)が続く。南欧は平均付近。逆に東欧諸国は下位を占め、イギリスやアイルランド、デンマークもそれに続いて低い。
イギリスが低いのはガンの予防検診があまり発達していないためだ、と思われる。
比較の結果、それぞれの国の生存率は、その国でどれだけのお金がガン医療につぎ込まれているかと密接な関係にあることも分かった。
SVTのニュースより
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さて、この研究はThe Lancet Oncologyの最新号に掲載されるとのこと。今回の研究は、ヨーロッパ諸国の比較だが、それに比べて、アメリカの生存率は、男性66%、女性63%と、ヨーロッパよりもはるかに高いという。アメリカの医療費が高いことは世界的にも知られているが、もしかしたら、ガン医療につぎ込まれるお金の額も多く、それがアメリカの生存率の高さを説明しているのかもしれない。(定かではありませんが)
ストックホルム県では、今後、60~65歳のすべての住民を対象にガン検診を実施するという。
スウェーデンは人口当たりの医師の数は日本とは比較にならないほど多いですし、OECD加盟国の中でもまずまずの位置にいます。日本は2020年には最下位に転落するという試算もあるくらいです。
http://www.timeland.co.jp/graphmarket/column/oecd1000.html
それなのにスウェーデンのほうがより供給不足に感じられるのでしたら、初診や手術待ちという目にみえやすい形で現れてるからかもしれません。日本の場合は病院への保険の支給が厳しく制限されていることで、保険支給が優遇される期間を過ぎると(患者サイドではまだ入院が必要と思われる状態でも)患者を半強制的に退院させたりといった形でしわ寄せが来ているようです。患者一人あたりに対するケアの密度については、主観的なことですので想像するしかないですけどね。
効率化を進めてパイを大きくすることはできても、初診や手術までの待ち時間を制限するということは、やはりそれによって失われるケアがどうしてもでてき、それとのトレードオフになると思うんです。先日の「疾病給付制度」の問題といい、効率化のためにどこまでのトレードオフを許容するのかというのがスウェーデンがいつも抱える問題になるのでしょうか。
最後に、世界的には高い医師密度を誇っていても、自分たちが医療不足だと思うからそれを問題にするという姿勢は興味深いです。日本だったらそうした場合、ほぼ間違いなく(他の国よりマシだから)我慢するという方向に向かう気がします。
健診にお金をかければ、早期のがんを発見できる分、長期生存率は高くなる、といううがった見方もできますね。がんのステージで調整したりしているんでしょうか。
現在、健診のコストを肌で感じる仕事をしているので、ついコメントさせていただきました。
感染症から慢性疾患へと医療のターゲットが移り、今度はメタボリックという新しいカテゴリができ、健診に大量のお金(税金、保険)が投入され、結局”医療“費は減らないように思えます。自分で自分の健康を管理している人は、実は統計に上がっていないのではないでしょうか(保険診療外で、100%自費で受ける場合。実際のところは判らないのですが)。医療業界が商売あがったりの社会が、本当は健康な社会なのでしょうが、難しいところです。
思いつくままに書き連ねてしまいました。これからも時々立ち寄らせてください^^)。
> 全体としてはちゃんと供給できてる
>(他の国とくらべて)んでしょうね。
そうなんでしょうね。こういう生活と密接に関わる事柄というのは、どうしても直接体験とか報道の指摘などを通じて、全体像を把握しがちですが、統計などを通した客観的な視点から見てみると、違った全体像が見えてくるのですね。
お教えいただいたリンクによると、国民1000人当たりの医師数はスウェーデンが3.3人に対し、日本が2.0人と大きく違うようですね。
説明が不十分でしたが、手術や診察までの待ち時間に国レベルで上限を設けるというのは、つまり、ある一定期間以内に医療を提供できない県(医療供給を担当)は、超過日数に応じて罰金を課す、というものです。罰金によって、県の医療供給体制に経済的インセンティブを与える、ということなのです。
スウェーデンのメディアは、様々な政策の問題点について結構口うるさく追及します。よって、この国で生活をしてニュースを見聞きしていると、何だか国中、問題だらけのような、主観的な印象を受けがちです。でも、最後にご指摘の通り、それは自己批判的なメディアなり、国民性があるからであって、それがこの国の社会の発展を支えているんですよね。問題に対して盲目であるよりは、とってもいいことです。
メタボリックというと、やはり肥満のことでしょうか? もしそうでしたら、最新の記事を読んでいただけると嬉しいです。スウェーデンの現状です。
健康診断のコストを感じていらっしゃるとのことですが、検診を充実させ、そこにお金をつぎ込んで、早期発見をすることが可能になれば、病気が深刻になってから発見され、治療にかかったであろう多額の出費を防ぐことができるのではないかと思います。ですので、社会全体での医療費は減らないにしても、早期発見のために浮いた費用を、別の医療分野につぎ込むことができ、全体としてよりクオリティーの高い医療を供給する余裕が生まれるのではないかと思います。
と、思いついたことを書いてしまいました。
この4月から1年間の予定でスウェーデンの北部に滞在しています。実際に暮らしてみて一番驚いたことは、人々の医療に対する不満の大きさでした。
福祉と医療をなんとなくひとかたまりで考えてしまい、福祉先進国=医療先進国と漠然と思っていたため、実態を聞くにつけ、「えー」と驚くばかりです。「足が腫れ上がって痛くて仕方がないのに、20日後に来てくださいと言われた」とか、「受け付けの時間が、1日に1時間しかない」っといった状況は、日本とは質的に異なった問題を抱えているようにも思えます。むしろ単に人口当たりの医者の数といった数値の比較では見えなくなることもあるのではないのでしょうか。
素人的な疑問としては、福祉でこれだけの制度を作り上げた国が、なぜ医療では国民の不満に十分応えられていないのかという点です。もし何か思い当たる点があればご教示下さい。
日本人が集まってのフィーカでも、一番盛り上がるのは医療問題です。それを聞く度に、帰国まで医者のお世話にならないよう健康にはだけは気をつけようという思いを強くしています。
> 実際に暮らしてみて一番驚いたことは、人々の医療に対する不満の大きさでした。
これ、大変興味がありますが、スウェーデン人一般の不満でしょうか、それとも、スウェーデンに住んでおられる日本人の方々の不満でしょうか? (それとも両方?)
もし、日本人の方々がおっしゃっておられるのならば、私も経験がありますが、結構、皆さん口々におっしゃっておられますよね。でも、これをどう受け止めたらいいものか。日本人同士で集まるとする。皆さん、それぞれの理由があって、スウェーデンで生活しておられる。出身も違えば、趣味も様々。だから、当たり障りのない共通の話題といえば、例えば、天気のことや、子育てのこと、そして、スウェーデンでの生活の不満にどうしてもなってしまう。ましてや、スウェーデンと日本では医療制度はもちろん違うし、言葉も違い、意思疎通が思うように行かないかもしれない。日本でやっているようには行かない。だから、慣れない制度に対する戸惑いが不満となって溢れ出るのも否めないと思います。(もちろん、そういうコミュニティーがあるのはいいことだと思います)
私がむしろ関心があるのは、この国に住むスウェーデン人自身が現状をどのように感じ、対処しようとしているかです。もちろん人にもよりますし、支持政党や持つイデオロギー(右派か左派かetc)によっても、意見は異なると思います。でも、私がこれまで感じたところでは、意外や意外、日本人が思っているほど、不満は大きくなく、それなりに対処の仕方を知っているようなのです。例えば、医者にすぐに見てもらいたいのに、初診まで数日も待てといわれた。ならば、救急病院へ駆けつける。で、そこで、数時間も待たされても、それは仕方のないことだと受け入れる。そして、診察してもらう。それで、この国は動いているようなのです。
スウェーデン人の友人や同僚に、彼らが医療制度をどう考えているのか尋ねたり、日本人の感じる不満を試しにぶつけてみたことがありますが、大した問題ではない、それに急ぎのときは救急病院という窓口がある、etc、という反応がたいてい帰ってきます。実際に看護婦をやっておられる方や、看護婦兼、市会議員をやっておられる方からも、似たような返事が返ってきました。
慣れというのは恐ろしく、スウェーデン人は自国の医療問題に盲目だ、といえるのか、それとも、それなりにこの国は機能している、といえるのか、まだ私はどちらとも判断が付きません。是非とも、お近くのスウェーデン人に訊いて回ってみてください。
あっ、ちなみに、ここで挙げた話は、ヨーテボリやストックホルム、ヨンショーピンなどの地域のことであって、他の地域などでは事情が大きく異なるかもしれません。とくに、北部の過疎地域での医療供給の問題はもしかしたらもっと深刻かもしれません。
いろいろ考えさせられました。
ただ、スウェーデン人も問題だと思っているからこそ、県や国で対策が話し合われているのではないのですか。ボトムアップを大切にする国だからこそ、こうした動きの背景には、国民の不満があるのかと思っていました。それとも政権が変わったからなのでしょうか?
私の経験は、比率から言えば日本人からのものが多いですが、必ずしもすべてではありません。伴侶はすべてスウェーデン人ですし。また例えば、前に話題になっていた燃え尽き症候群や鬱病などに関して言えば、EUプロジェクトで社会的排除の問題に取り組んでおられる方が、「1つの問題として、こうした患者さんに対して医者が十分に話しを聞こうとしない(聞く時間がとれない?)ことがある。数分聞いてカルテを書いてしまう。」というようなことを言っておられました。
ともあれ、まだまだ本当に少ない経験に基づいての話しであることは間違いありません。今後、いろいろな方にお話を聞く機会がありそうなので、その都度話題にして深めていきたいと思います。
それでは。
これからもブログを楽しみにしています。
>「足が腫れ上がって痛くて仕方がないのに、20日後に来てくださいと言われた」
本当でしょうか。夕刊紙などにはこの手の誇張が多いです。痛くて仕方がないのであれば、病院の救急に行けばいいのであって。
>「受け付けの時間が、1日に1時間しかない」
電話での受付は1日に1時間のところが多いようですが、これが一番大きな問題です。このため、インターネットを使った予約制度やドロップインできる診療所を作ったりしている県もあります。
医療に対する満足度は、スウェーデンは国際的には中より上だったと思います。また県などの調査によっても、満足度は相対的に高いと出ています。ただ満足度というのは期待度に反比例するものなので、比較には注意が必要です。
手術待ちのため、死亡する人がいるというのは、日本の知りあいから本当ですかと聞かれたことがあります。これも?です。もちろんスウェーデンでも医療事故はありますが、これが制度的な欠点によるものかということです。手術待ちはあくまで緊急を要しないものである。考えられるのは、心肺の臓器移植でその人にあったものが見つからないというものです。最近、スウェーデン人が優先されるため、日本に住んでいる日本人の臓器移植が難しくなっています。
精神病院の廃止、入院から通院治療の流れの中での精神医療が問題となっています。このため、退院から1ヶ月以内の自殺(死亡?)は、マリア法によって医療事故として報告の義務が出来ました。
私こそ、まだまだ分からないことがありますので、今後の課題にしたいと思います。何か新しい発見などありましたら、こちらこそご教授いただけるとありがたいです。