スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

高い安全性が求められる電子データ保管場所

2011-07-08 03:06:53 | スウェーデン・その他の経済
地震や津波、洪水、山火事といった自然災害は、様々な形で予期せぬ被害をもたらす。日本の震災のあとでも話題になったのが、電子情報の保管場所だ。データを保管するサーバーを複数設けて別々の場所におき、随時コピーを取っておくことはおそらく今の時代は当然のことだろうが、たとえサーバーを複数持ってリスク分散を図るとしても、できるだけ安全な場所に置きたい。

スウェーデンでは地殻変動があまりなく地震もほとんど起きないが、まさにこの点が注目を受け、一つの新ビジネススウェーデン北部で起こりつつある。データを保管するサーバーセンターを建設し運転する、というビジネスだ。

実のところ、既にFacebook(フェイスブック)が巨大なサーバーセンターをスウェーデン北部のルレオ市に建設する計画を立て、その許可申請を今年5月に地元自治体や認可当局に提出している。


フェイスブックの計画はかなり壮大なもので、1つあたり3万平方メートルのサーバーセンターを3つ建設し、電力供給のために送電線を新たにひき、変電所を2つ設置するというものだ。

サーバーをはじめとする大量の電子機器が一ヶ所に集積すれば、発生する熱の量も相当大きい。だから、サーバーの運転に必要な電力以上に、サーバーや関連機器の冷却のために必要とされる電力が膨大なものとなる。現在の計画によると、この3つのサーバーセンターが完成しフル稼働に必要とされる電力は、1万6000世帯が消費する電力量に匹敵するという。

より正確に言えば年間の電力消費量は473 000 MWh、スウェーデンの電力需要や電力市場について話しをするときによく使われるTWh(テラ・ワット時)という単位に直せば、0.473TWhとなる。スウェーデン全体の年間の電力消費量は135TWhくらいだから、その0.35%に相当する。

年間の電気料金は4億クローナ(52億円)になると予想される。かなりの高額だが、それでもスウェーデン北部のこの地を選んだことで、電気料金も低く抑えられているという。実はフェイスブックがこの場所を選んだ理由は、何も地震がない、ということだけでない。寒冷な気候であるため、サーバー冷却の必要性が少なく済むからでもあるのだ。冬はご存知の通り寒いため、ヒートポンプなどの冷却装置の稼動は春から秋にかけての6ヶ月間だけでよいという。

また、この3つのサーバーセンターと地元ルレオ市の間で、ある契約が交わされることになるという。それは、ルレオ市の水道局が毎日90万リットルの水道水をこのサーバーセンターに供給し、逆に23万リットルの下水を受け取ることだという。これほど大量の水道水がなぜ必要なのかはよく分からないが、もしかしたら湖水や河川の冷たさを、ヒートポンプなどを介して水を媒体として施設内に取り込み、冷却に使うのかもしれない(地域冷房といわれる冷房の方法)。

ちなみに、サーバーが発する熱は冷却装置によって外部へ放出されるわけだが、そのために、周囲の温度が1度から4度くらい上昇すると考えられる。そのため、現在は環境影響評価(アセスメント)が行われている。その熱をうまく回収して、地域暖房の熱源として用いて、周辺の住宅へ熱供給すればよいと思うのだけれど、難しいのだろうか?

「我が家は、フェイスブックのおかげで温かいシャワーも出るし、家の中が冬でも暖かい」なんて、自慢できたらいいのにね。聞いた人は、おそらく何のことかチンプンカンプンだろうけど。
(長くなるので、続きは次回に)