雫石鉄也の
とつぜんブログ
SFマガジン2009年10月号

SFマガジン2009年10月号№643 早川書房
雫石人気カウンター
1位 祝宴 宮風耕治訳 アンドレイ・サロマトフ
2位 星魂転生 谷甲州
3位 クリエイター 合田直美訳 オレグ・オフチンニコフ
4位 雨ふりマージ 新城カズマ
神林長平・谷甲州・野阿梓デビュー30周年特集。今号は及第。よくできました。丸。二重丸、花丸をめざしてがんばりましょう。
3人の作家特集の企画は、なかなかまとまった好企画だった。本人へのインタビュー。神林長平論、谷甲州論、野阿梓論と、一人一人への評論とエッセイ、著作ガイド。3人それぞれ並列に扱って、同様の構成で3本の企画を並べていた。これにより、3人の作家の違い、個性、魅力がよく判った。
この3人、作風が全く異なる作家ではあるが、現代の日本SFを牽引している作家であることは間違いない。その3人がそろってデビュー30周年を迎えたということで、タイムリーな企画だ。
神林さん、野阿さんとは面識はないが、谷甲州とは、彼が作家になる前からの知り合いだった。甲州は西秋生や小生と同じく、チャチャヤングの常連だった。甲州という名前は眉村卓さんの放送を通じて知っていた。
本人とあったのは、奇想天外賞を彼が受賞した直後だった。そのころ、小生たち元チャチャヤング常連たちは、大阪は阿倍野区の眉村さんの仕事場で勉強会をしていた。メンバーは小生たち元チャチャヤング組、星群、創作研究会、岡本俊弥、中学生の菅浩江といった面々。この中に大阪工大SF研だった柊たんぽぽがいて、柊も甲州も工大SF研だったから、この勉強会に連れて来た。
そのころ、甲州は大阪在住で、たびたびいっしょに飲んだ。ウィスキーのビール割りなんぞという強いのか弱いのか判らないもんを飲んでいた。それにやたらタコヤキを食いたがる。一度、山中温泉でのSF大会にいった時、確かこの時は彼が、「火星鉄道19」で星雲賞をとったときだった。二人で歩いていたら、タコヤキが食いたいな、といいだした。こんな北陸の温泉町にタコヤキはないやろ、というと、すぐそこにタコヤキの屋台があった。恐るべし甲州のタコヤキ探査能力。彼が石川県に引っ越してから、あまり会う機会もなくなった。
去る6月27日の「谷甲州作家生活30周年記念パーティ」のお誘いを受けていたのだが、誠に残念ながら欠席した。40周年、50周年。60周年の時は必ず出席するからね甲州。
ロシアSF小特集。これは非常に良い企画だ。こういう企画をやってこそSF専門誌といえる。また、大森望の「新SF観光局」で韓国のSF事情を紹介していた。こういうことはぜひやってもらいたい。ややもすると、海外SFというと英語圏一辺倒になりがち。あまりなじみのない国のSFをもっと紹介して欲しい。小生たち日本のSF者が知らない宝の山が世界にはまだまだあるに違いない。
このロシアSF小特集の1篇。「祝宴」これは傑作だ。ある男が友人を招いてパーティーをする。孤独な男の哀愁がただよう、哀しい哀しいお話。ひょっとすると、SFマガジンに今年掲載された海外SFで一番の傑作かもしれない。来年のSF大会参加者のお歴々、この作品をお忘れなく。星雲賞海外SF短編部門はこれだ。もし、受賞すれば英語以外で書かれた、始めての星雲賞海外部門ではないだろうか。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
« 桂枝雀 貧乏神 | 読売ジャイア... » |
祝宴、「そんなもの」をデパートで売っていたり、おっさん型の「そんなもの」があったり……。主人公と隣人の個人的な問題ではない根の深い背景も、さりげなく書き込んでますよね。こういう、ちっょとした、でも実は重要なポイントを拾っていくとすごいものが見つかったりするところなんか、まさにロシア的ファンタスチカの楽しみです。みんなSFMにもっと日英語圏SFを!とメールを送りまくってください。私もしつこく言っときます。
なじみにない国のSFでも、きっと優れたSFがあるにちがいありません。
昔、「イスカーチェリ」というファングループがありましたね。私たち星群とは友好関係にあったグループですが、この「イスカーチェリ」が、非英語圏のSFの紹介という仕事をしていました。大変、貴重な仕事をしているグループでしたね。今はどうしているのでしょうね。
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。