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ALWAYS 続・三丁目の夕日


監督 山崎貴
出演 吉岡秀隆、堤真一、薬師丸ひろ子、小雪、もたいまさこ、堀北真希 

 続編は正編を超えられないという。これ、ある程度当たっていると思う。小生の知っている限りでは「エイリアン2」だけが「エイリアン」を超えていた。本作も残念ながら正編を超えられなかった。
 オープニングはオッと思わせた。いきなりゴジラ。それも白黒ゴジラ。伊福部昭の音楽に乗って放射能を吐いて暴れる。懐かしい。喜んだのはここまで。
ゴジラ以外にも懐かしいモンはいろいろ出てきた。できたばかりの東京タワー。路面電車。特急こだま(新幹線にあらず)。スバル360。石原裕次郎の日活映画。ナショナルのキャラクラー人形。行商の豆腐屋。プロペラ旅客機(DC-4か?4発だったかな、双発ならDC-3かな)など。昭和30年代の風景と町並みはCGなどで忠実に再現していた。確かに懐かしい。小生のごとき団塊の世代ならば、ぼーと画面を見ているだけで楽しい。と、いえるのは1作目まで。客に懐かしさだけを提供するのならば、続編まで創る意味はない。1作目だけで充分である。ようは、この懐かしい画面でどういうドラマを展開するかだ。
 茶川と淳之介にわりこむ淳之介の実父川渕。茶川とヒロミの恋の行方。六子と武雄。鈴木家に預けられた美加と鈴木一平。茶川は芥川賞を取るか。宅間先生が拾った犬。などなどいろんなエピソードが平行して進行する。非常にとっちらかしたストーリーで詰め込みすぎ。
 それに一生懸命に泣かせようとしているが、すべっている。泣けない。後半の茶川と淳之介のくだりの愁嘆場は長すぎてへきえきした。ここへ持ってくるまで、茶川が新作に取り組み、芥川賞が取れるかというので引っ張っているが、取れないことが見え見え。
 で、茶川の新作が完成して、主要登場人物みんなが読み、みんな感動している。どんな小説かをチラチラ紹介していたが、あんなクサイ話で感動するのはなんともしらける。小生なら、あんな小説を読むのはまっぴらごめん。
  
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新世界より


貴志祐介   講談社

 1000年未来の日本。人類は科学技術を捨てて生活している。それでも人類は生物の頂点に君臨している。人類が科学技術の替わりに手に入れたもの。それが「呪力」念力ともいうサイコキネシスともいう。
 架空の舞台を設定して、現実にないものを、一つその舞台に投入して、世界がどう変わるかを思考実験するのがSF、というSFの定義に従えば、この作品は堂々たるSFである。しかし、小生は、読後、SFとして不満が残った。その不満については後述する。
 架空の舞台が1000年未来。現実にないものが「呪力」というわけ。人類が「呪力」を持ったら世界がどう変わるか。人類はどんな社会を築いているか。どんな問題があるのか。生態系はどうかわっているか。作家に最も求められる能力=想像力。その想像力が問われる設定だが、貴志祐介は、奔放な想像力を駆使して、異様な世界を見事に描いていた。宮崎駿の「風の谷のナウシカ」、ブライアン・オールディスの「地球の長い午後」を思わせる物語世界を構築していた。
 主人公は渡辺早季という一人の女性。12歳から30歳代までの、彼女の成長の物語である。
 子供たちは小学校を卒業すると、「全人学級」という上の学校に進学する。そこで彼女は、瞬、覚、真理亜、守の4人と同じ班になり、一般教養と呪力の勉強に励む。5人の少年少女は夏休みにキャンプに出かけて、禁断の地へ足を踏み入れ、世界の重大な秘密を知る。呪力が動かす世界の秘密を。
 この世界には人類ともう1種、知能を持つ生物がいる。ハダカネズミから進化したバケネズミ。女王を頂点に社会生活を営むバケネズミは呪力を持った人類には絶対に逆らわず/逆らえず、人類の奴隷となっている。
 バケネズミどうしの抗争に巻き込まれた早季たちは、2匹のバケネズミと知り合う。一人は知恵者野孤丸、もう一人は名将奇狼丸。
 上巻は少女時代の早季たちが、世界の秘密を知り、仲間との別れ、友情、愛情が描かれる。下巻では人類は未曾有の危機に見舞われる。
 二つの読み方ができる。早季たちに感情移入して読むと、異世界ファンタジーでありホラー。野狐丸たちバケネズミに感情移入して読むと、革命の書として読める。
 ところで、呪力だが、具体的な説明は一切なされていない。なぜ人類にこういう能力が授かったのか。この能力の正体は。どういう原理か。人間のどの臓器が関わっているのか。呪力の限界は。などなど、このあたりの説明を、納得のいく形で提示してくれていれば、SFとしてより一層完璧な仕上がりとなっていただろう。小松左京の「日本沈没」は、なぜ日本列島が沈没するかを、納得のいく形で説明していた。この作品はその部分が弱かった、というか全く無かった。
 とはいえこの作品、出色のホラーでありファンタジーであり、少年少女の成長の物語であり、冒険小説であり、革命の書だ。そして、不満もあるが、出色のSFでもある。一級のエンタティメントであった。

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