自己規定するつもりはないのですが、いったい自分はアルパインクライマーなのかフリークライマーなのか、何が何だか分からなくなってきた。
アルパインをやっているときにはアルパインクライマーで、フリークライミングをしているときはフリークライマーでいいのではないか、と思ってやってきたのですが、今年は暖冬のせいか、山に行く気がしないので、フリークライミングばかりしている。フリークライミングはそれ自体楽しいので良いのだけど、どうもなじめないところがある。
私は、アルパインクライミングでは当たり前に出てくる絶対に落ちてはいけないところで、自信を持って登れるようになりたいと思って、フリークライミングをトレーニングと位置付けて始めた者にとっては、どうも今の現状はしっくりこない。というのは、今一緒に登っている仲間はアルパインクライミングをしないクライマーだからかもしれないが、求めるものがグレードや有名ルート。11aが登れたら即11b。11bが登れたら即11cという具合にチャレンジしていく。そのチャレンジ精神はうらやましくもあるが、12aをレッドポイントしていながら11bぐらいでオンサイトできないのでは、私としては納得がいかない。
私も年を取ってきて、なかなか上達しなくなってきたが、オンサイトグレードとレッドポイントグレードは2グレードにとどめておきたいと思う。それだけ積み重ねが大切だと思っているのだ。でも、そういう登り方をする人が少なくなってきたなあ。ちょっとついていけない感じがする。
それから、岩のコンディションや変なマナーに神経質なところ。もちろん岩場でのマナーは大切なことだけど、マナーの本質が変わってきてしまっている。
コンディションを気にしすぎるクライマーがすごく多い気がする。「ぬめる」が口癖で、登れなかった言い訳が「ぬめる」。体質かどうかわからないけど、私は山岳クライミングルートでは、ぬれていても登らなければならないのが当たり前だから、多少手汗をかくくらい気にしない。また、気温が高いとか陽があたっているということを気にするのも、自分としてはよくわからない。といか、そんなことを登れない理由にしたくない。そんなことを理由にしていたら自然の岩場を登ることはできない、ましてや山岳ルートなんか登れっこないと思うから。まあ、スポーツとして楽しむ分にはそれでもいいかもしれないが、自然を相手にやるんだったら、そんなに神経質にやってたら、いつまでたっても登れるようにはならないと思う。
そういう意味でもブラッシングにこだわるのも善し悪しだ。岩場のブラッシングについてよく言われるようになったのは10数年くらい前のことのような気がする。それ以前は岩場に行ってもブラシを持っている人は少なかった。岩にはチョークの跡がつくので、常に自然の状態のままを保つためには、みんながブラッシングするほうがいいのは当たり前だけど、「ブラッシングしよう」というのは、そういう意味で一般的になってきたのだと思う。でも最近では、フリクションをよくするためにブラッシングしなければならないという意味で行われているようだ。自分が登った後には、次に登る人のためにブラッシングしなければならない、という意味で、ブラッシングがマナーと思われている。次に登る人のためにブラッシングするのはよいことではあるが、あまりにもブラッシングにこだわって、次の人が待っているのに、いつまでもゴシゴシしていて時間がかかるのも困ったものだ。私はブラッシングしたからと言って、それほどフリクションの違いを感じないので、前の人は登り終えたら早く降りてきてほしいのですが、いつまでもゴシゴシしてると、「いいからはやく降りてきてくれないかなあ」と思うこともあるのです。自分がフリークライマーとして間違っているのかなあ。でもそれがフリークライマーとして当たり前だというのなら悩む。スラブなのに「アルミハンガーでは登りたくない」みたいな。
よくわからなくなってきちゃったけど、クライミングって「冒険」じゃなくて、単なる安全が確保された中での「スポーツ」だとしたら、自分にとってはあまり価値がない。