クライミング界には、変な和製英語や造語が沢山あります。
「外岩」。これは違和感を持たれる造語の王様。岩なんて外にあるにきまっているのに、あえて「外」をつけることに違和感を覚えます。また、もともとロッククライミングは岩を登るものであるのに、「外岩を登る」などと「外」をつける必要があるのでしょうか。それは室内のクライミングジムが増え、人工的なクライミングルートを登るスポーツが一般的になってきたからでしょうか。こういう私でさえも、始めは「外岩」という言葉に違和感を感じていたのですが、最近はほとんど違和感を感じなくなってきてしまいました。私はクライミングジムで子供たちを指導したり、ジムでクライミングを始めた多くの方々と接していると、ジムで登るクライミングが当たり前で、岩を登るなんてとんでもなく怖い、と思っているのです。そういう人たちの気持ちを考えると、あえて「外岩」というのも不思議ではなくなります。「外岩」という言葉に違和感を感じなくなりつつある自分に危機感を感じますが。
「ナチュプロ(ナチュラルプロテクション)」。この言葉を聴いて、真っ先に「キャメロット」や「エイリアン」などのカムデバイスを思い浮かべる人は違和感を感じていない方です。なぜならばこういったプロテクションは、本来「ナチュラル」ではないからです。もちろん岩を傷つけないプロテクションという意味ではナチュラルであるかも知れませんが、「自然のものを利用したプロテクション」という意味では、岩角や立木を利用したプロテクションを指すはずです。「キャメロット」や「エイリアン」などはSLCDと呼ばれるプロテクションですが、現在では一般的に「ナチュラルプロテクション」の一つと認識されてしまっています。これも私は違和感を感じなくなりつつあります。
「クライムダウン」。これって正しい英語なのでしょうか。「クライムダウン」というのは、ロープにぶら下がらずに、自力で岩を降りることを示して使う言葉ですが、そもそも「クライム」とは登ることであって、そこに「ダウン」をつけているのって変じゃないですか。本当の英語では何と言うのか教えてほしい。「ロワーダウン」って言うのも正しいんでしょうか。
「ロープクライミング」。最近はロープを使わない「ボルダリング」がはやっているので、ロープをプロテクションとして使ったクライミングを「ロープクライミング」と呼ぶことがあるようです。でも私は「ロープクライミング」と聴くと、柔道などのトレーニングで、天井からつるされたロープを掴んで登る姿を想像してしまうのです。要するに「ロープを使うクライミング」ではなく「ロープを登るクライミング」を想像してしまうのです。私が子供のころ、小学校の校庭に「竹登り」という遊具がありました。ちょっとしたフリーソロで、いまどきそんな危険な遊びは許されないでしょうが、あの頃は許されていたんですよね。「バンブークライミング」です。「ロープクライミング」とは言わず「リードクライミング」と「トップロープクライミング」に分けて使ってもらえれば違和感がないのですが。
「テンション」。私も平気で遣っていますので、違和感を感じているのではないのですが、英語では「テイク」というのが正しいらしい。それを知ってしまうと、なんだか「テンション」って言うのに抵抗を感じてきてしまっています。
「らく!」。多分クライミング中に岩などを落としてしまったという意味で「落!」といっているのでしょうが、正しい英語でいうと「ROCK!」なのだそうです。発音が似ていますよね。きっと「らく!」は「ロック!」の聞き間違いだったのではないでしょうか。そう思うと「らく!」ということに違和感を感じ、「ロック!」と言いたくなってしまいます。
他にもあるけれどきりがない。本当は私、そんなに用語にこだわる人間ではないのですが・・・。