別のところでコメントを書くはずの『ポストヒューマン宣言』読んでいて、言及されている以下の映画を見ていなかった事に気がついた。さっそく、アマゾンPrime Videoで見た。残念ながら無料ではなく両方とも299円だったけれど。
ポストヒューマンの文脈でとりあげるということでいいんだけれど、これは、アシモフのロボット三原則トピックでもある。それぞれの作品の主役は、ヒロインをさておき、アンドロイドのデビッドとウォルターであるが、両作品を通してのヒーローはデビッドであるか。かれこそが、エイリアンの「創造主(エンジニア)」なのだ。人類を抹殺しようとするロボットを取り上げた映画はターミネータはじめさまざまあるが、このデビッドは生物ではないというメリットを生かして、生物兵器であるエイリアンのシードであった生物を改良してエイリアンを作り出し、人類の抹殺をねらう。
作品には、色々と謎がある。「プロメテウス」の冒頭のシーン、人類の祖先の一員が何かを飲むと体内で変性がおこり、おそらく、エイリアンの原型である寄生体によって死を迎えるのだが、なぜ飲むのだろう。その後では、初期感染は耳や鼻からの侵入である。あるいは、すでに蛇のように変性して蛇のように(コブラのよう)なったエイリアンが体内に侵入する。
両作品に共通するテーマは人類がどこからやってきたかがその背景にある。主人公の考古学者が、人類の創造主(エンジニア)の痕跡を世界各地の遺跡で見出し、共通するサインとして宇宙のある一点(惑星あるいは、衛星)を指し示していることを見出し、アンドロイド製造会社の社長をスポンサーに探検に乗り出す。隠されたプロジェクトはこの社長の不死を求めての旅だった。たどり着いた惑星(あるいは、衛星)の人類は、エイリアンによって絶滅させられていたようだった。しかし、デビッドはカプセルの中に入れられて生き残った一人を見つけ出し、社長を導くが、彼の意図は拒否され、エイリアンによる感染と襲撃をうける。そして、エイリアンを地球に持ち帰らないよう、母船は特攻攻撃をおこなうが、主人公の一人考古学者のエリザベス(エイリアン、といって、他のエイリアン作品のそれは、昆虫系の姿だが、軟体動物のような姿のエイリアンを手術ロボットによって開腹手術でとりだす)とデビッドは救命艇(社長が専用に隠しおいたカプセル)によって脱出する。
「コヴェナント」はこの続編である。2000人の冷凍カプセルに入れられた移民と乗組員、管理者として乗り組むデビッドの改良版アンドロイドのウォルター(デヴィッドと瓜二つ)。カプセルの故障・火災で船長は亡くなり、乗組員はカプセルから緊急解除される。移民船なので、乗組員も幾組かのカップルで構成される。船長のパートナーのダニエルズの反対にもかかわらず、後任の船長は、傍聴された音楽を手がかりに最寄りの惑星に向かう。ここが、エリザベスとデビッドのたどり着いた惑星であることがあとでわかる。
かれらは、着陸船で上陸し、探索を始めるが、乗組員は次々と寄生体に襲われる。そこに登場したのがデビッドだった。彼は一行を絶滅した人類の拠点であり、彼のラボに案内する。そして、エリザベスの墓にも。ところが、デビッドは寄生体をバラマキ、この惑星の人類を絶滅に追いやり、さらに寄生体を改良してエイリアンを作り出していた。衛星軌道にいた母船から運搬船を使って救出されたのは、ダニエルズとウォルターの二人であったはずが、デビッドはウォルターのなりすまして乗り込み、母船に帰着し、ウォルターことデビッドは乗組員を冷凍睡眠カプセルに送り込む。最後にカプセルに入ったダニエルズは、ウォルターに到着後に建てる湖畔の小屋のことを話すが(彼女は、元船長の夫との夢をウォルターに話していた)、了解しないウォルターの素振りでデビッドであると気がつくがもうすでに遅かった。デビッドはインキュベーターにエイリアンの胚を2個入れる。
映画エイリアンの前日譚ということになる。アンドロイド・デビッドは、マッドサイエンティストのカリカチャーともいえるし、人類に危害をくわえるアンドロイド(ロボット)ともいえる。AI技術が飛躍的に伸びると想像される近未来における自律的に活動できるAIベースのアンドロイド(ロボット)をはたして、人類の管理下におけるかというのが、隠されたテーマとなっている。