限りなき知の探訪

45年間、『知の探訪』を続けてきた。いま座っている『人類四千年の特等席』からの見晴らしをつづる。

沂風詠録:(第57回目)『国際人のグローバル・リテラシーの図書リスト(1)』

2010-06-05 11:09:25 | 日記
先日、『私の勧める読書の流儀』に下記のようなコメントをNoriさんから頂いた。(2010-06-04 03:44:59)『可能であれば毎回どのような参考図書を提示されているのか知りたいです。』このご要望にお応えして、4月の授業開始時に学生に配布している図書リストをご提示したい。

まず、私の授業『国際人のグローバル・リテラシー』
の講義趣旨や方針は次の通りである。
 *今後ヤングエグゼクティブが国際人として生きていくのに必要な文化理解をゼミ形式で学ぶ。
 *数名のパネラーと聴講学生とのパネルディスカッションによる議論を中心として行う。』
 *グローバルビジネスの根源をなす文化背景を気づかせる教育をする。
 *グローバル拠点で多様な文化背景をもった人たちを統率できるリーダーを育成する
 *文明を別個に学ぶのではなく、複眼的視点で包括的にとらえる。

議論のテーマは、文明別(あるいは地域別)に言うと、
 欧米、イスラム、日本、中国、韓国、インド、東南アジア、南アメリカ
となっている。

学問分野でいうと、
 歴史、哲学、宗教、文明論、経済、科学技術、農業、民俗(風俗)
である。

議論のテーマの一部紹介すると、
 【欧米】 中世ヨーロッパの生活、自由について、科学技術の発達、アングロサクソンの誤解、現代のグローバリゼーションの問題点
 【日本】 科学技術の発達、江戸末期・明治初期の西洋人の記録
 【イスラム】 イスラムの社会・文化、イスラムの科学、イスラムと西洋
 【中国】 哲学、仏教、歴史、科学技術の発達、庶民生活、現代中国の諸問題
 【韓国、インド、東南アジア・南米】 歴史、社会、日本との関連

授業ではこれらのテーマについてパネリストを中心にして議論するわけであるが、学生に漠然と「このテーマについて調べてくること」と言っても難しいので、『私の勧める読書の流儀』で述べたように、私自身が読んだ本の中から、入手しやすいものを図書リストとして配布している。

各テーマ別には次の図書である。

 0.概論 

#0001 グローバル・リテラシー(Global Literacies) ロバート・ローゼン(Robert Rosen)
#0002 学問の創造(校成出版社) 福井謙一
#0003 強いニッポン(朝日新書) 御手洗富士夫
#0004 わが子に伝える『絶対語感』(飛鳥新社) 外山滋比古
#0005 喪失の国(文春文庫) M・K・シャルマ(山田和・訳)
#0006 東方旅行記(平凡社東洋文庫) J・マンデヴィル(大場正史・訳)
#0007 日本と中国における「西洋」の発見(山川出版社) 銭国紅
#0008 ひとのちから(麗澤大学出版会) 吉村作治
#0009 異文化インターフェイス経営・国際化と日本的経営(日本経済新聞社) 林吉郎

 1.欧米 中世ヨーロッパの生活

#0101 中世ヨーロッパの農村の生活(講談社学術文庫) ジョセフ・ギース、フランシス・ギース(青木淑子・訳)
#0102 十二世紀ルネサンス 伊藤俊太郎
#0103 中世ヨーロッパの都市の生活(講談社学術文庫) ジョセフ・ギース、フランシス・ギース(青木淑子・訳)
#0104 Daily Living in the twelfth century (University of Wisconsin Press) Urban Tigner Holmes, Jr.
#0105 中世ヨーロッパの城の生活(講談社学術文庫) ジョセフ・ギース、フランシス・ギース(栗原泉・訳)
#0106 コンスタンチノープル征服記(講談社学術文庫) ジョフロワ・ド ヴィルアルドゥワン(伊藤敏樹・訳)
#0107 フランス・ルネサンスの文明(創文社) フェーヴル(二宮敬・訳)
#0109 メロヴィング王朝史話 オーギュスタン・ティエリ(小島輝正・訳)
#0110 中世の秋(中公文庫) ホイジンガ(堀越孝一・訳)

 2.欧米 自由について(ギリシャ、ローマ、ゲルマン)

#0201 教養と無秩序(岩波文庫) マシュー・アーノルド(多田英次・訳)
#0202 歴史・上中下(岩波文庫) ヘロドトス(松平千秋・訳)
#0203 十八世紀パリ生活誌(岩波文庫) ダブロー・ド・パリ
#0204 戦史(岩波文庫) トゥーキュディデース(久保正彰・訳)
#0205 ローマ人盛衰原因論(岩波文庫) モンテスキュー(田中治男+栗田伸子・訳)
#0206 ガリア戦記(岩波文庫) カエサル(近山金次・訳)
#0207 ゲルマーニア(岩波文庫) タキトゥス(泉井久之助・訳)
#0208 戦史(岩波文庫) トゥーキュディデース(久保正彰・訳)
#0209 プルターク英雄伝・全12巻(岩波文庫) プルターク(河野与一・訳)
#0210 ローマ建国史・上(岩波文庫) リーウィウス(鈴木一州)
#0211 ギリシア哲学者列伝・上中下(岩波文庫) ディオゲネス・ラエルティオス(加来彰俊・訳)
#0212 年代記・上下(岩波文庫) タキトゥス(国原吉之助・訳)

 3.欧米 (ギリシャ語+ラテン語)の受容と科学技術の発達・、出版物の流通

#0301 トマス・アクィナス(講談社学術文庫) 稲垣良乗典
#0302 エラスムス(ちくま学芸文庫) ホイジンガ(宮崎信彦・訳)
#0303 ルネサンスの歴史(中公文庫) モンタネッリ(藤沢道郎・訳)
#0304 サミュエル・ヂョンスン伝(上・中・下)(岩波文庫) ボズウェル(神吉三郎・訳)
#0305 告白(岩波文庫) ルソー(桑原武夫・訳)
#0306 詩と真実(第一部~四部)(岩波文庫) ゲーテ(山崎章甫・訳)
#0307 ミル自伝(岩波文庫) 西本正美訳
#0308 昆虫記(岩波文庫・20分冊の本) ファーブル(山田吉彦・訳)
#0309 古代アレクサンドリア図書館(中公新書) モスタファ・エル・アバディ (松本慎二・訳)
#0310 大自然科学史・全13巻(三省堂) ダンネマン(安田徳太郎・訳)
#0311 天文対話・上下(岩波文庫) ガリレオ・ガリレイ(青木靖三・訳)
#0312 地図の歴史(講談社) 織田武雄

 4.欧米 アングロサクソンの誤解、現代のグローバリゼーションの問題点

#0401 イギリス人と日本人(講談社現代新書) ピーター・ミルワード(別宮貞徳・訳)
#0402 イギリスの学校生活(新潮社) ピーター・ミルワード (安西徹雄・訳)
#0403 物語オランダ人(文春新書) 倉部誠
#0404 三酔人経綸問答(岩波文庫) 中江兆民(桑原武夫、島田虔次訳・校注)
#0405 肉食の思想(中公文庫) 鯖田豊之
#0406 アメリカ史(新潮文庫) アンドレ・モロワ(鈴木福一・訳)
#0407 英国史(新潮文庫) アンドレ・モロワ(水野成夫、小林正・訳)
#0408 ヨーロッパの個人主義(講談社現代新書) 西尾幹二
#0409 文明の衝突(集英社) サミュエル・ハンチントン(鈴木主税・訳)
#0410 プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神(岩波文庫) マックス ヴェーバー(大塚久雄・訳)

私がこれらの本を読んだときには大抵、本の中で重要な情報をメモとして、本の後ろに紙と付けて書き込んでいる。その例をあげると、例えば、次の本では次のような内容である。 
 #0203 十八世紀パリ生活誌(岩波文庫) ダブロー・ド・パリ
 #0204 戦史(岩波文庫) トゥーキュディデース(久保正彰・訳)


授業の前に再度これらのメモを全てチェックして記憶を蘇らせ、また重要な箇所は本文をチェックする。ところで、私も授業を受け持って始めて分かったのだが、丁寧に準備すると、授業時間(1時間半)のたいていは 10倍の時間がかかってしまうのである。

当然、これらの本以外にも良書がたくさんあり、また私も日々読書しているので、推薦したい本が幾つもある。それらは、授業の最初に個々(ad hoc)に紹介している。それに関してはブログの中のメモに載っているので参照頂きたい。

日本、中国、その他のテーマに関しの参考図書は、明日以降に順次紹介したい。
続く。。。
コメント
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