野々池周辺散策

野々池貯水池周辺をウォーキングしながら気がついた事や思い出した事柄をメモします。

会社も色々あって、大変そう

2017-09-23 07:59:43 | その他
ある企業が長く潜在的に持ち続けてきた強烈なイメージはもって生まれたDNAなので、そう簡単に変わるものではないと思っていた。が最近、その現実の企業活動が持ちつづけたイメージと少し変わってきたと感じたので、それは多分良い方向への転換点だろうと思う反面、どうしたんだろうと首を傾げるともに、ここ数年抱いた疑問も少しわかった。
つい最近、面白いネット記事を読んだ。ロイター通信の「ホンダが失った「暴走力」、改革DNAの復活あるか」だ。

  業界の先頭を走ったホンダの輝きはすっかり色あせてしまった感があり、「世界のホンダ」は再び蘇ることが出来るかと言うものだった。それは、かって圧倒的強さを誇示したF1レースに再参戦するも精彩を欠き、全く勝てないことに業を煮やしたマクラーレンはホンダと契約解消を打ち出す羽目になった(結局、契約解消した)事や、エアバックやハイブリット車の相次ぐリコール等、ホンダに暗いニュースが多いとある。ホンダの八郷社長も「我々自身が、かっての元気を失くしてしまったのは間違いない」として、「ホンダらしさ」=『技術者がリスクを恐れない「レーシングスピリット」あふれる社風を取り戻し、コスト削減重視に流れがちな社内の圧力から革新勢力を守る』を復活の必要性協調したとある。

この記事は、「ホンダはなぜ先進的な企業としての勢いを失ったのか」の理由については、①ホンダが株主価値を優先し、より高い利益率を追求する中で販売拡大とコスト削減に傾き過ぎ、②本来の企業力である技術革新の勢いが削がれてしまった。さらには、③自動車産業が大きく変わろうとする中、ホンダは日本の製造業で称賛される「ものづくり」の意識にとらわれ過ぎている。加えて④東京本社の経営幹部たちが研究開発部門に過度の介入を続けていた、⑤イノベーションよりも株主価値が優先されるようになり、海外の有能な人材を活用することにも消極的になった。⑥販売台数や利益の最大化が重視され、競合するトヨタ自動車と同じような製品ラインをそろえることに経営の主眼が置かれ、トヨタとだんだん同質化してしまった。そして、トヨタとは一線を引き彼らとは正反対であるべきことがホンダの存在価値だったのに、それを忘れ始めてしまったことが今の状況を招いた原因だとしている。つまり、ホンダがすっかり色あせてしまった要因を「ホンダに期待されていたのは、他の会社のような車やバイクではなく、独自性を求めるお客さんの喜びに応えるよう、徹底的に掘り込んだ製品だった」としている。
 
結果、ホンダの売上高は2000年以降大きく伸びた。しかし、J.D.Pawerの初期品質調査では、ホンダ車は2000年の7位から2017年には20位に低下した。株主が求める業績拡大は進んだが、その一方でブランド力は目に見えて落ちこみ、なんでも削減、削減でホンダの品位を落としたとして、コストや効率性だけで技術開発の価値を評価すれば、「ホンダは普通のつまらない会社がただ大きくなっただけの存在になる」と警告している。利益追求やコスト削減にまい進する姿は、普通の企業だったら、むしろ高く評価されてしかるべきなのに、ホンダはそれだけでは許されないと言う事だろうか。

で、最近のホンダは往年の元気がないと、FBやネット記事等話題になっているのをよく見かける。確かに、かってはぐんぐん先陣を押し進める活力がホンダから消えたと感じていたし、雑誌屋さんからも、昔あった元気なホンダはもうないと、似たような話を聞いていた。つまり、ホンダの代名詞だった、ホンダのDNAと言って憚らないレースでは負け続け、すっかり色あせたホンダになってしまったと、なんかが違うと当ブログでも不思議に感じてきた。

例えば、ホンダの鈴木哲夫執行役員が、6年ほど前、こんな発言「高回転高出力バイク「そういう時代じゃない」をしている。
高回転・高出力型の大型バイクについて、「そういう時代じゃない。乗りにくいものを造ってもしょうがない」との認識を示し、『どんどん高回転、高出力になり、排気量メリットは200km/h超えた領域で初めて意味があるようになってしまった。CBR1000などのクラスのオートバイは10年前にホンダ・レーシングが8時間耐久レースに出ていた車と全く同一スペックになっている。そんなものは街中で楽しいはずも無いし、そういう時代じゃないと強調。 そして、「基本的には、乗りにくいものを造ってもしょうがない。 ハーレーやBMW、ドゥカティみたいに他の人に見せる盆栽のようなものはホンダには無理。 だから少なくとも実用品というか、 乗ってどうのというのは絶対負けないようにしろと、 見せてどうとか飾ってどうとかという所はあきらめてもいいから、乗ってどうだけちゃんとやれと社内には言っている』とあった。ホンダの幹部発言は、需要が低迷している世界の二輪市場において最も販売を伸ばしているハーレーダビットソンそしてBMWやドゥガティの欧州車を、ただの見栄えだけの「盆栽」と称し、今後のホンダは彼らとは一線を引き、より実用性の高い二輪の開発に専念し、性能一辺倒の二輪はレースの世界でのみ反映させる意向なんだろうと、その時は考えていた。

加えて、今年(2017年)ホンダのモータースポーツ活動計画の記者会見ライブで、「ホンダは勝ちに拘る」とか「鈴鹿8耐では2年続けての惨敗だった」と何度も語ったわりには、勝ちに拘った具体的な対策・体制も構築せず、今年は鈴鹿8耐40周年の記念の年なので必勝を期したいと言う言質についても、ホンダの現計画でヤマハワークスに勝てるのかの記者質問についても苦笑いするのみで、大いに失望した。結局、昨年の屈辱から打倒ヤマハを目指してきたはずのホンダは3年続きの自滅と言う形での返り討ちにあった。2017年の鈴鹿8耐も、ただただヤマハワークスチームが強くて速いという印象のみが残った。ヤマハワークスを脅かすチームが全く無く、上位チームの転倒やマシントラブルだけが目立ち、今年のホンダは有力チームに相当な技術支援をしたと聞く割には結果は惨敗で、これがかっての鈴鹿8耐の覇者だったホンダの今の姿で、世界の二輪レースを実質牽引していると自負しているホンダにとっては、正に屈辱以上の何物でもないはずだろうと、ホンダの姿勢はファンの一人としてみると極めて残念だった。

かって、レースを企業行動の真正面に据えることに躊躇する二輪企業が多い中で、レースを、いやモータースポーツを企業の原点、あるいはDNAだと言って憚らないのはホンダだけだった。ホンダの元社長 福井威夫三はこう発言している。「レース参戦することによって・・(略) 重要なのはこの貪欲さが生まれる環境で、その極致が“修羅場体験”です。 想像を超える困難な状況の中で、自分で何とかしないとダイレクトに結果に表れる。誰も教えてくれない。失敗はしたくないが、失敗を恐れていたら何もできない。必要な情報や知識をどんどん吸収し、あらゆる力を一点に集中して突破する。そして、見事成功したときは達成感に浸る。こうした修羅場体験を経て、ひと皮も、ふた皮もむけて力をつける。ところが、組織が大きくなると、自分は何もしなくても業績に影響しないような状況が各所に生まれがちです。大企業病が蔓延する。そうならないよう、社員をいかに修羅場に追い込んでいくか」
しかし、現実のホンダの姿は、「このままだとF1参戦はホンダのイメージダウンに」にあるように、ホンダのF1参戦は巨額の予算を投じているのに、メリットどころかマイナスイメージすら作り出していると言う。

加えてまた、上記でも指摘された自動車の顧客満足度調査で有名な、J.D.Pawerは、企業側の宣伝に用いられることも多いことから、特に北米においては自動車メーカー・自動車ブランドの評価・イメージや販売実績に与える影響が大きいことで有名。消費者の製品選択においても大きな影響を与えているそうで、米国人はこの調査者に認定されたことを自慢にするらしい。評価者への対価はたった1米ドルだ。だからか、約14,5年ほど前に聞いた話では、かっての某四輪の開発担当者の開発目標は、J.D.Pawerで問題を指摘された項目を次年度の大きな改良ポイントとして開発に専念すると聞いたことがある。顧客満足度調査は、単なる品質レベル調査だけではなく、サービス、車の値段、メーカの対応等々、全ての分野における顧客満足度評価なので、米国においては決して無視できないものだ。10数年前のJ.D.Pawerの二輪編を調査したことがあるが、当時、高い評価を得ていたのがハーレーダビッドソンとドゥガッティだった。つまり、エンスー顧客を掴んでいる高いブランド戦略に成功した企業は顧客満足度に大きく影響している事が分かった。2017年J.D.Pawerの初期品質調査でのホンダの位置は20位だとすると、大市場のアメリカでのホンダブランドの評価は相当に低くなっているのだろう。

以上の、今まで気になって仕方なかったホンダの現実で「ホンダが失った「暴走力」、改革DNAの復活あるか」に書かれている分析はホンダが抱える問題点のごく一部だと理解しているが、それでもホンダファンの一人として、ホンダが元気に回復する姿を早く見たいものだ。

ところで、いま元気なのはトヨタ。「レースという厳しい環境の中でこそ、新しいアイデアが生まれ、それを実現しようと皆が努力を重ねます。その過程が、人は成長させ、クルマも更に良いものに成り続けていくのです。ですので、モータースポーツは、自動車産業にとってなくてはならない取り組みなのだと思っています。過酷な体験をイメージしながらつくるクルマと、限られたテストコースを走ってつくったクルマとでは自ずと結果は変わってくる」と豊田社長は発言している。結局、企業経営はトップの性格や顔色によって社風が大きく変わってくるものだろう。
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