経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・日本よ、成長は帰ってきた

2017年05月01日 | 経済(主なもの)
 1-3月期GDPでは、ついに消費主体の経済成長が実現する。消費は、今期は高めの伸びが期待でき、ここ3期を均した速度は年率1.6%となろう。それは、消費増税で大打撃を与える前の2012~13年の伸びと同レベルであり、日本経済の復調を意味する。失われた10期を超え、16兆円もの大損害を残しつつも、成長は帰ってきた。今後は、雇用数の増加に見合う年率2.0%成長へ更に加速できるかが焦点となる。

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 3月の商業動態の小売業は前月比+0.2であり、CPIの財が-0.3であったことを踏まえると、実質では、これを上回る伸びとなろう。したがって、3月の日銀・消費活動指数は、若干のプラスが見込まれ、1-3月期の前期比が+0.8まで高まる可能性がある。前期が低迷した反動も含まれるが、ここ3期を均しても+0.6という高さになる。消費の復調と加速をうかがわせるのに十分な数字だ。

 また、3月の家計調査は、相変わらず不安定な動きを見せ、消費水準指数(除く住居等)が前月比-2.0もの低下となったものの、1,2月の「貯金」で、前期比は+0.2に収まった。GDPの消費を占う内閣府・消費総合指数は、3月がそれなりの低下となろうが、前期比で+0.7程を確保できそうである。ここ3期の平均は、先述の活動指数より下がるにせよ、+0.4くらいになると考えられる。

 +0.4というのは、2012~13年にかけての民間消費の伸びと同レベルである。その後、消費増税で大打撃を与え、慌てて異次元緩和第二弾を打ったが、輸入物価高で苦しめただけで、2015~16年は+0.1へと沈んだ。そのため、増税前のトレンドとの差は広がり、今や16兆円に及ぶ。8兆円の税収を得るのに、2倍の消費を潰したのだから、度を過ぎた財政再建の愚かしさが分かろう。+0.4への復調は、この傷口が広がらなくなったことを示す。

(図)



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 今後の焦点は、成長の基礎体力である消費が更なる加速を見せるかだ。その可能性は十分にある。なぜなら、毎月勤労統計の常用雇用は、消費増税後も、コンスタントに前期比+0.5~+0.6を保ってきたからだ。雇用が堅調でも、消費が低迷したのは、消費増税や輸入物価高で実質賃金が低下したことによる。ここに来て、パート増による平均賃金や労働時間の押し下げにも歯止めがかかり、雇用増がストレートに所得と消費の増加に反映される環境が整ってきている。

 3月の新規求人倍率は、除くパートが+0.06の1.87倍と、12月の1.90倍に次ぐ高水準になった。他方、パートの求人は一服し、人手不足の下、パートでは確保しがたく、フルで集めようとする形へ変化しているようだ。こうした形はバブル期にも見られた。求人は、医療・福祉が多いのは当然ながら、1-3月期は、建設、製造、運輸という、賃金が高めで男性の雇用に結びつく求人が加速した。

 他方、3月の労働力調査では、就業者数が前月比+13万人、雇用者数が+1万人であった。プラスではあるものの、1-3月期の増加には、やや陰りが見られる。完全失業率は、男性が3か月続けて低下して2.8%となり、女性は2.7%が続く。一時的かもしれないが、次第に人材の供給力に制約が表れてきたのかもしれない。雇用量の動向については、連休明け公表の3月毎勤でも確かめたい。

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 景気の先行きについては、輸出は拡大トレンドを維持しており、住宅は小康を保ち、公共は底を打っている。これらで構成される追加的需要は、12月頃に下ブレしたものの、それを取り戻すように推移している。鉱工業生産は、3月が前月比-2.1となり、1-3月期の前期比が+0.1にとどまったけれども、4,5月の予測指数は、+8.9、-3.7と非常に高水準であり、景気の加速を予感させる内容となっている。

 鉱工業指数に関しては、設備投資の指標である資本財(除く輸送機械)の出荷は、1-3月期の前期比が、前期の急拡大の反動もあって-2.9となった。建設投資の目安となる建設材出荷も、同様に-1.0にとどまる。それでも、GDPの設備投資については、輸送用機械が堅調で、企業の建設投資が盛んだったため、寄与度0.0~-0.1と見ている。また、住宅と公共の建設投資の寄与度は、ほぼゼロであろう。

 GDPの在庫の寄与度は、7-9月期が-0.3、10-12月期が-0.2と成長率を下げてきたが、1-3月期は、プラスとなりそうだ。鉱工業指数で分かるように、製品在庫はプラス、流通在庫は変わらず、原材料在庫の仮置きがマイナスというところで、寄与度は0.1弱と見る。また、GDPの外需については、ニッセイ研の斎藤太郎さんによれば、寄与度0.1強のようである。以上を踏まえるなら、1-3月期GDPの成長率は2.0%前後が妥当であろう。

………
 一部に「今の景気の回復ぶりからすれば、この4月からの消費増税は可能だった」との声もあるが、それをしていれば、増税幅と同じ5兆円の消費減に見舞われた上、失速状態が更に長く続いただろう。経験には学ばねばならない。そして、この半年の回復局面は、財政出動も、金融緩和も、成長戦略も、大してないまま達成されている。つまり、過激な緊縮財政をしなければ、放っておいても日本経済は成長する。まさに一害を除くにしかずである。 


(今日までの日経)
 訪日消費 底入れ感。エコノ・法人税は6.1兆円減税。円高でも最高益。米0.7%成長に減速。ASEANに円供給枠。錯誤・世代間の不公平、置き去り。子ども保険への期待・大機・吾妻橋。ヤマト、9月にも5~20%値上げ。介護認定 自立と逆行。幼児教育・保育の無償化 公費1.2兆円必要 こども保険で内閣府が試算。

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1 コメント

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ちょっと気が早いですが (Unknown)
2017-05-03 23:45:52
このまま完全回復したら、メディアや専門家とやらはどう評価するのか気になります。私の予想は、どうせ「構造改革が実は進展していた」「企業のマインドを変えた」「成長戦略がヒットした」「世界経済回復の波に乗った」とか取って付けたような反応ばかりになる気がします。

人手不足が加速し労働者の価値が上がる中で、ブラック労働もどんどん淘汰されていくと思いますが、これも「働き方改革が成功した」とするいい加減な分析ばかりになるはずです。大規模な緊縮財政で回復の流れを破壊し、それが雇用にまで波及すれば、政府がいくら「働き方改革」などで音頭を取ってもブラック労働など減りません。

政治の力で消費増税を2度延期して、悲劇的な運命への突入を回避し、何とか自然回復に持ち込んだという点については光が当たることは無いと思います。
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